変わる『リクナビ』。社会への一歩目を、もっと自分らしく踏み出すことができる世界へ

変わる『リクナビ』。社会への一歩目を、もっと自分らしく踏み出すことができる世界へ

リクルートの就職活動支援サービスのひとつ『リクナビ』が2025年1月から大きく変わりました。2027年3月以降にご卒業される学生の皆さん向けに、「自分にピッタリ合う仕事選びを支援したい」という思いを込め、サービスフルリニューアルを実施。『ガクチカAIアシスタント』『レジュメ』の開発・実装背景や、全学年対象サービスに変更した理由について、リクルートで新卒プロダクトプロデューサーを務める菊池浩太にインタビューしました。

将来のキャリアを深く考えずに就職活動をした自分。「ありたい姿に気づいて、自分で決める体験」を増やしたいと『リクナビ』へ

― 『リクナビ』の刷新を担当した菊池さん、リクルートで就職活動支援サービスに携わって10年以上になるそうですね。これまでどのようなキャリアだったのですか?

菊池:大学卒業後、動画配信企業や通信系企業を経て、2013年にリクルートに入社しました。それ以来、営業や商品企画、グローバルアパレル企業への出向などを経験しています。現在は新卒プロダクトプロデューサーを務め、『リクナビ』の開発責任者をしています。

リクルートで『リクナビ』の刷新に携わる菊池浩太

― 学生時代、どのような就職活動をしたのですか?

菊池:お恥ずかしながら、キャリアについてあまり深く考えずに就職活動をしていました。あらゆる業界の面接を受けましたし、幅広い経験ができそうだと経営が多角化している動画配信企業に入社しました。今思うと「自分のありたい姿」がよく分かっていなかったんです。

― 意外にもそんな過去があったのですね。そしてなぜリクルートに?

菊池:入社後はとても充実した経験をさせていただきましたが、その後、営業に定評がある通信会社に転職しました。改めて自分は今後どうなりたいのかを考えた時に、「もっと思いっきり成長したい」と思ったからです。この時初めて自分の意思に基づき、納得して進む道を決めました。するとこんなにもエネルギーが湧くんだと、かなり感動したんです。

その会社で経験を積んだ後、「自分がありたい姿に気づいて、自分で決める体験」をする人が増えれば、もっとイキイキ働ける人が増えるのではないかと考えるようになって、リクルートに入社しました。これが、私がずっと『リクナビ』に携わっている理由でもあります。

― 今回の刷新で『リクナビ』が目指すことにも通じるお話ですね。

菊池:はい、就職活動は、大人になって初めてする大きな意思決定のひとつです。私たちが目指すのは学生の皆さんが「社会への一歩目を、もっと自分らしく踏み出すことができる世界」です。学生の皆さんを取り巻く環境は大きく変化しています。その変化を把握して、私たちも大きく変わるつもりで挑戦しています。

学生の皆さんが名付け親の『リクナビ』。「情報」ではなく「気づき」を提供するサービスへ

― では『リクナビ』の刷新の具体的なお話を聞きたいと思います。今回の変化はまずどれほど大きな出来事なのですか?

菊池:今回の大幅刷新は『リクナビ』開始以来29年ぶりの大変化です。変化の大きさをお伝えするために、歴史を少し振り返ります。リクルートが就職活動支援サービスに携わり始めた1962年当時、まだ求人情報は限られた学生だけに公開されていました。

そこで無料の就職情報誌『企業への招待』を発行し、大学経由で学生の皆さんに配布。その後『RECRUIT BOOK on the NET』へ形を変えました。就職を希望する学生の皆さんに、ひとつでも多くの情報を平等に届けたいと、いち早くWebでの情報提供を始めたのです。そして、学生の皆さんがこのWebサイトのことを『リクナビ』という愛称で利用してくれていたことを受け、1996年に『リクナビ』がスタートしました。

リクルートは1962年『企業への招待』を発行以来『RECRUIT BOOK on the NET』や『リクナビ』など、サービスの形を変えながら就職活動の支援を行ってきた

菊池:ですが時代の変化にともない、提供価値を見直す時機が来ました。従来私たちは「多くの情報を提供すること」こそが価値だと思っていましたが、情報があふれるこの時代に、「この仕事が自分に合っているか自信が持てない」と迷う学生さんも多くいらっしゃいます。「自分に合った仕事に出合い、納得して自己決定できる」ためのきっかけを提供したいと考えました。

― 『リクナビ』の提供価値を「多くの情報」から「気づき」に変えようと思ったきっかけは何でしたか?

菊池:例えば、ひとつのデータを例に挙げると、これまでの『リクナビ』では、学生の皆さんが「企業の詳細画面」を見る時間よりも、「企業検索画面」で企業一覧をスクロールする時間のほうが長いというデータがあります。興味を持ってたくさんの企業を見ているポジティブな行動である一方、「この仕事は自分に合いそうだ!」と選べないのかもしれない。

これまでも企業探しやキャリアの軸づくりはオフラインセミナーなどで支援させていただいてきましたが、 さらに『リクナビ』上でもサポートが必要なのではないかと考えるようになったんです。

― 学生の皆さんの「企業選び」の大変さや難しさがデータにも表れていたのですね。そこで何があれば「自分にピッタリと感じる仕事」を選ぶサポートになると考えたのでしょうか?

アンケートでは、回答者の学生の約80%が「自己表現」「自分に合う企業探し」に不安を抱えているという回答も寄せられた

菊池:学生の皆さんが自分にピッタリな仕事を選ぶには、企業選択の起点となる「自分の強みや志向の可視化・言語化」をできる機能が必要だと考えました。そして出合える仕事の情報も、もっとピッタリであるべき。「企業」単位で掲載していた募集情報を「職種・コース」ごとに掲載し、情報をより細かいスケールで提供するようにしています。

「僕のこと、知っているんですか?」『ガクチカAIアシスタント』で自然な自己表現をサポート

― なるほど。学生さんが自分の志望や志向に気づけるように、特に力を入れた新機能は何ですか?

菊池:ふたつあります。ひとつ目が、自分にはどんな専門性があり、どんな志望・志向があるのか分かる『レジュメ』の実装。ふたつ目が、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)の素案を作成する機能『ガクチカAIアシスタント』の開発です。

― 『ガクチカAIアシスタント』はどんな機能なんでしょうか?

菊池:『ガクチカAIアシスタント』はキーボード入力に加え、音声入力もでき、4つの質問に答えるだけでガクチカの素案を約6分※1で作成できる機能です。学生さんからも「まだ就職活動を始めたばかりですが、すらすらと回答できてすごい。さっき話したことがすぐ言語化されていて、抽象的に話したのにまとまっている」など非常に高くご評価いただいています。

ガクチカAIアシスタントの画面。利用満足度は約97%※2

※1 2024年9月25日(水)~12月31日(火)の間に、『ガクチカAIアシスタント』を利用してガクチカ素案の完成に至った学生9,624人のテーマの選択から完成までの所要時間の中央値
※2 2024年9月25日(水)~12月31日(火)の間に、『ガクチカAIアシスタント』利用後に表示される「良かった」「良くなかった」の2択アンケートにて「良かった」と回答した学生の割合 総回答数:5,535人

― 質問に答えているうちに内省も進みそうですね。何よりAIが相手だからこそ、何回やり直してもいいし、うまく喋れなくてもいいという気軽さがありますね。

菊池:そうなんです。自分のこととなると、かえって持ち味や強みが分かりにくいこともありますが、テクノロジーがサポートをすることで、自己理解を深めるお手伝いができる側面もあると思います。『ガクチカAIアシスタント』の質問や、答え方の「ヒント」の設計は、新卒の学生を対象としたリクルートの就職支援サービス『リクナビ就職エージェント』のキャリアアドバイザーの知見も活用しています。

嬉しかったのは「僕のこと知っているんですか(笑)?!」というリアクションや「私もガクチカを書けそうな気がしてきた」という声です。仕事やキャリアに前向きに向き合う一助になれたようで、非常に嬉しい反応でした。

― 『レジュメ』も自分のキャリアについて気づきを深めるような機能なのでしょうか。

菊池:はい、『レジュメ』は自分の専門性や志望・志向を登録できる機能です。例えば「興味のある事業の特徴は?」「どのような人たちのなかで働きたい?」といった質問に対して当てはまる選択肢を選んでいきます。

― ゼロから軸を考え出すよりも「どちらかと言えばこっち」とキャリアの軸を考えるきっかけになりそうです。選択した志望・志向はどのように活かされるのでしょうか?

菊池:今後の開発予定にはなるのですが、選択した志向・志望などとマッチするようなインターンシップ・1day仕事体験や、オープン・カンパニー&キャリア教育の情報や、仕事の情報をオススメしたいと考えています。

また、「あなたはこういう仕事をよく見ているので、この仕事をオススメしています。興味はありますか?」と『リクナビ』上でのアクションを基にオススメの仕事を表示する機能も開発予定です。学生の皆さんが無意識に選んでいる傾向に気づくお手伝いができたらと考えています。

学生の登録情報や『リクナビ』上の行動履歴に基づきレコメンドを行う。「今まで知らなかった仕事に出合える可能性が高くなるのでは」と大学のキャリアセンターからも好評

― 無意識の自分の傾向に気づけたり、思いがけずピッタリな仕事のレコメンドがあったりすると嬉しいですね。ほかには今後どのような機能開発を予定していますか。

菊池:スカウトサービスも開発中ですし、納得感を持って応募できるよう「自分の志望・志向と、この仕事のどこがマッチしたか」などが分かる機能も予定しています。ほかにもさまざまな機能を追加予定ですので、進化にご期待ください。

いつでもキャリアを考えられる、開かれた場に

― ところで今後の『リクナビ』は2027年卒業予定の方だけでなく、2027年卒以降の全学年の学生が利用できるそうですね。就職活動の早期化を助長するのではないかと少し心配なのですが、どういった考えで利用できる対象を広げたのでしょうか。

菊池:就職活動スケジュールのルールはもちろん遵守したサービスですし、過度にインターンシップやキャリアプログラムへの参加だけを呼びかけ、学生の皆さんを焦らせたいという意図はありません。

私たちが2027年卒以降の全学年の学生向けにサービスを提供する理由は、自分に合ったタイミングでキャリアを考えて欲しいからです。将来のキャリアを考えるのに適したタイミングって全員一律ではないと思うんです。人によっては大学2年生の時に考えたくなるかもしれないし、部活動を終えた大学4年生や専門学校1年生の時かもしれません。いつでも仕事について知ることのできる機会が用意されていることは、とても大切なことだと思うんです。

リクルートで新卒プロダクトプロデューサーを務める菊池浩太

― 確かに人によってキャリアを考えるタイミングは違いそうですね。低学年のうちは何ができるのでしょうか。

菊池:参加できるオープン・カンパニーやキャリア教育などのプログラムはまだ多くないかもしれません。ですが、自分の志向に合った仕事や業界にはどんなものがあるか見てみることで、スキルや経験を内省したり、「内定を得ること」だけをゴールにせず、生涯に亘る「ライフキャリア」を考えるきっかけにしてもらえたらと思っています。どんな働き方や生き方が理想かを考え、どの仕事が自身に合っているかを見極めながら、納得感のある自己決定を行うことが重要だと考えています。

― これからは自分に合ったタイミングで生き方・働き方を考えるような経験を積み重ねる就職活動にシフトしていきそうですね。

「自分の可能性を信じて」就職活動ができるよう、全力で支援

― 菊池さんは10年間、学生の皆さんの就職活動に関わってきましたが、今の就職活動をめぐる状況をどう捉え、今後何を目指していきますか?

菊池:今、就職活動をめぐる状況は大きく変化しています。学生の皆さんもきっと耳にタコができるほど聞かされていると思うのですが、日本は世界に先駆けて、少子高齢化による労働供給制約社会の到来に直面しています。2050年までに日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は2020年時点と比較して26%減少する見込み※3です。

※3 令和5年度版厚生労働白書 日本の人口推移より

これからは一人ひとりが生産的に働くことや、その人の能力をもっとも最適な形で最大限発揮することを求められる社会になるでしょう。そういう状況であるがゆえに、今まで以上に自分のキャリアに納得している状態で働くことが、入社後の活躍だけでなく、一人ひとりの人生の幸せにつながると考えています。就職活動の時点では、将来のキャリアの展望を見出すことに難しさを感じる人が多いからこそ、『リクナビ』を通してサポートしたいと考えているんです。

ただ、とても慎重に考えているのはテクノロジーの活用方法です。『リクナビ』を通してキャリアの選択肢や可能性が広がるケースもある一方、私たちが仕事をオススメするシステムのロジック設計や機能によっては、可能性を限定してしまうこともありうる。責任の大きさも感じており、留意が必要だと認識しています。社会のさまざまなステークホルダーの方からご意見をいただきながら、考え続けていくつもりです。

― 慎重にテクノロジーを活用しつつ、学生の皆さんのキャリアに貢献していく『リクナビ』に生まれ変わるんですね。最後に、これから就職活動に臨む学生の皆さんにエールをお願いします。

菊池:まずはお礼になるのですが、自分に合うと思える仕事・企業に出合えるサービスにするため、500名を超える学生さんにユーザーテストなどにご協力いただきました。学生さんが『リクナビ』を使う様子を観察しながら「さっき手が止まったのはなぜですか?」「ここで迷ったのはなぜですか?」と質問させていただき、たくさんの貴重な生の声を開発に活かすことができました。本当にありがとうございました。

世界に目を向けると、テストの点数で就職先が決まる国もあれば、縁故採用が基本で公平な就職機会がない国もあります。私は日本の就職活動はその人の「ポテンシャル/可能性」を見出していくような仕組みがあることや、選択肢の多い点がとても素晴らしいと思っているんです。ぜひ、自分の可能性を信じて、就職活動をしてください。素敵なキャリアをスタートできるように、私たちもサービスを通じて全力でサポートしていきます。

プロフィール/敬称略

※プロフィールは取材当時のものです

菊池浩太(きくち・こうた)
株式会社リクルート プロダクトマネジメント統括室 HR領域プロダクトマネジメント室 新卒プロダクトマネジメントユニット 新卒プロダクトマネジメント部
兼 HR領域事業戦略推進室 新卒領域事業戦略推進部

動画配信サービス企業、IT企業で営業や商品企画を経験後、2013年リクルートキャリア(現・リクルート)に入社。『リクナビ』の商品企画、大学低学年の学生向け新サービス『キャリフル』の立ち上げを担当。2016年グローバルアパレル企業に出向。新卒領域の営業企画・営業部門、中途領域事業企画の部門長を務めた後、2021年より新卒事業戦略推進部長に。2023年より新卒プロダクトプロデューサーを兼任し、現在2部署の部長を務める

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