世界的なインフレや戦争など先行きが見えない一方で、テクノロジーは加速度的に進化している――今20代のZ世代が直面するのは、そんな世界だ。
世界情勢や技術の進歩はZ世代にどんな影響を及ぼしているのか。
デロイト トーマツ グループの世界と日本におけるZ世代とミレニアル世代の意識調査から、日本のZ世代の実像を探る。
「世界のZ世代とミレニアル世代の特徴として象徴される言葉は『不安』です。インフレが進行するなか、両世代には金銭的な不安がベースにあり、キャリア形成についても不安がある。ただ、日本の状況をつぶさに見ていくと、世界と比べて興味深い差が表れてきます」
「デロイトZ・ミレニアル世代年次調査2023」を分析するデロイト トーマツ コンサルティングのパートナー、小野隆氏は、こう話す。
「生活費の高騰」が最大の関心事に 日本は「身の回りのこと」に関心集中
同調査は2022年11月から12月にかけて定量調査が実施され、日本やアメリカ、イギリスなど世界44カ国のZ世代・ミレニアル世代計2万2856人から、社会課題に対する意識、企業への期待や自身の就業観に加え、働き方の柔軟性を高める企業の施策に対する各世代の受け止め方などについて聞いた。日本の対象者は計801人だった。
まずは、関心事の結果から見ていこう(図1)。「個人の生活関連の関心事」では、「生活費の高騰」がグローバル、日本ともに最大の関心事となった。世界的インフレを背景に、日本のZ世代は36%、ミレニアル世代では43%がこの回答を選び、グローバルでも同様の傾向を示した。いずれの層でも、前回調査からこの数字が伸びている。
同様に、グローバル・日本の両世代で、今後12カ月の景気見通しについて聞いたところ、「悪化する」との回答は、「変わらない」「改善する」などよりも多く、特に日本のZ世代は「悪化する」が41%、ミレニアル世代は54%で、先行きへの不安が強いことも共通点として挙げられる。
一方で、関心事には差異もある。「マイノリティへの差別」を回答に選んだZ世代は、日本21%、グローバル16%で、それぞれのミレニアル世代よりも関心が高い。
また「社会・経済関連の関心事」では、「経済成長」と「所得と富の不平等」を選んだ日本のZ世代・ミレニアル世代が20%前後と、日本では経済関連の回答に注目が集まった。一方で「気候変動」「失業」を選んだ日本の両世代は6~17%だったが、グローバルではいずれも20%以上となっている。
調査担当者の渋谷拓磨氏は、「日本のZ世代は、他国と比べると環境問題やテロリズム、移民問題などについての関心がやや低い一方で、経済成長や所得と富の不平等などへの関心が高いという傾向が見てとれます。日本は他国と比較して治安がよく気候も苛烈ではないため、『このままで将来は大丈夫か』とぼんやりした不安はあっても、現時点では、より『身の回りのこと』に関心が集まっているのではないかと考えています」と分析する。