新入社員意識調査2024 【前編】今年の新人に見られる「確実性」と「挑戦」への二極化
近年、どのような企業でも新入社員育成の難度は高まっています。先輩・上司も正解が分からないビジネス環境のなかで、どのようにすれば新入社員の成長を後押しし、共によりよい未来をつくっていけるでしょうか。今回は、弊社が2024年度の新入社員を対象に実施した、以下2つの意識調査の結果から、新入社員の特徴とその背景をお伝えします。
■ 調査1
本記事で主に紹介する調査は、2024年3月~4月に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の当該期間での受講者741名(300名未満企業比率:66.5%)に、上司や職場に期待すること、期待や不安、雇用・就職先での勤続意向に関する質問について、回答いただいたものです。
■ 調査2
補足となる調査は、2024年1月~4月に弊社の新入社員向けのeラーニングサービスで「ビジネスマナー」や「ビジネスパーソンの基本行動とスタンス」の受講者1775名(300名未満企業比率:17.6%)に対して、仕事をするうえで重視するキーワード、新入社員のうちに身につけるべきこと、仕事をするうえで不安に思っていることに関する質問について、回答いただいたものです。
- 働くうえで大切にしたいことは「確実性」と「挑戦性」の二極化
「アクセスする情報」や「選択する経験」の多様化が背景か? - 働きたい職場の特徴は「心理的安全性」の高さ
「誰でも言いたいことが言える」オープンな環境がキー - 仕事をするうえで重視したいことは「成長」「貢献」「専門性」
「どこでも生き残れる力」への意識の高まり - 最後に
「個の尊重」と「オープンでポジティブな関わり」がより求められるように
働くうえで大切にしたいことは「確実性」と「挑戦性」の二極化 「アクセスする情報」や「選択する経験」の多様化が背景か?
まずは、働くうえでの意識をテーマとして扱います。
働くうえでの意識に関する質問では、社会人として働いていくうえで大切にしたいことを聞いています。結果は、「社会人としてのルール・マナーを身につけること」がトップ(45.2%)。「任せられた仕事を確実に進めること」(39.4%)、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」(31.0%)が過去最高。「何があってもあきらめずにやりきること」(13.8%)が過去最低となりました。
2019年の調査以降「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」は連続1位でしたが、6年ぶりに「社会人としてのルール・マナーを身につけること」が1位となりました。背景としては、完全なるコロナ禍明けの時期になり、出社での仕事や対面コミュニケーションへの回帰が起こったことで、マナーを求められる場面を想起する機会が増えたことが影響していると考えられます。
注目すべきは、「任せられた仕事を確実に進めること」「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」という一見相反する2つの項目が調査以来最高値になった点です。この2つの項目を選択した対象者の回答傾向を見たところ、両方ではなくいずれかを選択している割合が高く、「確実性」を大事にする層と、「挑戦性」を大事にする層との二極化の傾向がうかがえました。
「任せられたことを確実に進めること」は例年高い選択率であり、昨今の新人・若手社員の特徴である失敗への不安や恐れから、調べても分からないことや経験していないことに対しては、確実な動き方を求める意識は強いと考えられます。他方、インターネットやSNS上で、企業でのインターンシップや起業・副業の情報に触れる機会も増え、早い段階から社会人経験や仕事経験を積む層も出てきており、挑戦がより身近になってきている状況も見受けられます。
また、さまざまな情報が手に入る環境に身を置いているため、うまくいかないやり方や自分自身にフィットしないやり方を続けてやりきるよりも、他の選択肢を調べて見つけることが当たり前という感覚は強まっており「何があってもあきらめずにやりきること」の選択率は低くなっていると考えられます。
このように、学生時代に「選択してきた経験」や、どんな情報に触れてきたかという「アクセスする情報」の違いを背景として、新入社員の大切にしたいことは多様化しているといえます。