1993年のスキーブームのピーク以降、多くのスキー場で客数の減少が続いています。周辺の観光産業や地域経済への影響が大きいスキー客を呼び戻すべく、2011年にリクルートの『じゃらん』が立ち上げたのが、スノー需要活性化プロジェクト『雪マジ!19(ナインティーン)〜SNOW MAGIC〜』(以下『雪マジ!19』)。19歳であれば何度でもリフト券が無料になるというサービスです。地域関係者と共に取り組んできた結果、会員登録数、ゲレンデ延べ動員数ともに右肩上がりで伸び、ウインタースポーツの需要創出に貢献しています。さらに2014年からは20歳前後の若者がさまざまな体験を無料でできるアプリ『マジ☆部』のサービスをスタートさせ、ゴルフ、Jリーグ、マリンレジャー、温泉などにもコンテンツを広げています。こうした『マジ☆部』の活動を詳しくご紹介します。
客数が激減するスキー場を再び活性化させたい。地域、業界、リクルートが団結してプロジェクトがスタート
スキーブームがピークを迎えたのは1993年。それ以降、客数は減少の一途をたどり、多くのゲレンデが苦しい状況に陥っていました。観光地にとっては客数が落ち込みがちの冬場に誘客できるスキー客は貴重な存在。このままウインタースポーツ離れが進んでいけば、周辺の観光産業や地域経済に与える影響も計り知れません。『じゃらん』にはそうした相談が寄せられていたことから、2011年、スノーエリアの再活性化に向けたプロジェクトをスタートさせました。
課題解決に向けて調査してみると、見えてきたのが「19歳」を取り込むことの重要性。スキーやスノーボードは年齢が上がるほど参加率が下がる傾向があり、現在ウィンタースポーツを楽しんでいる若年層の特徴として、「高校卒業後、社会人になるまでの間」にスノーボードを開始した人が最も多いことが分かりました。逆に言えば「20歳までに経験をしないと、それ以降にウインタースポーツを始める人は少ない」ということ。そこで導き出されたのが、高校卒業後に初めての冬を迎える年齢「19歳」へのサービスです。ただ、この19歳という年齢は旅行の同伴者が親から友達や恋人に変化する時期。費用を自己負担することを考えると、ウインタースポーツはハードルが高いと感じる若者が多いことも想定されました。
そこで『じゃらん』が考案したのが、お金のハードルを取り除く19歳限定のリフト券無料化というサービスです。収益の柱であるリフト券をスキー場が負担するという難易度の高い取り組みではありますが、無料の年に何度も来て上達する楽しみを味わってもらえれば、翌年以降の再訪にもつながっていくことが期待できます。
スキー場運営者や地方自治体、宿泊施設の方々に働きかけながら進めていった結果、初年度の2011年度から89箇カ所という多くのゲレンデが参画し、以来右肩上がりで伸び続け、コロナ禍前の2018年度には192カ所にまで増加。コロナ禍においても、「19 歳になったら雪山に行く!」という若者に根付き始めた流れを止めないよう、2020年度から2022年度も160以上のゲレンデと共に取り組みを続けてきました。また、新たにゲレンデからの意見も受けて、19歳たちのステップアップ企画『雪マジ!20 (トゥエンティ)〜SNOW MAGIC〜』もスタートし、『雪マジ!19』で獲得した若者の継続した集客施策として効果を上げています。
『雪マジ!19』から、会員数200万人を超える『マジ☆部』へと進化。大学生世代の15%が利用
『雪マジ!19』では、多くの若者の需要創出を生み出すことにも成功し、これまでの10年間で、延べ310万人以上(推計値)の19歳が『雪マジ!19』を利用しゲレンデを訪れました。学生時代のスキー場来訪の有無によって、社会人になってからのゲレンデの来訪率が変化するというデータが出ていることから、長期的な需要創出につながることが予想されます。
じゃらんリサーチセンターでは毎年「スノーリゾートに関するマーケット調査」を実施し、『雪マジ!19』開始前との調査結果との比較検証などを行っています。2021年度のスキー・スノーボード実施状況によれば、18 歳~ 29 歳の社会人のうち、学生時代にスキー場を来訪したことのある方は38.1%、そのうち「雪マジ!」の利用経験のある方は67.5%に上り、若者の需要創出に貢献していることがわかりました。
『雪マジ!19』から始まった、若年層のレジャー・お出かけ需要創出のためのプロジェクトは、2014年より『マジ☆部』として新たなサービスをスタートさせました。スノーアクティビティに限らず、ゴルフ、Jリーグ、マリンレジャー、温泉などさまざまな領域へ、年齢も19歳〜22歳まで若年層をターゲットに広げ、全国450カ所以上(2022年4月現在)の施設を無料で利用できるアプリを運営しています。2022年には会員数が200万人を突破。「大学生になって『マジ☆部』に登録すれば、さまざまな体験をおトクに実施できる」という情報が先輩から後輩へと口コミを中心に広がっていき、現在では大学生世代の約15%が登録するサービスに成長しました。
『マジ☆部』が目指すのは、地域・観光産業の需要創出を実現し、地方創生に貢献していくこと。だからこそ参画施設に対しても登録料や利用料はいただいていません。『マジ☆部』の「0円」という魔法で、若者が新たなレジャーや日本各地の魅力と出会い、非日常の醍醐味を味わってほしい。そんな思いで『じゃらん』では今後も観光産業を盛り上げるさまざまな取り組みを続けていきます。
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