
2024年11月29日(金)、リクルート出身で認定NPO法人キープ・ママ・スマイリングの理事長を務める光原 ゆきさん、同じくリクルート出身で現在はNPO法人フェアスタートサポートの代表である永岡 鉄平さん、PwCコンサルティング合同会社の折原 涼太さんの3名をゲストに迎えたイベントを、リクルート社内で開催しました。
今の仕事を社会課題の解決につなげていくために必要なことは何か。どんなチャレンジができるか。組織や立場を超えて共有し、一緒に考えるべく、当日はリクルート従業員に加えて、NPO法人の代表や担当者、支援企業の方々など、総勢約100名が参加しました。
イントロダクション:NPOや企業による社会課題へ直結する活動に触れて
「仕事×社会貢献で未来をつくる。あなたが変える社会のかたち」というタイトルで開催した本イベント。第一部では、『リクルートEd-tech総研』所長の森崎 晃、ファシリテーターとしてリクルート顧問の奥本 英宏も登壇し、ゲストの皆さまの紹介とともに、パネルディスカッションを開催しました。
まず、2つのNPO法人の具体的な取り組みについてご紹介いただきました。
キープ・ママ・スマイリングの光原さんは、自身が先天性疾患を持つお子様の付き添い入院を経験。そこで多くの付き添い家族が食事や睡眠を十分に取れず、体調を崩してしまう現状を目の当たりにしたことをきっかけに、病気の子どもを育てる家族へのサポート活動を開始。現在は付き添う家族への食事や支援物資の無償配布の事業、さらには国や社会への提言など、付き添い入院の家族や小児病棟における環境改善に向けた活動を行っています。
次に、フェアスタートサポートの永岡さんより、児童養護施設や里親家庭等の若者たちの就労支援を目的とした団体設立についてご説明いただきました。施設出身者の離職率が高いという課題に対し、自己決定感の高い就職によって入社後の定着率を高める活動として、中学生・高校生への就職相談、職場見学や仕事体験のコーディネート、さらにさまざまな企業と連携した情報提供サイトの運営などをご紹介いただきました。

続いて企業の活動として、PwCコンサルティング合同会社の折原さんより、従業員へ社会課題の現場に近い環境での活動を推進するプログラムについてご紹介。通常コンサルタントワークをしているメンバーが複数名でチームを組み、業務の10%程度の時間を活用し、半年間に渡ってNPOやNGOを支援する本プログラムでは、2017年にスタートしてからこれまで75プロジェクト、延べ500名程が参加し、約40団体以上の支援が実現しています。また、ネットワークの構築を通じて活動の輪を広げたり、プロジェクトへの参加を通じて公共事業部にキャリアチェンジしたりする事例が紹介されました。
最後に、『リクルートEd-tech総研』所長の森崎より、教育および教育福祉領域で活動する調査・研究機関としての活動内容が共有されました。組織設立当初はリクルート単独でスタートしたものの、現在は自治体や企業、一般社団法人など教育に関わる方々との連携により行われる、さまざまな教育現場での子どもたちへの支援事例が紹介されました。
パネルディスカッション(1) 企業とNPO、それぞれの経験を活かした協働に必要な視点
各活動紹介後、「企業とNPOの協働に向けたそれぞれの視点の違い」をテーマにパネルディスカッションを実施しました。
リクルートでの勤務経験がある光原さんと永岡さんからは、協働にあたって、リクルートのような民間企業とNPOの視点の違いについて語っていただきました。
光原さんは、「リクルートでは、同じ視点を持つ人や価値観が似ている人に囲まれていたが、NPOの活動を通じて自分が大事にするものや目指すものはいろいろあって良いと気づかされた。また、企業との違いとして、NPOには競合という概念がなく、自分よりうまくできる人がいたらお願いすればいいという思考に変化した点が印象的」と述べ、永岡さんは「NPOでは、事業をやるという点は企業と同じものの、いかに多くのステークホルダーを巻き込みながら課題解決をしていくかという点が大きい。そこで大事になるのが、関わる人たちの主体性。リクルートで培われた主体性によって、意思を持った推進はパワーになり、子どもたちにも想いが届くと感じる」と語っていました。
一方、協働に対する企業視点として、折原さんから、「本プログラムでは実際に現場に触れて、NPOの方々と課題解決に向けて話し合い、働きかけていく経験となる。コンサルタントにとって、この経験はお客様と対峙するうえで、主体性を持って働きかけていけば物事を変えていける効力感につながっている」とお話がありました。

パネルディスカッション(2)企業とNPOが継続した協働を行うための秘訣とは
続いて、企業とNPOが協働していく方法とその課題についてディスカッションしました。
まず森崎より挙げられたのは、お互いが得意を活かせる環境をつくること。「企業の場合、事業が先にあって目標を達成するために業務に落としていくという流れがあるが、NPOの場合、目の前の子どもたちのために全力で取り組んでいって、それが事業になっていく。視点の違いを理解して歩み寄り、寄り添っていくことが必要になる。双方で情報交換しながら取り組むことが大事」と述べました。
永岡さんは、「意識しているのは、具体的なタスクではなく、あえて漠然としたご依頼をすること。例えば、協力企業を増やしたいので一緒に考えて欲しいといった内容。具体的なアイデアを出してもらい、取り組む際も根っこの部分で主体性を持つことで、成果が出れば喜びを分かち合える。そういうパートナーシップが大事だと思う」とのこと。
光原さんからは、「私もすぐに仕組み化やスケール化をしたくなるが、やはり支援団体としては、目の間で困っている人を支援することが一番大事。もちろん効率化やひとりでも多く支援できることは大事だが、効率化によって、切り捨てられてしまう人が出てしまう。そのバランスの難しさを理解してもらいながら、関係性を築いていけたらいい」と語っていただきました。
折原さんには、企業側の立場から継続的な活動につなげる方法として、従業員が社会課題に取り組むことで評価にも反映される社内制度をご紹介いただきました。参加した社員は得たものを社内で還元し、その魅力を社内に発信し、「トップダウンとボトムアップのアプローチがつながることが大事だと思う」と述べられました。また、NPOに対して期待するのは、「我々が入って活動したことがプラスになったら、ぜひそれを伝えてくれると嬉しい。本人のモチベーションも上がるし、社会的インパクトがあった場合、それをフィードバックしてもらえれば、経営者にも投資価値が伝わり、制度の継続性にもつながる」とお話いただきました。
最後に:仕事を通じた社会貢献を目指す方へメッセージ「ぜひ一歩を踏み出して」
パネルディスカッションの最後は、登壇者から「自分の気になること、関わってみたいことを見つけてみては。自分にとって当たり前にできることが、他者には当たり前ではなく、重宝されることもある。社会視点を持って現在の業務を捉え直し、社内外の垣根を越えてぜひ一歩踏み出してみて欲しい」といった参加者へのメッセージで締めくくられました。 第二部で行われたネットワーキングでは、登壇した4名を交え、イベント参加者との名刺交換やコミュニケーションが活発に行われ、盛況のもとにイベントが終了しました。
今回のNPOや他企業との交流を通じて、リクルート従業員一人ひとりが業務等を通じて、今後より一層社会に貢献する視点を意識する機会となりました。
今後もリクルートでは、企業やNPOなどさまざまな団体と協働する取り組みに注力し、社会価値の創造を推進してまいります。
【Profile】
光原 ゆき(みつはら・ゆき)
認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング 理事長
リクルート在職中に出産した次女が育児休業中に急逝したことをきっかけに、副業として病気の子どもを育てる家族への支援活動を開始。2014年にNPO法人を設立し、2019年からNPO専業に。現在は付き添う家族への食事や支援物資の無償配布事業や国や社会への提言など、ご家族や小児病棟における環境改善に向けた活動を行う。
団体HP:NPO法人キープ・ママ・スマイリング
永岡 鉄平(ながおか・てっぺい)
NPO法人フェアスタートサポート 代表
リクルートでの営業経験を経て、児童養護施設や里親家庭等の若者たちの就労支援を目的とした団体であるフェアスタートサポートを設立。若者たちの就職率と離職率のギャップに着目し、自己決定感の高い就職を通じた入社後の定着率向上に向けた活動として、中学生・高校生への就職相談、職場見学や仕事体験のコーディネート、さらにさまざまな企業と連携した情報提供サイトの運営などを行う。
団体HP: フェアスタート
折原 涼太(おりはら・りょうた)
PwCコンサルティング合同会社
テクノロジー/情報通信/エンタテイメント&メディア(TMT) マネージャー
PwCコンサルティング合同会社内にて、社会課題解決の場を従業員に提供するプログラムを企画・運営、リードを行う。2017年にスタートした本プログラムでは、これまで75プロジェクト、延べ500名程が参加し、約40団体以上の支援が実現。
企業HP:PwCコンサルティング合同会社法人案内 | PwC Japanグループ
森崎 晃(もりさき・あきら)
『リクルートEd-tech総研』所長
金融機関・IT企業を経て2015年に株式会社リクルート(当時、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)入社。 オンライン学習サービス『スタディサプリ小学・中学講座』(当時『勉強サプリ』)の立ち上げに携わり、その後、同サービスも活用しながら不登校の子どもや困窮世帯、学力不振の子どもを対象とする学習支援事業を新規事業として立ち上げ、現在に至る(ソーシャル・イントラプレナー)。また、通信制高等学校や大学でのICT活用・学生支援にも参画。
東京学芸大学客員准教授、関西国際大学客員准教授等を務めながら、2023年7月、Ed-tech総研所長に就任。2024年より東京都豊島区不登校対策委員会オブザーバーを務める。
奥本 英宏(おくもと・ひでひろ)
リクルート顧問
1992年株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(旧社名:人事測定研究所)入社。2011年10月株式会社リクルート ソリューションカンパニー カンパニー長、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ代表取締役社長に就任。企業の人事制度、人材評価、人材開発、組織開発全般のソリューションに従事。2018年4月リクルートワークス研究所に参画。2020年株式会社リクルート専門役員、リクルートワークス研究所所長。2024年10月株式会社リクルート顧問、リクルートワークス研究所アドバイザー。