昨今、住宅確保要配慮者(※1)と呼ばれる、住まい探しに困難を感じている方々の数は増えており、国土交通省の調査(※2)によると、居住支援法人に寄せられる住まいに関する相談件数は近年増加傾向にあります。リクルートの賃貸事業が運営する『SUUMO』でも、「百人百通りの住まいとの出会いを、もっと豊かに。速く。日本中に。」というミッションの下、2021年より住宅確保要配慮者の方々や、住まい探しに困難を感じている方へも豊かな住まい探しを提供できるよう、「100mo!」プロジェクトを立ち上げ、活動しています。
2023年11月30日(木)には、住宅確保要配慮者の方々が置かれている状況の理解促進や不動産業界での取り組み活性化を目的とした「百人百通りの住まい探し 100mo!」イベントを開催。住宅確保要配慮者の住まい探しに意欲的に取り組み、知見をお持ちの不動産会社様をお招きして、各社の取り組みのご紹介とその表彰を行うとともに、「住宅確保要配慮者への取り組み実態・ポイント、今後の賃貸業界に向けて」をテーマにしたパネルディスカッションなどを実施しました。
イベントでは各社の取り組みを紹介
以下では、イベント内にて「住宅確保要配慮者の住まい探しに意欲的に取り組まれている」という観点で表彰された不動産会社様の取り組み事例をご紹介します。
(※1)法令「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」と国土交通省令で「住宅確保要配慮者」として定められている考え方を指し、「100mo!(ヒャクモ)」プロジェクトにおいては「シングルペアレント」「外国籍の方」「高齢者」「LGBTQ」「障がい者」「生活保護受給者」の6属性を対象としています
(※2)出典:令和5年7月「住宅セーフティネット制度の現状について」国土交通省
紹介できる物件が少ない高齢者賃貸の現状に向け、管理・仲介が一枚岩となった安心見守りサービスを提供
賃貸住宅を求めて来店される高齢者に対して、紹介できる物件が極めて少なく、たらい回しになってしまう状況に課題感を覚えていた株式会社ニッショーでは、賃貸住宅を求める高齢者に対して管理・仲介が一枚岩となった入居者向けサービス「シニアライフサポート」を提供。
現場では「伴侶を亡くしたので広すぎる家を売却したい」などの理由によって、ひとり住まいの賃貸物件を探すことになった高齢者が、住居を借りられなかったり、借りられるとしても選べる物件が限られてしまったりする…という事実にショックを受ける姿を目の当たりにしていました。その反面、体調面や事故の心配などから、物件オーナーがシニアの方を受け入れづらく感じ、あらかじめお断りするケースが多いという事情もありました。
そこで、「自社で管理から仲介まで一貫して行っているからこそ、管理・仲介が一枚岩となった入居者向けのサービスが提供できるはず」と考え、「国の補助金に頼らず、既に管理や委託を受けているオーナーの物件を活用して空室を埋めつつ、シニアの見守りができる新しいサービスを考えよう」と決意。社内でプロジェクトチームを発足し、「シニアライフサポート」を開発しました。
具体的には、毎日の電話での安否確認サービス、24時間365日無料の駆け付けサービス、防犯や防災に加えライフ監視センサー・救急ボタンの設置など、高齢者とその家族が安心して暮らせるサービスです。
この取り組みにより、現在までに累計約800件、稼働中物件だけでも約450件と、多くの高齢者入居を実現しています。シニアライフサポートは物件オーナーにとっても、滞納やトラブルがない、入居年数も長い、通常決まりにくい長期空室の部屋が埋まる(例えば、高齢者は1階の方が住みやすい)などのメリットがあり、高齢者への安定的な住居提供も実現しています。
元入居者の外国人を従業員として採用。留学生・外国人の入居希望者に母国語による手厚いフォロー体制
京都市の不動産会社である株式会社長栄では、外国籍の入居希望者に向けて、グローバルデスクの設置や母国語でのフォローなど各種サポートサービスを提供しています。
京都市は、盆地で住居用の土地が限られる中、古くからの建造物や歴史的価値の高い建物も多く、新しい住宅を建てられる場所がごくわずかしかありません。賃貸住宅の供給数も少なく、保証人のいない外国人は、物件オーナーから入居を断られるケースがありました。
さらに近年、京都の各大学が留学生の積極的な受け入れにかじを切ったことから、外国人留学生の入居希望者が急増しています。彼らは日本での暮らし方や賃貸入居における各種ルールなど、前提知識がない状態で部屋探しをスタートする人がほとんど。ただでさえ賃貸物件数が限られる中、外国人が身寄りのない日本で住居を確保するのは困難な状況でした。
そこで、自社管理物件に住んでいた外国人を従業員として採用し、外国人の方々の暮らしをサポートする専門窓口として「グローバルデスク」を設置。入居時の注意事項の説明会のほか、契約時の通訳・翻訳、家具家電など当面必要な生活道具のレンタルなども行っており、入居までの一連の手続きをサポート。入居後も定期的に現地確認を行い、物件の扱い方や生活におけるルール違反などがないかをチェックするとともに、近隣の入居者ともトラブルなく暮らせるよう、必要があれば注意や説明などを行っています。
これらの取り組みが評判となり、管理物件における外国人入居者数は約1,200名に上っています。
スタッフ全員がLGBTQの理解を深め、物件オーナーへの説明にも注力。社外向けにも積極的に情報発信
福岡で地域密着経営を続けてきた株式会社三好不動産では、LGBTQの人たちが抱える悩み事や問題点を把握するため、当事者1,000名へのアンケートを通じて生の声に触れ、社内研修会や勉強会を重ねながら社内での理解・浸透を実施。店舗スタッフ全員が、当たり前に接客できる状態をつくっています。
同時に、物件オーナーに対する理解・浸透にも力を入れ、個別説明などにも対応。LGBTQの入居受け入れ推進後もオーナーの離脱はなく、入居率も高まっています。
また、レインボーマークの店舗設置や、九州レインボープライドへの出店、YouTubeや福岡市後援のセミナーでの情報発信などにも力を入れており、行政や異業種ともタッグを組みながら活動を拡大。これらの取り組みが、LGBTQカスタマーの安心感へとつながっています。
空室アパートをリフォームし、バリアフリー化。障がい者の住まい探しや引っ越しに付き添い、日々の生活もサポート
東京・足立区のメイクホーム株式会社は、高齢者や低所得者、精神障がいのある人や車椅子の人など、住まい探しが困難な人たちに特化した不動産会社。特に障がい者対応においては、住まい探しから保証人対応、物件の改修、病院付き添いまでさまざまなサービスを提供しています。
特徴的なスキームが「完全管理システム」。築古などで空室になっているアパートを、投資家から預かった資金でリフォーム・バリアフリー化し、住まいとして提供。トラブルなども全て対応することで、オーナーの不安やリスクを排除し、安定的・長期的な家賃収入を還元しています。
そしてただ住宅を提供するだけでなく、その住宅で実際に暮らしができるまでをフルサポート。部屋探しにおいては、内見時に送迎を行い、物件周辺環境や設備仕様を一緒にたどり、段差や手すりの有無などを全て確認。引っ越しの際は、福祉専門の引っ越しサービスを手配し、ご自身やペットの移動、ごみ処分、生活品同行購入や家電購入設置まで全てフォローしています。
住宅確保要配慮者は引っ越し頻度が低く、長期入居が多いため、空室率は2%以下にとどまっています。
ひとりでも多くの方が安心して住まいと出会えるように
今後、少子高齢化や労働人口の減少などを理由に、こうした問題はさらに顕著になっていくと想像できます。リクルートの賃貸事業では『百人百通りの住まいとの出会いを、もっと豊かに。速く。日本中に。』のミッションの下、ひとりでも多くの方が安心して住まいと出会えるよう、今後も賃貸業界全体で住宅確保要配慮者の方々に対する取り組みを進めてまいります。