進学や就職、結婚、出産といったライフイベントの在り方や考え方も大きく変わり、多くの選択肢が広がった時代となりました。例えば「就職」においては、年功序列や終身雇用といった日本的経営が転換期を迎え、転職が一般化し、働き方も多様化。「結婚」を見ても生涯未婚率が上がり、結婚が「当たり前だった時代」から「選択する時代」へ。結婚するタイミングも分散化が進み、事実婚や共働きで子どもを持たないDINKsというカタチを選択するなどさまざまなカタチも存在します。
こうした正解の見えづらい時代において、最も重要となるのが、自分で納得度の高い選択をするということです。『リクルートブライダル総研』の調査においても、「自律的選択」と「幸福感」に関係性があることが確認できています。しかし、いざ大きな分岐点であるライフイベントを迎えた時に、自身の中に自律的選択をするための基準を持っている人がどれだけいるでしょうか。何となく過ごし、気づいたら選択しないといけないタイミングが来てしまい、何となく選択してしまう。それでは自分自身の中で納得した選択にならない可能性も高くなります。
充実した人生のためにも、自らの人生を長期的視点で考え、ライフイベントで自律的選択をしてほしい。そんな考えから、『リクルートブライダル総研』では、自治体と連携してライフデザイン講座を開催しています。その内容や参加者の声をご紹介します。
オリジナルツール「人生ワゴン」を使ったワークで、自分の未来を主体的に想像
ライフデザイン講座のテーマは大きく二つあり、一つ目は「就職」だけではなく、「結婚」「出産」「家庭」など人生の彩りを大きく変えるライフイベントについて主観的に考え、想像し、自分ごと化すること。二つ目は、考える機会の少ない『結婚』『出産』『家庭』について客観的な情報を中心に知識や視点を増やすことです。
一つ目の「自分ごと化」するワークでは、参加者がリアルに「未来の自分」をデザインできるよう、独自で開発したオリジナルツール『人生ワゴン』を使用。これは自分の人生を「道」に見立てて、結婚や出産など各ライフイベントを中心にシールを貼りながら人生設計をしていくシミュレーションツールです。「結婚したい?」「いつ結婚する?」「結婚時の仕事は?年収は?」「子どもはほしい?」「子どもはいつ、何人?」「家事分担は?」「地元に住むの?」「10年後にやりたいことは?」などさまざまな観点から、ライフデザインを具体的に想像していきます。
個人ワークの後は、講義形式で情報をインプットする時間へ。ライフイベントに関する統計データをもとに、「働く」「結婚」「出産」「家庭」などについて客観的な情報を知ってもらいます。実際にこうした情報を詳しく知っている若者は少なく、結婚に対してハードルを感じている人の多くが「何となく」の印象や断片的な情報からの想像であるため、客観的現実を知ることで結婚へのハードルが払拭される方も多いようです。
その後、グループ内でそれぞれのデザインを共有。人に話すことで自分のデザインも整理され、また、正解のないことだからこそ、他人との類似点や違う点を知ることで、改めて自分の価値観を認識できるプログラムになっています。
約1万名が受講。高い満足度を得る結果に
少子化や未婚化の課題を抱えている自治体が多いことから、行政と連携して開催することが多く、これまでに16自治体で取り組みを実施。その自治体にある大学、専門学校、高校の学生や、一般企業の若手社会人などを対象に、これまでに約9,600名が受講しました(2022年4月現在)。学校ではキャリア形成などの授業の一環として行うケースが多くあります。
以前実施した一部の参加者へのアンケートでは、受講満足度が「大変良かった(38.9%)」「まあ良かった(52.6%)」を合わせると91.6%という高い満足度を得ています。また、受講前後の意欲の変化としては、恋愛意欲が70.0%から83.2%、結婚意欲は70.0%から84.0%、子どもを持つ意欲は73.7%から84.2%へとアップして、大きな態度変容が起きていることが結果として出ています。
参加後のコメントもご紹介します。
■ 参加者のコメント
- 今後のライフプランについても考えさせられたし、あまり考えたこともなかった結婚や子どもについて改めて考えさせられた。共働きや育児についても考えさせられた(男性・大学生)
- 他人の今後についての話は聞く機会がなかったので聞けてよかった。人によって考え方も違っていると知り、その人の考えに共感もできたので自身のためになったように思う(女性・大学生)
- 自分の将来のことを楽しく想像することでこの先がすごく楽しみになった(男性・大学生)
- 気づけば、 就職も結婚も妊娠も育児も近づいているんだなあと思い、今日のような考える時間をこれからも必要だなと思いました(女性・大学生)
- 自分の考えていたこと、思っていたことが 現実では違っていたり、思っていたよりギャップがあるかなと思いました(男性・大学生)
- 実家が専業主婦の家なのでそっち寄りの考えが強いが、今の時代に考えを合わせていく必要性を感じた(女性・大学生)
コメントからも多くの参加者にとって将来や人生を考える機会や気づきのある場となったことが分かります。また、結婚・家庭について考え、ポジティブに捉えられるようになった方も多くいました。
講師の『リクルートブライダル総研』所長の落合は、重要なこととして、ライフデザインを描いたとしても、それは固定化するものではなく、環境や意識の変化に柔軟に見直してよいものだと述べています。人生100年時代、不確実で、想定外のことも起きるでしょう。変わる前提でもよいので、長期的な視点で自分の未来を描き、そこにたどり着くための道筋を逆算して考えてみる。今後もリクルートでは、多くの人が納得できる人生を送るためのヒントを見つける機会を提供していきたいと考えています。