株式会社リクルートは、日本国内における婚姻の平等に賛同する企業を募るキャンペーン「Business for Marriage Equality」への賛同を表明しました。1960年の創業以来、「個の尊重」を重要な価値観と位置づけ、多様な従業員一人ひとりの違いを大切にしてきたリクルート。 セクシュアル・マイノリティへの理解と尊重についても、リクルートグループ人権方針において「性的指向・性自認(SOGI*)を理由とした差別や人権侵害」を行わないように努めることを明記し、誰もが自分らしく働くことができる職場づくりを進めています。その具体的な取り組み事例についても紹介します。
*SOGI:性的指向(sexual orientation、恋愛または性愛の対象となる性)と性自認(gender identity、自己の性別についての認識)の頭文字をとった略称
「Business for Marriage Equality」とは
近年、世界でセクシュアル・マイノリティに関する法整備が急速に進み、婚姻の平等が制度化されている国・地域が増えています。しかし、日本ではG7の中で唯一、同性カップルのパートナーシップが国レベルで法的に保障されておらず、世界的に見ても法整備の面で取り残されている状況と言えます。
このような中、日本で活動する3つの非営利団体による、婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」(BME)が行われています。公益社団法人 Marriage For All Japan(MFAJ)、NPO 法人 LGBT とAlly(アライ)**のための法律家ネットワーク(LLAN)、認定 NPO 法人 虹色ダイバーシティが共同で運営するキャンペーンであり、日本国内における婚姻の平等(同性婚の法制化)について多くの企業が賛同を表明しています。こうした活動は世界的にも進められており、近年ではオーストラリアやアメリカにおいて婚姻や雇用における平等を目指すキャンペーンが行われ、多くの企業が支持することで実際に法整備につながるケースが生まれています。
リクルートは2023年6月、この「Business for Marriage Equality」への賛同を表明しました。一人ひとりが自分に素直に、自分らしい人生を自分で決められる社会、つまり一層大きな自由を追求できる社会に向けた変化を促進し、「一人ひとりが輝く豊かな世界」を実現していきたいと考えています。
** LGBTQ+を理解し支援したいと思う人
SOGIに関するリクルートの取り組み
リクルートは、1960 年の創業以来、「個の尊重」を重要な価値観と位置づけ、多様な従業員一人ひとりの違いを大切にしてきました。DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の重要性が高まっていますが、リクルートにとってそれらは経営理念としても掲げる「個の尊重」を体現することそのものであることから、2006年に専門組織を設置して推進してきました。
セクシュアル・マイノリティへの理解と尊重についても、リクルートグループ人権方針において「性的指向・性自認(SOGI)を理由とした差別や人権侵害」を行わないように努めることを明記し、誰もが自分らしく働くことができる職場づくりを進めています。
リクルートのSOGIに関する取り組みは、DEI推進の一環として2016年にスタートしました。2017年には既に慶弔休暇や休職(介護・育児)、両立支援策などの配偶者やその家族に適用される制度について同性パートナーへの適用を開始。自治体などによるパートナーシップ証明がなくても対象となります。こうした取り組みにより、2018年からは企業の多様な性に対する取り組みを評価するPRIDE指標で最高評価の「ゴールド」を5年間連続で得ています。
ただその一方で、制度整備を進めて数年経っても、利用する人が少ないという実態もありました。その背景には、当時は制度の利用に上長の承認が必要であったり、アウティング(本人の了承なく他者に性自認や性的指向などのセクシュアリティを暴露すること)などのリスクを懸念したりして、敢えて申請しないケースも多かったことが想定されます。そのため制度としても上長の承認を不要にするだけでなく、それを安心して使える組織風土がなければ意味がありません。そこで新たに風土醸成のための取り組みをスタートさせました。
まず2018年から管理職向けにセクシュアル・マイノリティに関するeラーニング研修をスタート。2019年には、配信対象を全従業員に拡大させ、基礎知識に加えて当事者の声やケーススタディも取り入れるなどの理解を促す工夫をするなどコンテンツも拡充しました。このeラーニングを受講し、最終画面で希望すればAlly(アライ)グッズを贈る企画も実施。他にもワンストップでセクシュアル・マイノリティセクシュアル・マイノリティ関連の情報がまとめて得られる啓発サイトの設置、ワークショップ・セミナー開催などを通して従業員理解の促進を図ってきました。
SOGIやセクシュアル・マイノリティに関する理解を深めるために、リクルートおよび国内グループ会社の従業員を対象としたeラーニングを継続しており、2022年度は、対象者(2.4万人)のうち、約80%にあたる約2万人が受講。受講後の理解度は約100%となっています。
Allyグッズとして希望者に配布したキーホルダー。キーホルダーをふたつセットにして送ることで、ひとつを自分用に、もうひとつを誰かに渡してもらい、Allyを広げる行動を後押しする
あらゆるSOGIと個を尊重する会社へ
日本では成人の1割がLGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティといわれますが、Indeed Japanが実施した「LGBTQ+当事者の仕事や職場に関する意識調査」では、約4割が職場で生きづらさを感じているという調査結果が出ています。
リクルートにおいても、2016年からさまざまな取り組みを続けてきましたが、2022年に社内で実施した調査では、いまだにセクシュアル・マイノリティ当事者が自身の性自認・性的指向に関して「日常的に嘘をつかざるを得ない」状態が続いていること、全体の約30%が職場で残念な体験をしていること、そしてそれは日々の働くシーンにおいても発生していることが明らかになっています。
こうした背景から、社内のコミュニケーションやeラーニングのコンテンツをアップデートし、新しいeラーニングプログラムを展開しています。あらゆるSOGIを尊重し、働きやすさ・働きがいが向上する環境づくりに向けて、リクルートは今後もさらなる取り組みを続けていきます。
社内で公開している「リクルート従業員が知っておきたい7つのステップと5つのケース」