資生堂子ども財団主催の「未来発見ワークショップ」で協働 ~児童養護施設の子どもたちに、自分の将来を考えるきっかけを『WORK FIT』が提供~
2024.03.25 Mon
リクルートが提供する就労支援プログラム『WORK FIT』。就職活動したくてもなかなか動き出せない、結果が出ないという若者や大学生に向けて、就職活動に前向きに取り組むきっかけを提供するプログラムです。就労支援を行っている団体や、地域若者サポートステーション(サポステ)、大学(キャリアセンターなど)に無償提供しており、2011年の提供開始以降、約3万6000人が本プログラムを受講しています。
そして2021年からは、公益財団法人資生堂子ども財団主催の「未来発見ワークショップ」へ『WORK FIT』も参画。児童養護施設で生活する児童に向けて、自身の興味関心への気づきと、仕事に関して考えるきっかけづくりを目的として実施されています。 今回は、資生堂子ども財団と『WORK FIT』の協働のきっかけ・目的とともに、先日行われた「未来発見ワークショップ」の模様をご紹介します。
職業選択における児童の自己決定を支援する取り組みとして、2019年に協業を開始
資生堂子ども財団との取り組みがスタートしたのは、2019年のこと。資生堂子ども財団が取り組む「社会的養護下の子どもの支援(※)」に共感し、『WORK FIT』側から協働を打診。資生堂子ども財団主催の、退所を控えた高校3年生向け「スターターズセミナー」に参加したのが始まりでした。
その後、『WORK FIT』側で中学生や高校生も参加できるプログラムを開発。より早い段階から「働く」を意識するきっかけづくりとして、2023年までに8施設約70人に対し「未来発見ワークショップ」を行ってきました。
「未来発見ワークショップ」の目的は、児童が自分の興味関心の領域を知り、世の中にある仕事を知ることで、将来の自己決定の参考にしてもらうこと。そして、児童養護施設の職員に対しても、「子どもの興味関心の領域を知ることでキャリア支援に活かしてもらいたい」との想いを持って臨んでいます。
※ 社会的養護とは、さまざまな理由で親・保護者と暮らせない子どもたちを、公的責任で保護し、社会的に養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うことです
ワークショップを通して自分の可能性を発見し、仕事に関する視野を広げる
2024年2月には「未来発見ワークショップ」の5回目を開催しました。このワークショップは児童9人、職員3人が3つのグループに分かれて参加。「自分の可能性を発見しよう」「仕事に対する視野を広げよう」「やってみたい仕事の特徴を言葉にしてみよう」の3部構成で、3時間に渡ってさまざまなワークに取り組みました。
第1部の「自分の可能性を発見しよう」では、「ドーナツ屋さんを作る」というワークを実施。性格タイプに基づくキャリアと職業選択の理論「RIASEC」を基に、「料理の準備から盛り付けまでを行う係」「お店の装飾やロゴなどクリエイティブなことを担当する係」「接客してドーナツを販売したり、接客の仕方を他の人に伝えたりする係」など、ドーナツ屋さんの仕事を「6つの係」に分け、やってみたい係を各々が第3希望まで選び、その理由とともにグループ内で共有し合いました。また、「好きなこと」「得意なこと」を発見するため、チェックシートを用いた個人ワークを実施しました。
これらのワークを通して、「自分はこんなことに興味を持っているんだ」という新たな気づきを得た児童や、「こんなことがやってみたいのか」という意外な発見があったと言う児童もいたようです。「みんなやりたいことがバラバラだった」「他の人がその係を選んだ理由を聞くのが興味深かった」などの声も上がっていました。
第2部の「仕事に対する視野を広げよう」では、「幕の内弁当」を題材に、ひとつの商品にどれぐらいの仕事やどれぐらいの人が関わっているのかを想像するグループワークを実施しました。
例えば、鮭の塩焼きひとつ取っても、鮭を捕獲する仕事、養殖の鮭を育てる仕事、鮭を売買する仕事、輸送する仕事、塩を作る仕事、塩を検品して出荷する仕事などたくさんの仕事があり、多くの人が関わっています。それを踏まえて、卵焼きには…ソーセージには…ごはんには…と、グループごとに考えていきました。
「卵焼きを作るには、まず鶏を育てる人がいないと」「それなら鶏の餌を作る仕事もいるのでは?」などと皆が活発に意見を出し合う過程で、普段何げなく口にしている食材にもたくさんの仕事が関わっていることに気づいた児童が多かったようです。
そして第3部の「やってみたい仕事の特徴を言葉にしてみよう」では、カードの絵や写真を見て、やりたい仕事・やりたくない仕事の特徴を言葉にするという個人ワークを実施しました。
カード式職業情報ツール「OHBYカード」を使い、カードに描かれた仕事風景の写真やイラストを見ながら「選択する」「選択しない」「考え中」の3つに分け、「選択しない」「選択する」に選んだカードの傾向を考え、自分の仕事選択の傾向を洗い出すというもの。例えば、「選択する」カードの特徴から、「いろいろな人と関わりそうな仕事だから、楽しそう」、「選択しない」カードの特徴から「細かい手作業が多そうだけれど、自分はそういうのは苦手みたいだ」などといった自分の傾向が見えてきます。
洗い出された傾向に驚いたり興味を持ったりする児童がいる一方で、カードの選別に悩む児童もいたようでした。
これら2時間に渡るワークを通して、児童の皆さんはさまざまな感想を持ったようです。「楽しく取り組めた」「自分のことがたくさん知れて良かった」「やりたい仕事が分かってか良かった」「知らない仕事がたくさんあった」などの意見が多数上がっていました。
『WORK FIT』を将来、”働く”を考えるきっかけづくりに
児童の皆さんが実際に働くのはもう少し先のことですが、自分の好きなことや興味のあること、やってみたいことは何かを理解しておくと、将来仕事を選びやすくなります。そして、いろいろな仕事について知っておくと、自分のやりたい仕事や興味を持てる仕事を見つけやすくもなります。施設を退所し自立していく過程で、将来のキャリアを選択するタイミングが必ず訪れます。児童の皆さんが自分を知り、仕事を知ることは、その際の選択肢を広げることにつながるのではないかと考えています。
リクルートでは、これからもさまざまな団体と協力をしながら、こうした社会的養護下の児童一人ひとりに寄り添いながら、支援を続けてまいります。