近年、キャリア教育の重要性が注目されています。社会環境や経済の変化、雇用の多様性などは、子どもたちにも大きな影響を与えており、「将来に夢を持てない」「将来を考える上で役立つ理想的な大人のモデルが見つけにくい」などの課題が生まれています。この変化の激しい社会の中において、子どもたちが変化を恐れずに対応し、自らの将来を切り開きながら生き抜いていける力を育てていくことが求められています。
そうした状況の中、文部科学省では、子どもたちの「生きる力」を育むという理念のもとで、学習指導要領の改定を進めてきました。その中で重要な役割を担っているのが、キャリア教育です。文部科学省では「一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通してキャリア発達を促す教育」と定義しています。小学生という時期は、社会生活における自らの役割や働くこと、夢を持つことの大切さの理解、興味・関心の幅の拡大、自己と他者への関心、社会性や自主性、意欲などを養う重要な時期です。こうした小学生の段階からキャリア教育を行うことの重要性は認知されていますが、具体的な取り組みとしては遅れているという課題も語られてきました。
リクルートでは、人材採用に関する総合サービスで培ってきた知見を小学生のキャリア教育に役立てていただきたいという思いから、10年以上にわたり従業員による社会貢献活動「キャリア教育プログラム」を全国各地で実施してきました。2021年度からはプログラム内容を一新し、より児童の内面に向き合い、児童一人ひとりの個を尊重しながら将来について考える仕立てとしています。
岡山市立岡山中央小学校(岡山県)と愛西市立立田南部小学校(愛知県)で行われたオンライン形式のキャリア教育プログラムをご紹介します。
一人ひとりの「ワクワク」から、未来の仕事を創造する新プログラム
岡山市立岡山中央小学校(岡山県)と愛西市立立田南部小学校(愛知県)の2校、計5クラス約200名の児童を対象に実施した新たなキャリア教育プログラム。各学校のご要望に応じて仕立てを変えながらオンラインにて授業を開催しました。
その内容は、各学校共通して、まず授業実施前に児童一人ひとりの内面を探る質問ワークに答えてもらうことからスタートします。リクルートの従業員がそれらを確認しながら、ワークでよく出てきた言葉を抽出・カテゴライズして「9つのワクワクキーワード」をマッピングしておきます。
授業では、事前にまとめたキーワードから、どんな仕事が生み出されるかを考えるワークを行いました。キーワードから連想される仕事については、児童同士で会話をしながら「別にこんな仕事もあるね」と盛り上がる場面も。最終的に創造した仕事を発表し合い、プログラムは終了しました。
岡山中央小学校では、事務局による講義形式で実施しましたが、立田南部小学校では、また異なる仕立てで、従業員講師7名を交え、各5名程度の児童を担当する形式での開催となりました。対話を通じて児童一人ひとりの内面に向き合う仕立てになっています。
1回目の授業では、事前にまとめた「9つのワクワクキーワード」を基に、児童自身で「人生スローガン(これからの人生で大切にしたい価値観や、生き方の軸)」を作成。2回目の授業では、作成した「スローガン」を踏まえて、当社従業員との対話を通じて児童一人ひとりが「ワクワクする未来の仕事」を創造。さらに後日、当社従業員から見た児童の「持ち味」と児童が「ワクワクしそうな今ある仕事」、そして児童が授業中に考えた「スローガン」と「未来の仕事」を全児童分まとめて製本し、世界に一つだけの「立田南部小学校版 未来のお仕事図鑑」を納品しました。
この新たなキャリア教育プログラムを作り上げた背景について、当社のプログラム担当者はこう説明しています。
「世の中の流れは速く、時代に応じてどんどん新しい仕事が生み出されています。今ある仕事が今後も存在し続けるか予測できない、そんな世の中だからこそ、自分が『何をしたいか』や『どんなことを大切に生きていきたいのか』を早期に考え、自ら将来を切り開いていく力が必要であると考えていました。当社は、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す、という基本理念に則り、個を尊重しながら人材の成長に貢献してきた企業です。その知見を生かし、児童一人ひとりの内面から「ワクワク」を引き出し、児童自身が「ありたい姿」や「ワクワク」すると感じる仕事を自分で考え、将来についての気付きをもたらす一助となりたいと考え、本プログラムの考案・実施に至りました」
働くことの「ワクワク」を伝え、自分らしいキャリアや将来について考えるきっかけづくりに
参加した児童からは、「授業を通じて優しい講師の方と話す中で、今まで考えていなかった将来の夢を見つけることができました」「今まで、仕事は大変なものだと思っていたけど、仕事は自分の『ワクワク』から見つけるものだと知れて良かったです」「講師の方がその人の特徴を見つけて、そこから当てはまりそうな仕事を連想していてすごい!と思いました」「自分の好きなことがあっても、あまり言葉にすることがなかったので、改めて自分の好きなことをじっくり考えられて良かったです」「世界にはたくさんの『ワクワク』するお仕事があることを知り、もっと自分の『ワクワク』を発見しようと思いました」といった感想が寄せられ、自身のワクワクや将来について、多くの児童に気付きを与える場になったことがうかがえました。
また、実施した小学校の先生方からは、「小学校では、将来の夢を決めるだけで終わることが多いのですが、このプログラムでは『人生観』や『自分らしさ』を考えた上で仕事につなげることができていたので、より深い内容になったのではないかと感じます。事実、何人かの子どもたちが出した将来の仕事は、これまで考えていた仕事と大きく変わっていたり、具体性が出ていたりしました。また、普段接する機会のない、都市で働く大人の人たちとの関わりそのものも、児童にとって大きな刺激となったようです。これを機に、児童たちが将来についてより深く考え、『自分らしく』将来を歩んでいくことを期待しています」という感想をいただいています。
リクルートの中途メディア事業領域では、今後も本プログラムの内容の磨き込みを図り、積極的に展開することで、小学生に働くことの「ワクワク」を伝え、自分らしいキャリアや将来について考えるきっかけづくりへの貢献を目指していきます。