「若者視点で雇用課題を解決せよ」 学生が糸島市・京都市・木曽地域を訪問し、課題解決に挑む8日間
2024.12.09 Mon
リクルートが主催する『WOW! BASE 』は、学生と社会人が垣根を越えて出会うプロジェクト。若者と事業の「共創」をテーマに、通年で多様な社会課題と向き合う場づくりを行っており、自治体や複数企業と協力して採用から定着までを行う『マチリク 』と連携したプログラムも実施しています。今回は、観光地として人気がある一方で、さまざまな雇用課題を抱える地域を学生たちが実際に訪問し若者視点で課題解決策を立案していく8日間のプログラム「地域ブランディングアイデアソン〜若者視点で雇用課題を解決せよ〜」を開催しましたので、その様子をご紹介します。
現地訪問で感じたリアルな課題を解決する8日間のプログラム
「地方創生/雇用の課題に本気で取り組みたい」「机上の空論ではない、リアルな課題解決・企画立案に挑戦してみたい」そんな想いを持った学生約60名が参加した今回のプログラム。「人口が減っている」「定住してもらえない」「若年層の就職先として興味を持ってもらえない」など、さまざまな雇用課題を抱える3つの観光地域(糸島市、京都市、木曽地域)の中から、1地域を担当。現地に直接訪問し、リアルな魅力や課題に触れ、学生ならではの視点やこだわりを企画に反映し、課題解決策の立案に挑みました。
プログラムが始まる前に、学生たちは事前課題に取り組むことからスタート。担当地域の魅力・課題について事前リサーチを行ってプログラムについて理解を深め、また、自分の強み・弱みを整理して自身への理解を深めながら、プログラムを通じて実現したいことやチャレンジしたいこと、どんな成長をしたいのかなどを言語化した状態で実際のプログラムに臨みました。
<事前インプットを受けた各地域のテーマ>
・福岡県糸島市
「『糸島しごと』の魅力を言語化し、若者の雇用を増やすには?」
近年人口が増加し、全国的にも注目を集める一方で、市内事業者の人材不足が課題になっています。
・京都府京都市
「京都企業の魅力を言語化し、京都市で働く若者を増やすには?」
全国から学生が集まる「学生のまち」でありながら、就職時に市外転出する学生が多く、企業の担い手不足が深刻化しています。
・長野県木曽地域
「木曽地域の若年層ファンを増やし、将来的な関係人口を増加させるには?」
古き良き街並みを楽しむ観光客が国内外から多く訪れる一方で、若者のファンが少なく、事業の担い手不足という課題を抱えています。
現地訪問し学生目線で地域の魅力を捉える! 期待するのは「学生ならではの本気・本音の提案」
プログラムのDAY1-2は、それぞれの担当地域へ実際に訪問して行われました。最初に事前課題で作成した自身の強み・弱みをまとめたシートなどを共有してチームビルディングを行い、その後、『マチリク』社員による地域創生や雇用課題解決、企画立案のためのワークフレームなどのインプットも行われました。各地域ごとに、リクルート社員がメンターとなりワークをサポートしていきます。
実際に地域課題解決に取り組むに当たり、大事にして欲しいポイントとして挙げられたのが「当事者として考えること」、そして「学生ならではの本気・本音の提案をして欲しいこと」。それぞれの地域が掲げたテーマは、非常に難易度の高いもの。学生ならでは視点での解決策を期待されていることが強いメッセージとして伝えられました。
その後、自治体担当者から地域の魅力や人手不足の現状について語られ、さらに課題を抱えている地域の事業者2社が参加して、現場の現状や声を直接ヒアリングする機会を設けました。1社につき約1時間、白熱したディスカッションや質疑応答が行われました。
DAY2は、その地域の魅力を実際に体感するフィールドワークを地域ごとに行いました。各地域の観光地としての魅力を感じながら、地域で実際に「働いている人」と交流し、より手触り感を持って地域の魅力や課題を知る時間となりました。
DAY3-4は、前日に現地でリアルに感じた地域の魅力と課題を活かし、グループごとに課題設定と企画骨子の設計を行い、DAY5で中間発表を開催。作成したプランシートの内容について『マチリク』社員と壁打ちを行い、フィードバックを受けながら、DAY6-7でさらに企画に磨きをかけて最終発表に向けて準備を行いました。
いよいよ最終発表。学生ならではのアイデアに、地域担当者の感嘆の声も
DAY8はいよいよ最終発表。各グループはどのような企画を立案したのでしょうか。ここでは各地域の発表内容を1班ずつご紹介します。
・福岡県糸島市担当:B班
「only×all 唯一無二の君が全て揃う糸島で輝く」
人材不足でありながら、若者が流出してしまっている現状に対して、糸島出身の若者にいま一度地元の魅力に気づかせ、働く場所としてのイメージを持ってもらうための施策を提案。具体的には、「簡単な適性診断で3業種に振り分ける」→「各業種で企業と学生が集まる交流会を開催し、相互評価の上で適切にマッチングし、体験企業を選定」→「学生は3〜4企業を回り職業体験を行う」→「企業は内定もしくは長期インターンのいずれかで採用できる」という流れ。自己分析が進まない学生が参加することで、自分の強みや適性を理解でき、将来のキャリア選択に自信が持てるように。企業側も若者の人材を獲得しやすくなるという双方にとってメリットになる企画です。
糸島市の自治体担当者からは、「DAY1で私が伝えた、糸島市は何でもあるという強みを活かし、「何でもあるなら、地元糸島に『やりたいこと』もあるのではないか」と捉えて検討を進めてくれたことが嬉しかった」「糸島市の事業者が自社の魅力をうまく伝えられていないため、適性診断や交流会、インターンを通じて相互理解を図るというのは、中途採用でも活用できるのではないかと思った」「事業者さんの声を踏まえた上でより現実的な形にできると考えている」といった講評がありました。
・京都府京都市担当:D班
「伝統産業のアルバイト×町家シェアハウス×伝統産業チャレンジコンテスト」
伝統産業に対する若者の理解が低下しているという課題に着目し、伝統産業と学生との距離を近付ける企画を考えました。ひとつ目が、京都市内の学生に格安で提供する「町家シェアハウス」。伝統産業でのアルバイトを応募条件にすることで、京都の文化・伝統産業に直接触れる生活環境を提供し、伝統の継承や文化発展に貢献する人材を育成することを目的としています。ふたつ目が、学生がチームを組み、京都の伝統産業を基にした新商品・サービスを提案する「伝統産業チャレンジコンテスト」。これらの施策によって、学生が伝統産業に触れる機会を増やし、将来の仕事選択の幅を広げることを目指しています。
京都市の自治体担当者からは、「元々は伝統産業に興味がないターゲットを、格安のシェアハウスをきっかけとして、自然に伝統産業のアルバイトにつなげることができている」「さらに単に伝統産業のアルバイトをするにとどまらず、ビジネスコンテストや伝統産業に興味がある学生同士のコミュニティ形成など、新しい価値の創造にもつなげている点がよい」という講評が述べられました。
・長野県木曽地域担当:A班
「~ゲームからはじまる社会貢献~すごろくボランティア」
日本の原風景が残り、レトロとモダンの融合した地域であること、外から来た人に寛容な文化があることを地域の魅力とし、さらに、観光や雇用の課題があることがむしろ機会であることとして捉えました。しかし、高齢化が進み、若者が集う場所が少ないことから、「若年層が何度も訪れたくなる環境をつくり、その若者が地域おこしをする状態」をつくることを目指して、都心ではできない体験を求める学生ボランティアを集める施策を企画。「すごろくボランティア」と名付けて、すごろくの各マスに「夏野菜の収穫」「子どもとの交流」「祭りのお手伝い」といったボランティア内容を記載して、止まったマスの内容のとおり作業を行うというゲーム感覚のボランティア活動を提案しました。さらに、5年後に「木曽町おかえり旅」の招待はがきを送ることで、学年が上がったり、社会人になって新しい価値観でもう一度木曽を思い出してもらうきっかけづくりをし、将来的な関係人口につなげる提案もしました。
木曽地域の自治体担当者からは、「ただのボランティアではなく、すごろくとの掛け合わせが面白く、ボランティアの募集も魅力的になると感じた」「募集先もボランティアサークルに声をかけることで、まとまった人数が来ていただけるイメージもあって、仕組みがしっかりしている」「5年後にはがきを送るというアイデアは、この企画以外にも活用ができそうなので当課の別事業でぜひ使ってみたい」といった講評が述べられました。
学生が今回のプログラムで得た学びや気づきとは
参加後のアンケートでは、90%以上の満足度を獲得した今回のプログラム。参加した学生は具体的にどのような学びや気づきがあったのでしょうか。いくつかご紹介します。
・机上の空論ではなく、本気で取り組んで欲しい解決案を班員と5日間議論し続け、形になったときは非常に達成感を感じました。
・糸島研修では事業者の方や行政の方という普段あまり関わりのない方々の生の声を聞くことができ、貴重な経験になりました。全国から来た人の新しい視点の意見を聞けてとても興味深かったです。
・リクルートの課題解決ノウハウを学びながら、個性溢れる人と出会い友達になれました。
・このように実際に地域に訪問できるプログラムに参加できたことは自分の経験において大きなものになったと思います。
・行政の方やリクルートの方などから何度にも渡り、自分たちの案に対してフィードバックをいただける機会はほとんどないため、貴重な機会だった。それにより自分の考え方や方向性を見つめ直すことができ成長できた。
今回のプログラムでは、学生×地域自治体×リクルートがコラボレーションし、地方の雇用問題の解決に向けて、若者ならではの視点やこだわりを活かした、新たな芽が生まれました。これらのアイデアは各自治体で実行されることも検討されており、地域課題解決につながる可能性も秘めています。今後もリクルートではこうした活動を通して、学生や地域(企業・自治体ぐるみ)と連携しながら、雇用を通じた地方創生のカタチでの課題解決を積極的に取り組んでまいります。