全産業の中でも特に女性比率が低いとされる、トラック運送業。全産業における女性就業者の割合は45%であるのに対し、トラックドライバー(輸送・機械運転従事者)として働く女性は4%にも満たない(参考:総務省統計局「労働力調査」2022年)のが現実です。
ジョブズリサーチセンターでは、女性を中心に人材の定着と活躍の場を提供する運送会社で働く、女性経営者を2名クローズアップ。 女性就業に向けた人材活用事例を紹介しています。
高浜共立運輸株式会社社長の神谷 弘恵さんは、「自分の仕事が何につながるのかイメージしやすい仕事であること」と、「定期的に固定の相手とのコミュニケーションが必要とされる仕事であること」の2点が、女性が運送業界に興味を持ってくれやすい業務条件であると指摘しています。
「例えば、コンビニや駅へのフリーペーパーの配送業務。届け先が企業さまに対する仕事ではありますが、エンドユーザーは消費者の皆さまに対する仕事です。未経験のドライバーには仕事を身近に感じてもらうために、消費者へのつながりが分かりやすいものを担当してもらう工夫をしています。また、必ず同じ場所・同じ時間に届けるので、自然と決まったコミュニティができあがります。そこにやりがいや居心地の良さを感じて、離職せずに続けてくれるのではないでしょうか」
同時に、「無理をさせない」「きちんと教える」を徹底し、未経験でも働くことができる仕組みと環境づくりに努めた結果、離職者なし・採用にも困らない状況をつくり上げることができています。
株式会社CHIGUSA JAPAN社長の門馬 千草さんは、子育て中で時間に制約のある従業員でも働きやすいよう、中長距離の運送ルートだけでなく、短距離の運送ルートも新たに受注したとのこと。
「個人にあわせて仕事を獲得するのが、経営者の仕事だと思っています。例えば、けがや妊娠など、人によっていろいろな働く際の制約はありますが、そうした中でも働ける環境をつくっていけば、みんなが自分のできる範囲で働くことができます。制約のせいで仕事をできない人がいるのなら、経営者である私が、その人にもできる仕事を取ってくればいいんです」
その結果、「働きやすい」と従業員から好評を得て、その評判が地域の中で口コミとして広がり、採用は充足していると言います。
この2社にいえるのは、性別によって方針をつくったわけではないこと。制約の多い従業員が働きやすい職場環境を考えた結果が、「女性にとって働きやすい職場づくり」だったというだけです。そして「従業員が個別に働きやすい職場づくり」を目指すことは、子育て中の女性がいる会社だけではなく、介護をしながら働く従業員がいる会社や、体調を考慮しながら働く従業員がいる会社にも求められるべきことといえるでしょう。
人材課題に向き合った企業事例をヒントに、会社としてのあり方を見つめ直してみると、問題解決の糸口が見つかるかもしれません。