女性の活躍

日本航空のケース ―客室乗務員マネジャーに聞く女性活躍マネジメントのポイントとは?

企業事例職場マネジメント

2016年04月21日

日本航空人事部でダイバーシティ推進を担当する中丸氏

日本航空人事部でダイバーシティ推進を担当する中丸氏

日本の社会では約6割の女性が妊娠出産を機に退職するなか、 女性社員が9割以上を占める日本航空(以下、JAL)の客室乗務職(以下、CA)では、 妊娠・出産後も仕事を続けることが出来るよう各種両立支援制度を整えています。

企業人事の採用支援をおこなうリクルートキャリアを通じて 人事部でダイバーシティ施策を推進する中丸氏と、産休・育休を経て現在客室マネジャーを務める吉川氏に、 仕事と育児を両立できるよう取り組んでいることについて話を聞きました。

制度とマネジメントの両輪で進める女性活躍推進

乗客の安全を最優先に考えなければならない業界の特性上、 JALではイレギュラー発生時にも平常通りの運航ができるよう幾重にもリスク回避策を準備しています。 例えば、安全上、機種毎に定められた数のCAが乗務できなければ航空機は運航できませんが、 急なCAの欠員等に備え空港や自宅でスタンバイする勤務シフトを設ける、 といった事もリスク回避策のひとつです。またCAは女性が大半を占めているため、 女性社員が働きやすいよう以前から様々な両立支援制度を整えていたことも社員の就業継続につながっているようです。

JALで整えている両立支援制度は最長で3年取得でき、期間の短縮や延長も可能な育児休職制度のほか、 突発的な子どもの病気の時などに取得できる看護休暇制度や、未就学児をもつCAに対して深夜業を免除する制度などがあります。 同制度では宿泊を伴う勤務がないため、育児中のCAに特に喜ばれているそうです。

さらに育児休業からの復職時には、安全・保安に関する事項や最新の機内サービスに関する知識を整理するため、 休職した期間に合わせた「復帰訓練」を実施し、円滑な復帰をサポートしています。

同社人事部の中丸氏は「制度の充実だけでなく、育児をしながら活躍している先輩社員が身近にいるため、 気軽に相談したり両立のコツについて教えてもらえる環境が整っていること、チームで仕事をしているため "互いに相手の立場を思いやりサポートし合う"風土が根付いていることがCAの定着と活躍につながっているのでは。」と話します。

「ただ就業継続できるというだけでは不十分であり、 きちんとキャリアアップしていくためにはどうすればいいかということを常に意識して考えています。 また、それぞれのライフステージ、抱える事情に応じて『選択できる』制度を導入することはもちろんですが、 それ以上に重要なのは制度の運用だと考えています。CAにおいては、 各現場のマネジャーが『○○さんは妊娠したから来月からお休みね』といったことや 『○○さんはそろそろ育休から戻ってくるから復帰訓練ね』など、とてもきめ細かくフォローしています。 そういったことが当たり前にできている職場だから、妊娠や出産がキャリアの壁にならずに働けるのではと感じています。」(中丸氏)

妊娠・出産後も仕事を続けることが当たり前、という意識

CAとして30年のキャリアを持つ吉川氏(左)と中丸氏(右)

CAとして30年のキャリアを持つ吉川氏(左)と中丸氏(右)

約30年前にCAとしてJALに入社した吉川氏は、自身も産休・育休と合わせて4年近く休みを取得した後、 職場復帰して現在は管理職として国内線を担当する組織で乗務をしながら、主に新人CAの国際線移行までの育成を担当しています。

「女性が多い職場なので、やはり女性ならではのライフイベントと仕事をどのように両立するかといった相談はよく受けます。 私が出産したころは仕事を続けたくても、環境があまり整っていなかったと思います。 現在では復職することに対する本人や周囲の意識の変化を感じます。 辞めることは選択肢になく、育児と乗務をどう両立していくかという復帰を前提とした相談が多くなりました。」(吉川氏)

「産休・育休に入る部下には自身の経験談も交えながら、 会社で整えている両立支援策の利用や育児についての情報、近い将来に職場に戻ってくることへの期待を伝えている。」と話します。

「育児の経験が接客の細やかさに。仕事の経験が育児に活きる」と話す吉川氏(右)

「育児の経験が接客の細やかさに。仕事の経験が育児に活きる」と話す吉川氏(右)

「出産後、育児と乗務とを両立していくことは大変ですし、サポートしてくれる環境も個人によって違います。様々な環境下で、 部下ができるだけ長く働き続けるために、自分に何ができるかを管理職になって意識するようになりました。 一人じゃないよ、だから一人で抱え込まず、頑張らなくてもいいからみんなでアドバイスを出し合ったり、 サポートしたりしてやってみようよ、ということをしっかり伝えています。長く働くことを考えれば、大変なのは一時期だけですから。」(吉川氏)

女性のみならず、社員だれもが活躍できる環境へ

JALでは女性活躍を推進する社会情勢の変化を踏まえ、これまで契約社員として採用していたCAを2016年4月より正社員化した、といいます。

「これまでも育児をしながら働き続けることを目的とする制度を整えるなど、女性活躍を推進してきましたが、 少子高齢化に伴い日本の労働人口が減少していくなかで、多くの企業が女性の採用や育成に力を入れ雇用形態を含む制度を 整えてきています。このような昨今の環境変化もふまえ、今後もこれまで同様に優秀な人財を仲間として迎え入れるため、 このたび雇用制度を見直しました。」(中丸氏)

同社では、全社員を対象としたワークスタイル変革や社員の意識改革などにも意欲的に取り組んでいるほか、グループ全体で ダイバーシティを含む女性の活躍推進の気運を高めるための施策や、新たな制度の導入にも積極的に取り組んでいます。

「社員誰もが働きやすい職場環境にするためにはどうすれば良いか、日々試行錯誤しています。 弊社ではCAの正社員化に加え、今年4月より新たに「配偶者の転勤同行休職制度」や「不妊治療休職制度」を整えました。 仕事とプライベートを明確に分けるのではなく、 バランスを取りながら社員がいきいきと輝ける会社をめざし、これからも様々な施策の検討を続けていきます。」(中丸氏)

 

参考情報

女性活躍推進 | CSR情報 | JAL企業サイト

これまでのJALの女性活躍推進の取り組みをご紹介します

 

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