Oさん(57歳・飲料メーカーの営業職)
53歳からプログラミング言語のPHPを学び始め、その後Excel VBAも習得。現在はPythonとMicrosoft Power Platformを勉強中。56歳で民間資格Excel VBA ベーシックを取得。
ミドルシニア 多様な働き方 「40代・50代 中高年からのデジタルスキル習得」
変化の激しい時代、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が急速に進み、デジタル人材化のためのリスキリングという言葉を耳にするようになりました。しかしミドルシニア世代の中には、「デジタルというだけで苦手意識がある」「デジタル用語が分からず会議についていけない」といった悩みを抱える人も少なくありません。キャリアのことを考えるとデジタルスキルを身に付けた方がいいことは分かっているものの、何をしたらいいのか分からず、足踏みしている人もいるのでは。
そこで、このシリーズでは、50代からデジタルスキルの習得を目指すミドルシニアにインタビュー。学び始めた背景や目的、学ぶことで得られたもの、今後のキャリア展望などを紹介しながら、はじめの一歩を踏み出すためのヒントをお届けします。
第2回に登場するのは、大手飲料メーカーの営業としてキャリアを積んできたOさん。定年後は自分の時間を大切しながらも収入が得られるよう、セカンドキャリアに役立てたいと50代からデジタルスキルを学び始めました。定年までの7年計画でプログラミングの習得と資格取得、さらには仕事の受注に向けた実績づくりを進めるOさんのチャレンジをご紹介します。
※この記事の内容は、リリース当時(2024年10月現在)のものです。
※本文中に出てくる用語を含めた、「知っておきたいデジタル用語」をこちらの記事にまとめています。気になる用語があれば、ぜひチェックしてみてください。
Oさん(57歳・飲料メーカーの営業職)
53歳からプログラミング言語のPHPを学び始め、その後Excel VBAも習得。現在はPythonとMicrosoft Power Platformを勉強中。56歳で民間資格Excel VBA ベーシックを取得。
新卒で飲料メーカーに入社して、今年で34年目になりますが、仕事は営業一筋です。飲食店や企業などの顧客を担当していて、日本国内での転勤も多く、今は沖縄在住です。 ITスキルは、仕事でExcelやPower Pointを使うレベル。ExcelでVLOOKUP関数を作ったり、グラフを作ることはできますが、それ以上のことはあまりやってきませんでした。
今の勤務先は60歳で定年。その後も雇用延長すれば65歳まで働き続けることができますが、今と同じ仕事を続けるとしたら、定年後も全国転勤の営業になる。つまり、その間は自分が働く場所を自分で決めることができないわけです。両親も高齢ですし、今後は自分の実家のある東北や、妻の実家のある関西に住む必要があるかもしれない。そういう家庭の事情もあって、定年後はどこに住んでいても稼げる仕事にキャリアチェンジしたいと思い始めました。
そんな時に、今後日本ではデジタル人材が不足することや、50歳からプログラミングなどのデジタルスキルを学び始めても遅くないといったことが書かれたネットの記事を読んで興味を持ったんです。
定年後、健康で身体も動く60代は趣味のゴルフや旅行などを楽しむ時間も大切にしたいと思っているので、そのためにも一定程度の収入は欲しい。家庭の事情と自分の時間を大切にしながら、収入を得る働き方をするために、デジタルスキルを学ぶことにしました。
当時の私は、Microsoft Office以外のITスキルは初心者でしたし、年齢のことも考えて迷わず中高年向けのプログラミングスクールに通い始めました。
スクールに入って最初にしたことは、具体的なセカンドキャリアを設計すること。 プログラミングの仕事がどんなもので、どの程度稼げるのかも全く分からなかった私は、まずは70歳までのライフプランとマネープランを考え、目指す収入を決めました。そして、そのために必要なスキルと、それを習得するためのスケジュールを定年までの7年計画で設計したんです。
最初にゴールとそこまでの道筋を設計してしまえば、あとはその道を頑張って走るだけ。もちろんデジタル技術はどんどん進化していくので、途中で再設計も必要になりましたが、折に触れスクールの講師と相談しながら進めています。こういったセカンドキャリアの話は誰かに相談したくても、する相手がいないケースも多いんじゃないかな。私の場合は、スクールに通うことで身近に相談相手がいるのでとても助かっています。
最初に基本的なITスキルを学べる初心者向けの基礎コースを受講してから、プログラミング言語のPHPの基礎と応用を習得しました。その後、Excel VBAを学んで、VBAエキスパートの資格を取得し、現在はPython(パイソン)を勉強中。Pythonは、行動を予測してコードを出してくれるので、PHPに比べるとエラーも少なく、やりやすいですね。Phytonについても、仕事を受注できるクラウドソーシングサイトのプロフィール欄でアピールできるよう、いずれ資格試験を受けるつもりです。スクールでのレッスンは、時期にもよりますが月2~4回程度、週末に沖縄からオンライン講座を受講しています。
PHPの時は、趣味のテニスにちなんで、テニスコートの予約サイトをダミーで作りました。コートの空き時間を参照できて、そこから予約まで完了できるサイトです。スクールのテキストを見ながらコードを打ち込んでいくのですが、PHPの場合は、エラーがどこにあるか分からないので、そこが難しいところ。よくあるのが「,(カンマ)」「.(ピリオド)」「:(コロン)」の間違い。最終的にコードがスムーズに実行できた時はうれしいですね。 今は、Pythonでコンビニの唐揚げの売り上げデータを集計・分析するという課題に取り組んでいます。曜日と時間ごとに売り上げを集計して平均値や在庫量を出し、グラフにまとめるというものです。Pythonは、行動を予測してコードを出してくれるので、PHPに比べるとエラーも少なく、やりやすいですね。
ただ、これらはあくまで仮想の課題。実際に個別の依頼案件に合わせてプログラミングできるのか不安もあります。やはり仕事としてリアルな実績を積んでいく必要があるなと感じています。
普段は週末に講座を受講しているのですが、時々土曜に仕事が入ることもあって…。2週間空くとどうしても忘れてしまうところが出てくるので、スクール以外の日を使ってできるだけ課題を進めておいて、受講時間で分からないところをまとめて講師に聞くようにしています。
子育て中ですと、週末も子どもたちと過ごす時間もあってなかなか学びの時間を確保するのが難しいかもしれないですが、学び始めたのが50代だったので、割と自分のための時間は作りやすいです。特に今は単身赴任中なので、仕事以外の時間は比較的自由に使えますね。定年まであまり時間もないですし、集中して進められればと思っています。
※本文中に出てくる用語を含めた、「知っておきたいデジタル用語」をこちらの記事にまとめています。気になる用語があれば、ぜひチェックしてみてください。
定年後は、学んでいるスキルを使って在宅の仕事をしたいですね。もちろん最初から大きく稼げるものではないのは理解しています。実績を作りながら、徐々に月5万円、10万円とコンスタントに収入が得られるようにと考えています。勤務先は副業がOKなので、最近になってクラウドソーシングサイトへの登録は済ませました。ただ、実績づくりはまだまだこれから。今はあまりえり好みせずにいろいろな案件を受けながら、アピールできるプロフィールを作っていきたいです。
53歳から7年計画でスタートして、今は5年目。残り2年半でどこまで実績を作れるか…。もっと早く始めておけばと思うこともあります。実は数年前に、勤務先でデータ分析の人材の社内公募があったんです。申し込んだものの、当時はまだデジタルスキルが足りなくて…。もし採用されていたら、社内でDX推進やアプリ開発などに携わることができ、職歴として、今後のデジタルの仕事の実績に幅が出たのではないかと少し悔しい気持ちがあります。
一つのコースが終わった時に、果たして本当にこれで稼げるようになるんだろうかと思うことはあります。ただスクールに通っていると、「行政の案件を受注した人がいる」といった自分と同様に中高年から学び始めた仲間の成功を知る機会があったり、学ぶ過程で不安があれば、小さなことでも講師に相談できます。
独学では長期間モチベーションを保つのは難しいと思うので、私の場合は、スクールに通って伴走してもらいながら学ぶスタイルを選んでよかったと思います。
最初に話したように、定年後は趣味のゴルフや旅行などにも時間を使いたいので、1カ月のうち、短期間で必要な収入を得られるようなプロフェッショナルな働き方ができるようになりたいと思っています。クラウドソーシングサイトに掲載されている案件を見ると、今学んでいるPythonによるデータ分析に関するものが多いので、それを受注できるようになりたいですね。少し難しい案件でも、スクールに通っている今なら、講師に相談しながら進められるので、臆せずチャレンジしたい。そうやって実績を重ねることで理想に近づけると期待しています。
デジタルスキルを使って仕事がしたいと漠然と考えているものの、まだ悩んでいるのであれば、まずはクラウドソーシングサイトに登録してみることをおすすめします。デジタルの分野ではどんな仕事があるのか、どんなスキルが求められているのか、どの程度の収入が得られるのか。デジタルスキルを学ぶ前にこうしたリアルな世界を知っておくことが大事だと思います。
自分が目指す市場とそこで求められるスキルを知った上で、それでも本気で学びたいと思うのなら、多少お金はかかりますが私はスクールに入学するのをおすすめしたいです。効率もいいですし、全く未経験の分野だからこそ、実績を積む環境として講師のサポートが充実している点はメリットだと思います。
ここまでご紹介したOさんの体験談を通じて、ミドルシニアがデジタルスキルを習得するために意識したいポイントについて考えてみましょう。
まずは「デジタルスキルを習得した先のゴール設定」。
デジタルの世界は広範囲のため、自分のゴール=目的に合わせて学ぶものを決めることが重要です。Oさんの場合、学び始める前にセカンドキャリアについて、定年後、どんな生活がしたいか、どの程度収入を得たいかといった点まで具体的に描いたことで、その手段としてデジタルスキルを学ぶ目的とプロセスが明確になりました。定年までの7年という長期間にわたる計画ですが、目標が明確だからこそ学び続けられるのではないでしょうか。
続いては「デジタルスキルの学び方」。
Oさんはデジタルスキルを本格的に学ぶのは初めてだったことから、専門的なスクールに通うことを選択しました。それにより自身のセカンドキャリアに合わせた学びの計画設計をサポートしてもらったり、学ぶ過程でモチベーションが続かない、壁にぶつかってしまう、といった際にも、スクール講師のサポートを受けつつ長期間学び続けています。また、仕事の実績づくりの点でもOさんは頼りに思っている様子。学ぶ人の目的や状況により、最適な学び方は人それぞれですが、スクールに通うメリットとして知っておいてもよさそうです。
最後に「デジタルスキルを学び始める時期」。
セカンドキャリアに向けた準備期間と考えると、Oさんのように7年間あれば十分に思えるかもしれません。しかし、スキルを習得するだけでなく実務で活用した実績を作ること、それを現職の会社でかなえられる可能性まで考えると、チャンスを逃さないためにも、できるだけ早めに始めた方がいいと言えるでしょう。
デジタルスキルの習得は、ミドルシニアの皆さんにとってもキャリアを広げるための選択肢の一つになりうる。もし気になっているのであれば、「デジタル」という言葉に身構え過ぎず、学び始めの一歩を踏み出してみてもいいのでは。