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パート・アルバイトから正社員に登用。研修・評価制度でステップアップしていくうちに、入社当時は考えもしなかった正社員が見えてきた【KCJ GROUP㈱ キッザニア福岡 後編】
こどもの職業・社会体験施設「キッザニア」。 前回の記事でもご紹介した通り、キッザニアでは独自のアルバイト研修・評価制度や社員登用制度によって、アルバイトで働く従業員が主体的に成長を続けるモチベーションを醸成。多くのアルバイトが働くことを前向きに捉え、長期的な就業や社員への転換を実現しています。では、キッザニアでアルバイト入社した人はどのようなキャリアを歩んでいるのでしょうか。その実例としてアルバイトから正社員へ転換した満武章子さんにインタビュー。満武さんが現在勤務する「キッザニア福岡」で話を伺いました。
※写真は、撮影のため一時的にマスクを外しております。
「もっと学びたい」「新しいことに挑戦したい」そんな気持ちを芽生えさせた人事評価制度とは
── まずは現在のお仕事を始めたきっかけについて教えてください。
以前は幼稚園教諭をしていました。しかし、10年の節目に退職。それでもこども達に向き合う仕事は大好きだったので、勤務日数や時間に融通の利くアルバイトで何か仕事をしたいと考えました。そこで思い浮かんだのがキッザニアの仕事。試しに週3日のアルバイトでやってみよう。そんな気持ちで応募したんです。
──前職が幼稚園の先生であれば、キッザニアの仕事とも関連性があって経験が活かせそうですね。
そう見えますよね。私も同じ気持ちでした。でも、実際に働き始めると見事にその自信は砕かれました。キッザニアは楽しんでもらうことが大前提の学びの場です。エンターテインメントの要素を求められることが特に前職と異なり、経験が通用しないことにちょっと落ち込んだ時期もありました。でも、それでかえって私の中でさらなるやる気が湧いてきたんです。あれもやってみたい。これができるようになりたい。私が経験してこなかった教育のあり方を知るのが楽しかったんです。
「自分の知らないことを学びたい」「新しいことに挑戦したい」。そんな気持ちが芽生えてきたもう一つの理由が、「ステージ制」という評価制度。キッザニアではお客様に直接サービスを提供するスーパーバイザーにこの制度が適用されるのですが、ステージが上がると昇給しますし、担当できる業務のレベルも上がっていきます。マネジャーと面談しながら目標設定をするのですが、「トレーナーになりたい」「パビリオン(職業体験のブース)の運営を任されたい」と一つずつ設定した目標を実現していくこと自体も楽しかった感覚ですね。
(図表1) 「キッザニアの研修・評価制度」
一歩ずつステップアップするうちに、これからもキッザニアで挑戦を続けたいと思えた。だからこそ、正社員の道へ
──アルバイトから正社員へ挑戦しようと思った理由やきっかけを教えてください。
家庭の事情の変化により再びフルタイムで働ける状況になったことも理由の一つです。それ以前は正社員になることよりも、アルバイトの人事評価制度の最上位であるダイヤモンドステージになることを目指していました。というのも、ダイヤモンドステージになるとスーパーバイザーの代表としてキッザニアの施設外での仕事を任されることもあるので、 挑戦したかったんです 。
ただ一方で、アルバイトながら、あるパビリオンのマネジャーに任命され、責任あるポジションに就かせてもらっていたこともあり、周囲の人たちから「もう正社員になりなよ」と言われる機会も増えていました。そんな時にフルタイムで働くことができるようになり、これからもキッザニアで挑戦を続けるなら、まだ最上位のステージにはたどり着いていないけれどこのタイミングで正社員登用試験にチャレンジしようかなと考えました。アルバイトとして十分に成長した実感もあったので、正社員になるタイミングとしてはよかったと思っています。
── 正社員になったことで、どんな変化がありましたか。
登用された当初は引き続きサービスの現場でこども達にも向き合いつつ、役割が増えていったような感覚です。徐々にアルバイトスタッフのマネジメントにも役割範囲が拡大しました。マネジャーの仕事にはアルバイトの育成も含まれるので、この立場になって改めてアルバイトの評価制度として、「ステージ制」が運用されていることのありがたみを感じましたね。小さな成長のステップを一つひとつ上ることで学ぶ意欲が持続・向上しやすいのは、自分自身も経験したことですし、私が見守ってきたアルバイトのみんなの成長ぶりを見ていても、そう思います。
自ら希望し「キッザニア福岡」の立ち上げに参加。10年前は想像もしなかった現在地
── 満武さんは長く務めたキッザニア東京から異動し、現在キッザニア福岡で働いていますが、その経緯を教えてください。
「キッザニア福岡」の新規オープンに伴って社内公募があり、手を挙げたんです。これまでの経験を振り返ってみると、アルバイト時代に新規のパビリオンでマネジャーを任せられたときも、自分が大きく成長したと実感できました。正社員になってからも折に触れて新しいチャレンジの機会があったのですが、特にゼロから新しいものを立ち上げるときは苦労も多い分やりがいも大きいと感じていました。そうした経験を積み重ねてきたからこそ、さらに大きなスケールで経験してみたくなったんです。
また、私は関東出身ですが、九州は両親が育った場所で、こどもの頃から祖父母に会いに何度も訪れていた第二のふるさと。これは何かの縁かもしれないと感じて、思い切って飛び込んでみることにしました。まさか自分が今九州で働いているなんて、アルバイトを始めた10年前には想像もしていませんでしたね。
──今はどのような役割を担っているのですか。
お客様に接するスーパーバイザーの人材育成と、サービスの現場で生じている課題を見つけて解決するのが私の仕事です。課題解決の仕事はものごとを様々な角度から捉え、分析していく力が求められるため、新たに身につけなければいけない知識・スキルもあり、働きながらイチから勉強している最中。その一方で、どんなに鋭い分析ができても、現場感のない提案をしてはスタッフから受け入れてもらえません。その意味では現場のアルバイトからステップアップしてきた私の経験が活かせる部分も大いにあると思っています。また、人材育成に関しては、入社時のトレーニングで福岡のスーパーバイザー全員と接しているのが大きなやりがい。現場に入ったときに一人ひとりのちょっとした成長を感じられるのも嬉しいです。
──キッザニアでアルバイトを始めたことで人生が大きく変化した満武さんですが、今後のキャリアについてはどうお考えですか。
いくつになっても前向きに変化を続けていくようなキャリアを歩んでいきたいです。キッザニアにアルバイト入社した時点ではすでに30歳を過ぎていましたが、会社が年齢や雇用形態に関係なく私の成長に期待してくれたからこそ、私もポジティブに「やってみようかな」とチャレンジを続けることができました。実は、入社する前の私って、こども達のことは大好きだったけれど、自分自身の成長やキャリアにはそこまで貪欲ではなかったんです。そのスタンスが変わったのは、一歩ずつ成長の階段を上りながら、もっと学びたいと思わせてくれたから。ここまでのキャリアは、会社が用意してくれた仕組みのおかげで実現できたことだと思います。でも、ここから先は自分の手でキャリアを切り開いていくフェーズ。これからも学びの歩みは止めず、主体的に成長を続けられる自分でありたいです。
人手不足時代に参考にしたいアルバイトの人材育成:成長意欲を刺激する「ステージ制」の人事評価制度と、ライフスタイルの変化に合わせてチャレンジできる仕組み
アルバイトで入社した時点では、フルタイムで働きづらい家庭の事情もあって、将来のキャリアに前向きな状態ではなかったという満武さん。そんな満武さんが正社員となり、新施設の立ち上げで自ら希望して福岡に移住するほど仕事でチャレンジを続けているのは、従業員の主体的な成長を引き出す仕組みが大きく影響しているようです。アルバイトの人事評価制度である「ステージ制」もそのいい例でしょう。「トレーナーになりたい」「パビリオンの運営を任されたい」と一つひとつ目標を立ててステージを上がっていく過程で、アルバイトスタッフの成長意欲がより刺激されるのではないでしょうか。 また、満武さんのライフスタイルが変化した時点で社員へ挑戦できたのもポイント。(アルバイトの)職位と社員登用の基準を分け、チャレンジしたいと思った気持ちを尊重していつでも手を挙げられる仕組みになっているからこそ、アルバイトスタッフのキャリアへの熱意が高まりやすいのだと感じられました。このように、雇用形態に関わらず従業員に学びのきっかけを提供することは、会社へのエンゲージメント向上にも寄与し、従業員の長期的な就業、内部からの人材抜擢などを促進する効果も期待できます。人手不足が深刻な昨今において、参考になる人事制度と言えるのではないでしょうか。
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