両立支援 働くパパ・ママの育休ガイド~育児とキャリアの両立アイデア~

「産休・育休」に関する制度を知ろう!法改正で男性の育休制度が進化 ~働くパパ・ママの育休ガイドVol.1~

「産休・育休」に関する制度を知ろう!法改正で男性の育休制度が進化 ~働くパパ・ママの育休ガイドVol.1~

男性の育休取得が日本の働き方を変える一歩になる。
「働くパパ・ママの育休ガイド~育児とキャリアの両立アイデア~」は、パパの育休をきっかけに、パパとママ、二人の育児とキャリアの両立について考えるためのお役立ちサイトです。
このシリーズでは、気になる産休・育休の制度やお金のことなど、子育てのスタートに知っておきたいポイントやアドバイスを専門家に伺いました。

※この記事の内容は、リリース当時(2023年8月現在)のものです。最新の情報については、公的機関のサイトなどをご確認ください。



男性育休のロールモデル「イクメンの星」であり、ファイナンシャルプランナーの広中 秀俊さんに聞いてきました!

育Qドットコム広中秀俊さん

育Qドットコム株式会社代表取締役社長
広中 秀俊さん

東京都パパ育業事業 アドバイザー兼セミナー講師(令和4年度)
大学卒業後、ミサワホーム入社。2児の父親であり、厚生労働省から「イクメンの星」に認定される。2019年に独立。「育休で日本を元気に、世界を平和にする」をミッションに、男性育休が当たり前になる世の中を目指し、自治体や企業向けに研修やコンサルを展開。ファイナンシャルプランナーとしてお金に関するアドバイスも実施。

最近、「男性育休」という言葉を聞く機会が増えている気がしませんか?2022年に育休に関する法律が改正されましたが、その狙いは「男性の育休取得率の向上」と言っていいでしょう。働く女性が妊娠・出産のために休業し、その後、職場復帰するのが一般的になった今、「産休・育休制度」は夫婦が共に子育てしながら働くための大切な制度です。
ここでは、知っておくべき産休・育休制度に関して情報をまとめました。ぜひこの機会に「産休・育休期間中のお金」についての記事と合わせてご一読ください。


なぜ今、男性育休なのか?令和の子育て世代の「仕事と育児の両立」とは

政府や企業による支援もあり、出産や子育てを理由に離職する女性が減ったことで、2021年(令和3年)には共働き世帯が7割を超え、今や共働きは当たり前になっています。また、働き方や価値観の多様化で、積極的に子育てをしたいという男性も増えています。「仕事やキャリアと子育ての両立」は、今ではママだけではなくパパにとっても重要なテーマなのです。

また、政府や企業も、家庭において女性に偏りがちな育児や家事の負担を夫婦で分かち合うことが、少子化、労働力不足、ジェンダー平等といった社会課題の解決につながると期待して、男性の育休取得を推進しています。

男性の育児休業取得率2025年までに50%、2030年までに85%を目標に

2023年3月、岸田首相は、男性の育休取得率の政府目標を大幅に引き上げ、2025年度に50%、2030年度には85%とすることを表明しました。従来の2025年までに30%、2030年度に50%まで増やすという目標を前倒しする形となり、国をあげて男性育休の取得を推進していく意志の表れにも見えます。

男性育休取得率


日本の育休制度は世界一!まずは産休・育休制度を知ろう!

実は、日本の育休制度は、先進国の育休・保育政策などを評価したランキングで世界1位になっていることを知っていますか?2021年にユニセフが発表した報告書において1位に評価された理由の一つが父親に認められている育児休業期間が長いことにあります。

その一方で、日本の男性の育休取得率は近年増加傾向にあるものの、いまだ17.13%。女性が80.2%であるのと比較すれば、取得率の男女の差は歴然としています(2022年度)。 せっかくの制度をママだけでなくパパも活用するためにも、まずは法律で定められた産休・育休制度がどのようなものかを正しく理解しましょう。

その上で、子どもが生まれることで生活がどう変わるのか、夫婦の役割分担をどうするのか、お互いのワーク・ライフ・バランスについて話し合いながら、パパ・ママ二人の育休計画を立てることをおすすめします。

ここからは、法律で定められた産休・育休制度について解説します。


(図表1)「産休・育休制度のポイント」(2023年8月現在)産休・育休制度のポイント


1.産前・産後休業

対象:産前・産後の時期にあてはまる全ての女性
取得可能期間:産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後は8週間
申出期限:出産予定日から6週間(42日)前までに会社に申請
休業中の就業:できない
休業中の給付金:「出産手当金」として、およそ賃金の2/3が支給される(勤務先が加入する健康保険の加入者のみ)。


産前・産後休業


産前・産後休業は雇用形態や雇用期間によらず、産前・産後の時期に当てはまる全ての女性が取得できます(例えば契約社員やパートといった有期雇用でも、正社員と同様に取得可能)。産前休業・産後休業は同時に申請します。産前休業の取得期間は就業できませんが、あくまで任意の休業のため、出産の6週間前以降であれば開始日を自分で決めることもできます(予定より出産が早まるなどして結果として取得しないケースもあります)。



産前・産後休業とは…
産前休業:出産前の準備のための休業(任意)。請求があった場合は、会社は就業させてはならない
産後休業:出産後の体の回復のための休業(義務)。産後6週間は強制的な休業期間だが、それ以降は請求があり医師が支障ないと認めた就業は可能。なお、産後休業の「出産」とは、妊娠4カ月以上の分娩をいい、「死産」や「流産」も含まれる。また出産日は産前休業に含まれる。(労働基準法第65条第1項、第2項)


2.産後パパ育休

対象:出生後8週間以内の子どものパパ
取得可能期間:子どもの出生後8週間以内に最長4週間。2回に分けて取得可能(まとめて申請が必要)
申出期限:原則休業の2週間前まで
休業中の就業:労使協定を締結している場合に限り、 労働者が合意した範囲で就業可能
休業中の給付金:「育児休業給付金」として、賃金の67%が支給される(勤務先が加入する健康保険の加入者のみ)。


(図表2)「産後パパ育休について」(2023年8月現在)産後パパ育休


産後パパ育休は、子が1歳(最長2歳)までにママ・パパ共に取得できる通常の育児休業制度とは別に設けられた制度です。子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能です。申請期限は休業の2週間前までとされていますが、労使協定で定めた場合は、通常の育児休業と同様に1カ月前までの申請とすることができます。

休業中の給付金も、通常の育休と同じ育児休業給付金の対象ですが、産後パパ育休は就業が可能なため、4週間(28日)の休業中に、最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)を超えて就業した場合は給付の対象となりません。また休業日数が4週間(28日)より少ない場合は、その日数に比例して給付対象条件の就業日数も短くなりますので注意が必要です。なお、以下の場合は対象外となります。

※ 入社1年未満、もしくは申請日から8週間以内に退職することが明らかであること

※1週間の所定労働日数が2日以下であること


3.育児休業制度

対象:1歳未満の子どもを養育する働く男女(自営業・フリーランスは除く)。有期社員の場合は、子どもが1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかな場合は対象外
取得可能期間:子どもが1歳(最長2歳)まで。2回に分けて取得可能
申出期限:1カ月前まで
休業中の就業:不可
休業中の給付金:「育児休業給付金」として賃金の67%(180日間)が支給される(勤務先が加入する健康保険の加入者のみ)。


育児休業制度


育児休業(育休)は、パパやママが会社に申請することにより、子どもが1歳になるまでの期間取得できる休業のことです(育児介護休業法第5条など)。2回までは分割して取得することができます。パパは、産後パパ育休も2回に分けて取得できるので、子どもが1歳になるまでに計4回に分けて育休を取得できます。子どもが生まれてすぐから4週間以上続けて育休を取りたい場合、産後パパ育休を取らずにすぐに通常の育休を取ることも可能です。ただし、その場合は通常通りの2回にしか分けられません。

また、保育園などの預入先が見つからないといった理由で、育休を子どもが1歳以降最長2歳まで延長する場合、延長期間にパパとママは1回ずつ育休を取ることができます。延長期間内であれば取得時期は自由なため、パパとママの開始時期をずらして交代で育休を取ることも可能です。

産休および育休中は、健康保険料(40歳以上は介護保険料も含む)と厚生年金保険料の支払いが免除されます。社会保険料が免除されても、病院を受診した際には健康保険証が使えますし、将来の厚生年金の受給についても納付期間として扱われます。


4.パパ・ママ育休プラス


(図表3)「パパ・ママ育休プラスについて」(2023年8月現在)育児休業制度


「パパ・ママ育休プラス」は、パパ・ママ共に育児休業を取得する場合、その休業取得の対象期間を子どもの年齢が1歳2カ月まで延長できる制度です。その間も育児休業給付金の給付条件は変わりませんが、一人当たりの育休取得可能日数(ママの場合は産後休業日数を含む)が1年間から増えるわけではないので注意が必要です。

また、取得には以下の条件を満たしている必要があります。



1.両親が共に育児休業を取得すること
2.制度利用者の配偶者が、子どもの1歳到達日以前のいずれかの日において育休を取得していること
3.制度利用者本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日前であること
4.制度利用者本人の育児休業開始予定日が、配偶者の育児休業の初日以降であること

この4の要件により、先に育休を取得したパパとママのどちらかのみが対象期間を延長することができます。

例えば、ママが産休後に育休を途切れなく取得する場合、ママの育休初日はパパの初日以降にはならないため、仮にパパが子どもの満1歳までに育休を取得して1‐3の要件を満たしても、ママは4の要件を満たすことができず、途中いったん復職してまだ育休日数が残っていても対象期間の延長はできません。一方で、パパは1‐4の要件を満たすことができるので、パパは子どもの1歳2カ月まで、取得対象期間を延長することができます。

この制度のメリットとしては、ママが1年間の産休・育休から職場に復帰するタイミングで、パパが延長した2カ月間に育休を取得することで、ママの職場復帰をサポートできるといった点があります。


最後に:産休・育休を取り巻く環境の変化

前述のとおり、実は世界一の日本の育休制度ですが、制度の活用が進んでいるかといえば、現状はまだまだ。特に男性の育休取得率は、17.13%にとどまっています。

ただし、今後は取得率が大きく伸びていくと考えています。

その理由の一つは、2023年4月から従業員が1000人を超える会社は、男性従業員の育児休業取得率の公表が義務化されたこと。また今年から有価証券報告書への記載も義務づけられるなど、企業にとって、自社の男性の育休取得率は世の中に開示する重要な情報になったわけです。現段階では育児休業の取得期間は問われず、1日でも取得すればカウントされるため、制度が形骸化するのではという懸念はありつつも、まず大切なのは1日でもいいから取得する人を増やしていくこと。そして数年後には、取得期間についても議論になると考えています。

私自身も6年前に前職で育休取得の機会があり、1カ月以上の取得を目指して社内で調整を試みましたが1週間が限界でした。その体験から男性の育休取得の理解促進と普及を目指し、今の仕事につながっています。当時と比べれば、男性の育休取得率は増加傾向ですし、国の制度も整いつつあります。また企業の中にはさらに充実した制度を設けるところもあり、社員の育休取得率アップのために様々な手を打っています。そして、育休取得率にはカウントされていなくても、実際には育児のために休暇を取得していても、有給で済ませている人もいるはずです。

このように、日本でも男性が育児のために休みを取るのが当たり前という世の中に向かいつつあると言えるのではないでしょうか。男性が育児を「自分もやって当然」と捉えて、女性同様に育休を取ろうと考える、その一歩は踏み出せているのだと思います。


─COLUMN─
似ているけど違う?「育児休業」と「育児休暇」

育児休業と育児休暇の違いをご存知ですか?似ている言葉のため混同されがちですが、正しく知っておきましょう。



育児休業
国の法律に基づいて定められている公的な制度。労働者の権利のため、会社の定めがなくても取得が可能。いわゆるパブリックルールです。
育児休暇
会社ごとの規則で決められている、育児を目的に利用できる休暇制度。会社に規定がなければ、利用はできません。いわゆるローカルルールです。

通常は公的制度である育児休業を取得しますが、中には従業員のために充実した育児休暇制度を整えている会社もあります。会社によって取得できる期間や有給・無給が異なりますので、人事部門に確認が必要です。育児休業と育児休暇を組み合わせて活用できるケースもありますので、ぜひ国の制度と会社の制度の両方をチェックしておきましょう。


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