夫婦間のモヤモヤとイライラを抱える働くパパとママのための匿名座談会、妻編に続き夫編が始動!コミュニケーションのプロのアドバイスをもとに、ごきげんな関係へと改善を試みていく30日間のようすをレポートします。
Season2 夫編02では、妻が家事の細かなやりかたに注意をしてくることにイライラを募らせている夫の本音が爆発!ケンカをするのも面倒で我慢しているという男性の実態も飛び出しました。そうした不満に対して山本先生は、怒りや不機嫌の衝突を回避するための「ユーモアアプローチ」や、夫婦以外の人に子育てへ参加してもらう方法などを紹介。解決のヒントを学びました。いよいよ今回は、それぞれのお悩みの解決に向けた30日間の過ごし方を決めていきます!
【前回までの2人のお悩み内容】
Aさん: 専業主婦の妻から家事を細かく注意される。夫の家事に妻が期待していない。
Bさん: 仕事大好き妻との役割分担が気になる。お互いに余裕がないと口論になってしまう。
⇒ 夫編01 パパによる夫婦の関係改善チャレンジがスタート。普段、妻に言わない本音をぶっちゃけトーク!
⇒ 夫編02『些細なことで怒りだす妻にうんざり!』男性はなにかと我慢しがち!?
<座談会参加者紹介>
Aさん(右)
人材業界の代理店営業職。平日は22時~23時頃に帰宅する生活。妻が現在子育てに専念しているため、家事分担比率は妻95%、夫5%。1歳9カ月の娘が1人。
Bさん(左)
食品メーカーの研究開発職で、仕事柄時間のコントロールはしやすい環境。妻が今年起業したばかりで土日も仕事をしていることも。2歳の双子の娘たちがいる。
夫も妻も、好きなことに費やす時間を確保せよ!
山本先生: ところで、お二人は仕事や家事育児のほかに、どんなご趣味をお持ちですか。
Aさん: テニスをやったり、絵を描いたり。好きなことはいくつかありますね。今はやっていないけど......。
Bさん: 明確な趣味はないですが、お酒が好きなこともあって、美味しいものを食べているときが幸せな時間かなあ。後は、最近は時間がなくて全然できていないんですが、ずっとバスケをやっていました。
山本先生: なるほど。趣味って「心から楽しい、やりたくて仕方ない」という時間ですよね。このことを私は「快動」と呼んでいるのですが、人は心地よいと感じる状態を持っていることがすごく大切です。
Bさん: 何となくわかります。でも、それが夫婦仲にどう関係するんですか。
山本先生: 例えば、私の夫はリビングが散らかっていてもあまり気にしないんですけど、なぜかクローゼットの中はものすごくキレイ。ネクタイは色のグラデーション順に並んでいるし、洗濯したものは奥にしまって手前から使うというルールを徹底するくらいです。でも私は、リビングや水回りはいつもキレイにしていたいけれど、クローゼットの整理はちょっと苦手です。
こんな風に人はそれぞれ異なる"快"を持っていて、それは言い換えるなら「譲れないこと」「好きなこと」。でも、子育て世代は好きなことに費やす時間が全然取れないから、快動が不足して元気がなくなってしまう。元気がないと、人にも優しくできないですよね。だから、お互いにとっての快の時間=趣味の時間を持つのはすごく大切なんです。
夫あるある、「妻の趣味がわからない」
山本先生: お二人は奥様のご趣味をご存知ですか。
Bさん: うーん、これといった趣味は聞いたことがないですね。しいて言えば、人と話すのが好きなので、最近も、友達同士で家に呼んだり遊びに行ったりしていることが多いかなあ。
山本先生: これもパパの"あるある"ですね。みんな奥様の趣味は思い当たらないとおっしゃる。
Aさん: ホントに、結婚前からもともとないみたいなんです。そういう妻にはどうしたらいいですか?僕も、うちの妻が無趣味なのはストレスをため込みそうだしよくないと思っていて......。子どもが生まれる前は無理やりテニスに連れて行ったりしてみたんですけど、趣味になる前に娘の子育てが始まって、定着しませんでした。
山本先生: 何か一緒にできる趣味を持っておくのはとてもよいことですよ。今は子育てという大きなテーマにご夫婦で取り組まれていますが、子育てが落ち着いたときに二人で取り組むものがないと、気持ちが離れてしまうご夫婦もいらっしゃいます。「一緒に美味しいモノを食べる」でもよいので、お互いに向き合う時間をつくる努力をした方がよいですよ。
Aさん: そうかあ。何か一緒に取り組めることがないか、探してみます。
面倒だからと我慢をせずに、きちんと妻に伝えるべし!
山本先生: 今の趣味については、奥様と答え合わせをしてみてください。「お友達と遊ぶ」で良いのか、本当にないのか。奥様にとっての大事な時間が何か、ご自身のことも含め、ご夫婦で確認しましょう。
その上で、毎月お互いの快動の時間を確保できるように協力し合ってほしいです。これは、家族みんなが元気でいるため。夫婦のコミュニケーションが悪くなるのは、子育てに疲れて元気がないのが大きな要因です。だからこそ、自分の"快"を大事にすると共に、奥様の"快"に目を向けてください。
Bさん: 妻の"快"と自分の"快"が折り合わないときはどうしたらよいですか。うちの妻は仕事が大好きだから、家でも仕事の話を聞かせたがるんですよ。でも僕は家の中に仕事の話は持ち込みたくない。自分の会社での出来事を話すのもいやなんです。
山本先生: それはたしかに悩ましいですよね。でも、その気持ちを奥様に打ち明けられましたか。世の中のパパたちって「妻と意見がぶつかるのが面倒で...」と何でも我慢していて、ちゃんと気持ちを伝えない人が多い気がします。でも、言わないとすれ違ったままですよ。ご夫婦で話し合って家族のルールをつくることをおすすめします。
Bさん: 確かに、気持ちをちゃんと伝えることはしていなかったです。ちょっとしたすれ違いは流す方が楽なのかなと思っていましたが、今後伝えてみようと思います。
夫婦のすれ違いを解消する、「定例ミーティング」のススメ
山本先生: さて、いろんなお話をしてきましたが、これから夫婦のコミュニケーションをよくしていくために、私からお二人に一つご提案があります。それは、ご夫婦でお互いのことや子どものことについて話したり、考えや方針をすり合わせする時間を定期的に持つことです。
夫婦って少しずつ価値観や習慣が違うものですよね。だから、「何でこんなこと言われるんだろう」や「これは嬉しかったな」といった、お互いの気持ちを伝えあう「定例ミーティング」の場があるとよいんです。今はこういう時間を持たれていますか。
Bさん: ないですね。妻からは「話そう話そう」って言われるんですけど、なかなか時間が取れなくて。
Aさん: 奥さんから提案されるんですか。
Bさん: 「私は話したいんだけど?」って怒るんです。そんな風に言うもんだから、僕も前向きになれなくて......。
山本先生: そういった気持ちを、定例ミーティングでお話するとよいですね。お仕事に例えるとわかりやすいんですが、一人ひとりが自分の役割をがんばっても、ある程度の擦り合わせをしていかないと仕事って上手くいかないですよね。そのうち、チーム内でいざこざがおきて、自我がぶつかったり、よかれと思ってやったことがすごく否定されたり......。
ミーティングで、ただの情報共有や感情のぶつけ合いは禁物
山本先生: 今って、LINEなど便利なツールも多いですから、コミュニケーション自体は活発。でも、その中身は「どっちが子どものお迎えに行く」とか「今日何時に帰る?」「夕飯はいらない」といった連絡事項ばかりではないですか。そうなると、やっぱりお互いのがんばりが空回りしてしまいがちなんですよね。 小さな行き違いやちょっとした一言が、ひらひらと心の中に積もっていくと、ある日いきなり爆発したり、違う形になって現れたりします。だから、夫婦には対話をする時間が必要なんです。
Bさん: たしかにそう言われると、必要な気がしてきました。
山本先生: Bさんの奥様のように、「今聞いてほしい」という、話を聞いてほしいタイプのママたちも多いです。でも、それに対してパパたちは「いや、今日は疲れてるから......」と返しがちで、ママはもやもやしてしまう。これも「定例ミーティングで話そう」で解決しますよ。いつ話せるかがわかっていれば、それが安心材料にもなりますから。
ミーティングのルールは、嫌だったことも感情をぶちまけるのではなくていねいに話すこと。仕事の会議もそうですよね。上司が一方的に怒るのがよい会議とは言えないように、「どうすればよくなるか」を話し合うのが会議です。
それぞれの家庭の生活リズムにあわせた、ミーティングを設定せよ!
山本先生: 今日はご家庭でいつ定例ミーティングを行うかを決めて終わりにしましょうか。何曜日のどの時間帯、どんなシチュエーションで、どれくらいやるのか。それぞれのご家族の事情を踏まえて設定しましょう。無理のない範囲でやりましょうね。やるって言ったことができないと、また奥様に呆れられてしまいますからね(笑)。
Aさん: そうですねえ。土日だったら確実に時間が取れると思います。夜9時半くらいには子どもの寝かしつけが終わり、いつもはその後食事をしながら録画したドラマを観ているので、この時間だったら話ができそうかな。
山本先生: どれくらいお話をしましょうか。1時間くらい話せそうですか?
Aさん: うーん、悩ましいですねえ、そんなに持たないと思います。うちの妻は、「言わない派」なんで。基本言わずにため込むタイプなので、話が続く様子が想像つかないですね......。
いつも「何かある?」って聞いても「別にない」と言われる感じなので。僕だけが話すことになるような気がするなあ......。
山本先生: じゃあ、まずは30分くらいから始めてみませんか。
Aさん: そうですね。議題が出れば、15分とか30分くらいは話せそうですね。
山本先生: Bさんはいかがでしょう。
Bさん: 平日だと子どもの寝かしつけの流れで自分たちもそのまま寝ちゃうので、うちも週末のどこかになりそうです。次の日が休みだったらゆっくり話せると思うので、金曜か土曜の夜ですね。
山本先生: 時間はどれくらい取れそうですか。
Bさん: そのときにお互いの元気がどれくらい残っているか次第ですね。僕がサンドバックになるイメージがあるので(笑)、1時間は長いかなあ。楽しい話がしたいんですけどね。美味しいご飯を食べながらとか、お酒を飲みながらとか、ゆったりした時間のなかでやれるのが理想です。
でも、いざやることを考えてみると、結構話さなきゃいけないことが一杯あるなあと思って。目の前のちっちゃいことから将来のことまで、話そうと思えばいくらでも話せそうな気がするので、時間は区切っておいた方がよいですね。
山本先生: じゃあ、30分から始めて、最長1時間ということにしましょう。
子育てが大変な時期だからこそ、将来の話も大事!
山本先生: ちなみに、今のBさんのお話の中にすごく大事なヒントがありました。それは「将来の話」。未来の話を沢山しているかどうかは、夫婦仲に関係する1つのポイントだと言われています。
Bさん: それってどういうことですか?
山本先生: 最近、「この子がこうなったらいいね」「何歳くらいになったら、こうだね」といった話を沢山していますか。お子さんが生まれる前って、楽しみにしていたじゃないですか。でも、子どもが生まれると日々忙しくていつの間にか目の前のことしか話をしなくなるご夫婦も多いんです。だから、Bさんが「話したいことは沢山ある」とおっしゃったのはすごく素敵だなと思いました。未来のこともいっぱい話せるとよいですね。
週に1つ以上、「ありがとう」を伝えよ!
山本先生: あと、もうひとつおすすめしたいことがあります。それは、定例ミーティングで1週間を振り返って「これが嬉しかった」「ありがとう」という感謝のお話もしてください。
Aさん: ちょっと恥ずかしい感じもしますね。
山本先生: たしかに照れくさく感じる男性も多いですが、チームをよくするためですから、恥ずかしいと言っている場合ではありませんよ。「ありがとう」と言ってもらえると、ママの心に余裕ができて子どもたちにも優しくなれます。パパとのすれ違いが大きくなると、ママは子どもにあたってしまい、自己嫌悪に陥って、元気がなくなる......という悪循環が始まりかねません。だから、ぜひミーティングの始まりはパパからの「ありがとう」「嬉しかったよ」で先手を打ってみましょう。
ポジティブな言葉から始めて、そのあとそれぞれの近況を話し、上手くいかなかったことや、ちょっと気になったことを共有しあうとよいですね。それで、お互いに直せることは直せばよいし、努力が必要なことは努力してみる。パパだけが責められる場でも、ママだけが感謝される場でもなく、お互いを尊重しながら話をしましょう。
忙しいと相手を思いやるのは難しい。だからこそ家族で話す時間を持とう!
山本先生: 相手を尊重するというのは、子どもに対しても言えることです。子どもたちが一番嫌いなことは、「気まぐれに扱われること」。大人の、やったりやらなかったり、言ったり言わなかったりが、一番嫌い。たとえ今は忙しくて遊んであげられなくても、「いつなら遊べる」と言えば、子どもたちはパパやママのことを待ってくれます。
でも、そうは言っても忙しいときに相手をおもんぱかるのは難しいですよね。だからこそ、毎週決まった時間に話す場を持つというのはセーフティネットになるんです。まずは議題1つだけでも構わないので、話してみましょう。
Bさん: はい、やってみます!今日はいつも周りのパパ達と話すときとは違う雰囲気で話せてよかったです。普段は保育園に通っている家族同士で集まっても、その場は基本的にママが会話の中心になってしまうし、パパ達だけで話したとしても、愚痴で終わっちゃうし。フラットにお話を聞けて勉強になりました。
Aさん: とても気付きが多かったです。夫婦間の役割分担という視点しかなかったのですが、自分達の家事育児が、子どもの視点からどう見えるか、ということに目を向けたいと思いました。
山本先生: あぁ、よかったです!ぜひお二人ともこれから30日の体験をまた聞かせてくださいね。次回は、中間報告の場でお会いしましょう。
Aさん、Bさん: ありがとうございました!
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プロフィール
山本直美氏
特定非営利活動法人子育て学協会会長。(株)アイ・エス・シー代表取締役。幼稚園教諭を経て、大手託児施設の立ち上げに参画。95年より自らの教育理念実践の場として、保護者と子どものための教室「リトルパルズ」を運営。キッザニア日本進出時の安全管理監修、リクルート事業所内保育室やウィズブック保育園、リトルパルズ・アカデミーなどを運営。独自の教育プログラムや保護者向けの講座を提供。著書に、『できるパパは子どもを伸ばす』(東京書籍)、『子どものココロとアタマを育む 毎日7分、絵本レッスン』(日東書院)など。
(株)アイ・エス・シー
特定非営利活動法人子育て学協会