夫婦間のモヤモヤとイライラを抱える働くパパとママのための匿名座談会、妻編に続き夫編が始動!コミュニケーションのプロのアドバイスをもとに、ごきげんな関係へと改善を試みていく30日間のようすをレポートします。
今回は、前回のセッションで決めたトレーニングメニューをもとに2週間を過ごしてみた中間報告です。実際に取り組んで上手くいったこと、苦戦したことをざっくばらんに話してもらい、特定非営利活動法人子育て学協会 会長 山本直美先生がアドバイス。ママや子どもに対してさらに一歩踏み込んだアプローチを学びながら、ブートキャンプ後半戦の作戦もたてていきます。
【前回設定したトレーニングメニューはコチラ】
①夫婦で定例ミーティングを実施する
②「ありがとう」や「嬉しかった」を妻に伝える
③妻の好きなこと(楽しく過ごせること)を知る
④家族のルールをつくる
⇒ 夫編01 パパによる夫婦の関係改善チャレンジがスタート。普段、妻に言わない本音をぶっちゃけトーク!
⇒ 夫編02『些細なことで怒りだす妻にうんざり!』男性はなにかと我慢しがち!?
⇒ 夫編03お互いに感謝し合えるごきげん夫婦になるために!定例ミーティングの機会をつくろう!
<座談会参加者紹介>
Aさん(右)
人材業界の代理店営業職。平日は22時~23時頃に帰宅する生活。妻が現在子育てに専念しているため、家事分担比率は妻95%、夫5%。1歳9カ月の娘が1人。
Bさん(左)
食品メーカーの研究開発職で、仕事柄時間のコントロールはしやすい環境。妻が今年起業したばかりで土日も仕事をしていることも。2歳の双子の娘たちがいる。
定例ミーティングで妻のホンネが聞けた!
山本先生: では、今回もスタートしたいと思います。お二人とも、よろしくお願いします! さっそく、トレーニングの中間報告に入っていきましょう。お二人に夫婦の関係性を良好にするためのトレーニングメニューを決めてもらいましたが、いかがでしたか。できたこと、できなかったことが両方あって当然なので、この2週間の状況を教えてください。
Bさん: 週末の夜の時間に夫婦の定例ミーティングをやりました。改めて夫婦で面と向かって話そうとすると、結構恥ずかしいですね。「これについて話そう」ときちんと決めておかないと、上手く話せないなと実感しました。
山本先生: Bさんはこれまではあえて家で仕事の話をしなかったとおっしゃっていましたが、今回はお互いの仕事の話はしましたか?
Bさん: やっぱり彼女にとって今ががんばり時のようで、僕が妻の仕事の話を聞く方が多かったですね。
僕の方が家事の負担が大きくなっていることを伝えたときも、妻もそこはちゃんとわかった上で「今こういう状況だから、もうしばらくお願いしたい」と話してくれました。 少なくとも、お互い相手のことも想い合っていることが確認できたのはよかったです。
気づかないうちに、妻と面と向かって話せない関係に変わっていた!?
山本先生: Aさんはどうでしょう。定例ミーティング、実施できましたか。
Aさん: ......、すみません、正直に話すと実施できなかったんです。やろうやろうと思って2週間を過ごしていたんですが、なかなか妻に切り出せなくて。
山本先生: 家族には毎日いろんなことが起こりますから、そういう場合もありますよね。ちなみに、なぜできなかったのでしょう。原因はわかりますか。
Aさん: うーん、はっきりとした原因があるかと言えば、ないんです。シンプルに難しかった。心理的なハードルが高かったのかもしれません。いつのまにか、妻とは何でも話すような関係ではなくなっていることを突き付けられた気分です。
山本先生: よい気づきですね。これはAさんだけではなく、一般にもよくあること。家族が増えれば夫婦の関係性は変わるものなんですよ。
子どもが生まれて家族が3人以上になると、それはもう小さな社会。2人のときとは関係性が違ってきていることに気づいたなら、トライした意義はあると思います。
違いにイライラするより、楽しんでしまうが勝ち!
Aさん: 実は、この2週間は特に雰囲気が悪かったんですよ。新型コロナウィルス(注:ブートキャンプ夫編は、2020年2月中旬より1カ月間実施されました)への対策について、夫婦で食い違ったんです。僕は早めに備えた方がよいんじゃないかという意見だったんですが、妻が「そうやって自分たちさえよければと動くから買い占めが起きる」と反対。でも、その間にも娘のおむつのストックは減っていくわけですよ。意見が並行線をたどり、ずっと険悪な状態でした。
山本先生: それは大変でしたね。今は非常事態ですから、いつもと違って当然だと思います。
Aさん: 我が家は僕より妻のモラルが高くて、彼女の意見はおおむね正論なんです。それが我が家の"良心"として機能している反面、世の中、正論だけでは上手くいかないこともあるじゃないですか。
だから、バランスを取る意味で夫婦の意見が違ってよいのかなと感じるんですが、意見の違いから険悪ムードになるのはキツイのですよね......。先生はどう思いますか?
山本先生: これは興味深いテーマですね。たしかにもともとは他人ですから、価値観も行動も違って当然です。だから、"違いを楽しむ"スタンスでいられるのが理想ですね。
もしものときのために、最終決定者を決めておこう!
山本先生: これが会社であれば役職の高い人が決断をするし、スポーツチームだったら監督に決定権があります。同じように、家族にも最終決定者をつくっておきませんか?
たとえば、「生活全般」「教育」「レジャー」くらいの分類で最終決定者を決めておけるとよいです。
もちろん、夫婦で議論を尽くすのが前提ですよ。話し合ってそれでも意見がまとまらないときの最終手段という感覚です。
たとえばお二人はご自身の少年時代の習いごとについて、ご両親のどちらに決定権がありましたか?
Bさん: うちは母でした。父には一切聞いてなかったですね。
Aさん: 多分、父だと思います。基本は両親の意見が揃わないとやらせてくれなかったんですが、最終的には父がいいと言ってくれるかどうかだったので。
山本先生: やっぱり子どものことになると、大なり小なり意見の食い違いがあるんですよ。お互いに譲れず家庭内でバチバチするくらいだったら、「この分野についてはあなたに任せる(私に任せて)」というルールを作っておいた方が、気持ちの整理がつけやすいです。
個人で楽しむ時間も、家族みんなで楽しむ時間も、どちらも大切
山本先生: では、前回トレーニングメニューに設けた「奥様の快動(心から楽しく過ごせる時間)を知る」について聞いてみましょう。奥様の快動は何だかわかりましたか?
Bさん: 率直に聞いてみたら、美味しいモノを食べているときと、おしゃべりをすることだそうで、予想通りでしたね。
Aさん: これもちょっと、家庭内の雰囲気が悪くて上手く聞き出せなかったですね。いやあ、覚悟を持ってやらないとダメだな。
山本先生: ちなみに、奥様の快動を知らないと、微妙なすれ違いが起こります。例えば、ご主人がどこにも連れて行ってくれないと嘆く奥様。でも実態としては、ご主人はちゃんと誘っていたり。ただ、それが奥様の行きたいところじゃなかったときには「誘ってくれたカウント」に入っていないということがあります。
これは、私もそうだと夫に指摘されてはじめて気づいたくらいなので、男性のみなさんは心に留めておいた方がいいかもしれません。
では、快動の時間は実際に取れましたか?奥様だけでなく、ご自身の快動も含めてこの2週間はどうでした?
Aさん: あんまり時間がつくれなかったです。
Bさん: うちも夫婦お互いに自由に過ごせる時間は全然なかったです。
山本先生: 快動は人間の元気の源なので、これがないとエネルギーがなくなっていきます。少しずつでいいので、積極的に取ることを意識してみてくださいね。
残り2週間では、自分と奥様で1回ずつは快動の時間をつくることに挑戦してみてください。また、「家族」も一つの人格だと考えて、個人それぞれの快動だけでなく、家族みんなで楽しむ時間をつくるとなおよいです。
「みんなそろってご飯を食べる」も、立派な楽しい時間
山本先生: お子さんがどんなときに嬉しそうか、家族でどんな過ごし方をすると心地よいか、思い浮かびますか?
Aさん: 娘はよく走りまわる子なので、百貨店の屋上なんかに連れていって歩かせたり走らせたり。それを夫婦で見守っている瞬間くらいしか思い浮かばないなあ。
Bさん: うちの場合も、近所の公園で遊ぶとか、家の中で子どもたちが好きなDVDを見ている時間に心が安らぐかな。
遠出をすると、かえって家族の誰かがしんどくなるんですよ。双子のどちらかがぐずりだして、それに親が対応して......となるから、みんなが楽しくいられるのは、家の中か近所に限られちゃいますね。
山本先生: 特別なことである必要はないんです。小さなときから一緒に楽しめる時間を過ごして、子どもの嬉しそうな顔を沢山見ておくことは大切です。例えば、ご自身が子どもの頃家族全員で楽しかった想い出は何ですか?
Aさん: そうだなあ......、我が家は自宅焼肉ですね。ホットプレートをみんなで囲むのが楽しかったなあ。
Bさん: 僕もAさんの想い出に近いかな。たまに父が料理をする日があったんですよ。父がお好み焼きを焼いてくれる日は、珍しさもあって嬉しかったのを覚えています。
山本先生: まさしくそういうことの積み重ねでよいんですよ。そのときにぜひ「これがパパにとっての楽しい時間」だと言葉で伝えてください。
すると、子どもの心にも残っていき、成長したときに「疲れたときは焼肉でも食べて元気だそう」なんて励みになるんですよ。
さあ、そういう意味でもう一度考えてみると、今、家族でできる楽しい時間は何か思い浮かびますか?
Aさん: 年に1回公園でプロのカメラマンさんに家族の写真を撮ってもらっているのですが、ちょっとしたイベント感もあって楽しいです。もう少し機会を増やしてもいいかなと思いました。
山本先生: 写真はずっと残りますし、素敵な時間になりそうですね。
Bさん: ちょっと今すぐには思い浮かばないのですが、次の定例ミーティングで妻と話してみようかなと思います。
山本先生: これは私の話ですが、日曜の朝だけは父が焼き立てのパンを買いに行ってくれ、みんなで食べるのがすごく楽しみでした。
こんなふうに、小さなことでいいのです。ぜひ、子どもが成長したときに「自分たち家族はこれをやった」と振り返れる想い出をつくってください。
大人ができていないことを、子どもに教えていない?
山本先生: ところで、トレーニングメニューでは、家族のルールをつくることにも挑戦しようとお伝えしていました。家族のルールとは子どもの"しつけ"とも関連が深く、AさんもBさんも、お子さんの年齢的に、しつけが夫婦のいざこざに発展しやすい時期ですが、いかがでしょうか?
例えば、靴を脱いだらそろえると教えているのに、隣でパパは靴を脱ぎっぱなしにして家に上がるようなことです。
Aさん: それは、僕が妻から怒られているやつですね(笑)。
Bさん: ルール作りまでたどり着けませんでした......。
山本先生: 実は、子どもにしつけとして教えていることなのに、大人がお手本になれていないことって意外と多いのです。それが夫婦喧嘩の原因にもなってしまう。だから、ここで一度「大人の自律度チェック」をしてみませんか。ここに10の項目を用意したので、自己採点してみましょう。
Bさん: ......僕は7点ですね。できていないのは「部屋の整理」「自分の要求を相手に伝える」「苦手な人とも関わりを持つ」です。
Aさん: ええと僕も7点、いや8点かな。ありがとうやごめんなさいを妻に伝えられていない自覚はありますし、なかなか困っている人を助ける勇気がない。あとは強いて言えば、苦手な人との関わりくらいです。
山本先生: お二人ともありがとうございます。振り返ってみていかがですか? しつけって、反面教師のように自分ができているかをすごく問われませんか。でも見方を変えると、親になることは自分を一段と律するよい機会だとも言えますよね。
逃げずに「ありがとう」から始めてみよう
山本先生: さて、折角ご自身を振り返ってみることができたので、今できていないことを一つでもできるようにするのはいかがでしょうか?
Bさん: そうですね。じゃあ僕は、部屋の整理からまずは意識してみようかな。家の中がおもちゃで散らかりっぱなしなので、片付けの見本を子どもに見せたいです。
Aさん: どれも大人としてやれなきゃいけないことですが、まずは妻への「ありがとう」「ごめんなさい」かな。朝でかける前に、水筒を準備してくれるのが当たり前だと思ってしまっているなと反省しました。
山本先生: 自分のために何かしてくれるってすごく嬉しいことですよね。だから、ぜひ感謝の気持ちを伝えてくださいね。
Aさん: 実は、昨日の朝がここ最近で一番もめたんですよ。さすがにこのままはマズいなと思ったんですが、素直に謝りたくなくてお菓子を買って帰ってなんとなく濁しました。こういう逃げ方をせずにちゃんと言わないといけませんよね。
山本先生: そう気づいたのであれば、素晴らしいです!だからまずは「ありがとう」を増やすことから始めませんか。子どもたちだって、ありがとうよりごめんなさいの方がハードル高いですから。
家族ルールは、親から子どもへのメッセージ
山本先生: あとは、パパ自身の自律ルールだけでなく、家族ルールまで決められるとよいですね。
Bさん: 今すぐに決めるというよりは、定例ミーティングの議題にして、徐々に決めていきたいです。
山本先生: よいと思いますよ。小さな決めごとから、大きな事柄まであってもよいです。
Bさん: なんとなくルールにしたいのは、「ケンカしても次の日に持ち込まない」「挨拶をする」「ありがとうをちゃんと言う」ことですかね。あと、ちょっとした愚痴になっちゃうのですけど、「炊飯器の保温は24時間まで」とか(笑)。
山本先生: すごくよいですね!そういうものが積みあがって、"家訓"になっていきます。言い換えるなら、ご両親から子どもへの「何を大切に生きてほしいか」というメッセージなので、ご夫婦で話し合って決めていきましょう。Aさんは娘さんへのメッセージとしてつくりたいルールはないですか。
Aさん: 生まれる直前あたりは「娘が何歳になったらこれをさせよう」「だったら親はこうしていなきゃ」と意気込んで考えていたんです。ただ、いざ生まれたらバタバタしているうちに忘れちゃいました。だめですね。
山本先生: ちっともだめじゃないですよ。大半の親には余裕がありませんから。ぜひ今のお話を、勇気を出して奥様に伝えてほしいですね。パパが子どものことをそれだけ想っているのは、ママにとってとても嬉しいことですから。
Aさん: そうですよね。ちょっと待ってくださいね。......、いま妻にLINEで連絡しました。今度ちゃんと話そうって。ここで行動しないと僕はいつまでも動かないので。
山本先生: 素晴らしいです。ぜひがんばってくださいね。では、本日決めたことも踏まえて、次回は2週間後に総仕上げをしていきましょう!
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プロフィール
山本直美氏
特定非営利活動法人子育て学協会会長。(株)アイ・エス・シー代表取締役。幼稚園教諭を経て、大手託児施設の立ち上げに参画。95年より自らの教育理念実践の場として、保護者と子どものための教室「リトルパルズ」を運営。キッザニア日本進出時の安全管理監修、リクルート事業所内保育室やウィズブック保育園、リトルパルズ・アカデミーなどを運営。独自の教育プログラムや保護者向けの講座を提供。著書に、『できるパパは子どもを伸ばす』(東京書籍)、『子どものココロとアタマを育む 毎日7分、絵本レッスン』(日東書院)など。
(株)アイ・エス・シー
特定非営利活動法人子育て学協会