「お互い働いているのに、私ばっかり家事してない?(泣)」「オレだって、よかれと思って家事してるのに、いちいち文句言わないで!」好きで一緒になったはずのパートナーなのに、イライラは募るばかり。そんなストレスを抱える働くパパとママのための新企画がスタート。匿名座談会で夫婦間のモヤモヤとイライラを包み隠さず吐き出しながら、夫婦間のコミュニケーションのプロのアドバイスをもとに、ごきげんな関係へと改善を試みていく30日間のようすをレポートします。
Season2 夫編01では、専業主婦・共働き各家庭の家事育児の実態、最近世の中でも話題になっているパパの育休についても当事者としての本音を教えてもらいました。お二人ともそれぞれのやり方で家事育児に参加するなかで、小さなイライラも垣間見えましたが、今回はいよいよ本音の不満に迫ります。
<座談会参加者紹介>
Aさん(右)
人材業界の代理店営業職。平日は22時~23時頃に帰宅する生活。妻が現在子育てに専念しているため、家事分担比率は妻95%、夫5%。1歳9カ月の娘が1人。
Bさん(左)
食品メーカーの研究開発職で、仕事柄時間のコントロールはしやすい環境。妻が今年起業したばかりで土日も仕事をしていることも。2歳の双子の娘たちがいる。
毎日の我慢が積み重なって、「今の言い方なに?」と爆発!
山本先生: では、ここからは本題に入りましょう。お二人はどんなときに奥様にイライラしているんですか。
Bさん: うちは共働きで家事育児も半々でやってきたのに、最近妻の仕事が忙しくなってきたせいか、僕に家のことを押し付けているような気がするんですよね。妻が仕事を頑張りたいのはわかっているし、やりたいことをやるのはよいんだけど、そのために僕が我慢しなきゃいけないのは、なんか違うかなあと。
山本先生: 奥様が仕事のエンジンをかけすぎて、家庭での役割が気になるということですね。
Bさん: はい。余裕があるときは優しい気持ちで家事を代わってあげられるし、仕事のことも応援できるんですけど、僕も余裕がないときは、「妻のせいであれができない、我慢させられている」というモードに入っちゃうんですよね。そうなると、些細なことで「今の言い方、何だよ?」とケンカになることはあります。
山本先生: よくわかります。「ちょっとした言い方が気に入らない」というのはパパのよくあるイライラですよ。
家事育児に参加しているのに、やり方が違うと注意されてイラっ!
Aさん: うちの場合は、家事のやり方を細かく指摘してくるところですね。ごみの捨て方がダメ、掃除が雑、いちいち注意されるから、イラっとしちゃうんです。それで、僕がイライラしだすとそれを感じ取った妻も不機嫌に......と連鎖が始まるパターンは多いですね。
妻からの不機嫌の連鎖もありますよ。なんとなく不機嫌なときに心配して「大丈夫?」と声をかけても、「疲れているだけ」とそっけない返事をされるから、ムッとしてしまいます。
そこで僕が我慢できれば妻の不機嫌も次第に収まるんですが、ときどき我慢できないと不機嫌が伝染しちゃうんですよ。その状態に入ったら、あとはもうお互いに不機嫌な態度をやり返し続ける「不機嫌の応酬」が始まります。
山本先生: Aさんのお話も、パパの"あるある"ですね。「妻が不機嫌」でこっちもイライラするとよく聞きます。みなさん、奥様の"不機嫌なオーラ"が見えるとおっしゃるのですが、お二人にも見えますか?
Aさん、Bさん: 見えますね(笑)。
妻の小言に、夫は耐えるしかないのか!?
山本先生: では、ご自身がイライラしたときにはどう対処していますか。
Aさん: 基本的には妻の小言を黙って聞くしかないです。彼女が指摘するのは、僕のだらしないところ。トイレの扉をちゃんと閉めないとか、電気を消し忘れるとか、風呂場を掃除した後に水滴がちゃんと拭き取られていないとか......。
妻の指摘は、その通りだなとは思うんですよ。これが仕事だったら、僕も絶対に気づいているし、ちゃんとやっています。でも、せめて家の中くらい仕事モードのスイッチは切らせてほしいんですよね。だから何度も言われたくなくて、風呂場やトイレに注意喚起の付箋を貼っているんです。
山本先生: 奥様はそんなAさんの対処法をどうおっしゃっているんですか。
Aさん: まあ、呆れられています。「こんな簡単なことが付箋を貼らないとできないの?」って。こっちとしては「それであなたの不機嫌が治るなら」という気持ちでやっているんですけどね。
お互い様のはずなのに、妻はすぐに口を出すから腹が立つ!
Bさん: わかるなー。僕も妻から細かいことを注意されますよ。家事のやり方が気になるのってお互い様だと思うんですけどね。僕は妻の洗濯物の干し方を雑だと思っていますし。でも、僕は妻が見てないところで洗濯物をそっと直しているのに、妻は口が先に出る。
毎回ではなく3回に1回くらいの頻度で怒るのが余計に腹立つんですよ。理由は大体わかっていて、向こうの機嫌が悪いときです。それって、本当は僕のやり方が問題じゃなくて、気分の問題じゃないですか。
だから、言われないようにするより、言われたら我慢するしかないと思ってます。でも、さすがに何回も言われると我慢の限界が来て、「お前だってそうだろ?」と言い争いが始まっちゃう。
Aさん: すごくわかります!でも、うちの場合は、我慢の限界が来てもケンカにだけはならないように気を付けているかな。僕自身の怒りのスイッチが一度入っちゃうと、自分でも止められなくなるので、本気の言い争いにはならないようにしています。だから、ちょっとひとことふたこと不機嫌な感じをアピールしてぐっと堪えるのがお決まりのパターンです。
妻が不機嫌モードのときは、我慢するより相手を笑わせた方が勝ち
山本先生: もしケンカになったらどうしていますか。
Bさん: これは自分の中で決めているんですけど、翌日に感情を持ち越さないようにしています。たとえ怒ったりイライラしたりしても、「寝たらそこでおしまい」ですね。あとは、その場の空気を「ケンカしてもしょうがない」というモードに持っていく。変な顔してみるとか、痛くないところをつねるとか、相撲をとる真似をするとか(笑)馬鹿なことをして場の雰囲気を変えます。
Aさん: それで自分の怒りの感情は抑えられるんですか?
Bさん: 夫婦間のイライラの原因って、大抵は細かいやり方が違うとか言い方が悪いとか。言ってしまえば"しょうもないこと"じゃないですか。だから、「今、自分はどうでもいいことでイライラしているんじゃないか」と思うようにしていますね。そうすれば自分の気持ちが収まって、相手をどう笑わせようかと切り替えられます。
山本先生: たしかに、Bさんのように「どうせ大したことじゃないから笑っちゃえ」というのはコミュニケーションの一つの方法で、私たちは"ユーモアアプローチ"と呼んでいます。お二人とも基本的に我慢をしているとおっしゃっていましたが、私は我慢しないで、最初から笑いにかえちゃってもよいと思いますよ。
というのも、ママたちからは同じ状況に対してこんな話をよく聞くんです。「私はちゃんとしてほしいと怒っているのに、夫が無視をする」って。パパとしては我慢して聞いているつもりなんだけど、それを無視されたと感じているママも多いんですよ。
良かれと思って我慢しているのに、それが相手を傷つけているって"夫婦のズレ"ですよね。
そもそも、子育て世代のご夫婦は、仕事に家事に育児もやらねばならないので、お互いに疲れているのが大前提。多くのご夫婦が、ケンカやイライラの理由として「余裕がないから」とおっしゃるのですが、余裕がなくて当然だと私は思うんですよ。
余裕をつくろうとしてさらに無理をして夫婦仲を悪くするくらいなら、パパが笑ってくれたらママの怒りが収まるかもしれません。
細かな違いは気にせず「向こうを笑わせたら勝ち」というくらいの気持ちでもよいと思います。タイミングが悪いと感情を逆なでするので注意は必要ですけどね。
夫婦のすれ違いを防ぐための、「家族のルール」をつくろう
山本先生: お二人のご家庭には、仲直りの仕方など、夫婦や家族の約束ごとやルールはありますか。
Aさん: うーん、全く思い当たらない。全然思い浮かばないです。
Bさん: 改めて考えてみると、きちんと話し合って決めたルールはないですね。
山本先生: 子どもが大きくなっていくにつれ、進学や受験のことなど、ご夫婦の意見がずれたままだと深刻なすれ違いになりかねない話題が増えていきます。だから、「意見が割れたときはこうやって解決する」「怒っているときはこんなサインを出す」といったルールをつくっておくとよいですよ。
例えば、さきほどBさんがおっしゃっていた、「ケンカはしても翌日に持ち込まない」。これをBさん個人の決め事でなく、奥様やお子さんたちと一緒におうちのルールにすると、すごくよいと思います。ルールにこうあるべきという決まりはないので、おうちそれぞれにオリジナルのルールがあってもよいですね。
私達は、こうした家庭内でみんなが機嫌よく過ごすためのルールを「自律ルール」と呼んでいます。例えば、朝の挨拶はどうされていますか。
Bさん: そうですね......。子どもにはしますが、妻にはあまりしないですね。
山本先生: 子どもたちは、夫婦のやりとりをちゃんと見ていますよ。いくら子供に挨拶をしましょうと言っても、夫婦が挨拶をしていなければやらなくてもいいんだとなっちゃう。同じように、ママがしつけのためにお子さんへ教えている隣でパパがだらしなくしていると全く効果がありません。だから、家族みんなでルールや約束ごとを決めて守るようにすると、子どもの自律につながるんです。
Aさん: たしかに、娘から見てどう思うかってあんまり考えたことがなかったですね。うちも夫婦の挨拶や、不機嫌を出し合う感じとか、直さないとな......。
山本先生: ただ、よいところだけを見せるのではなく、一番の理想は夫婦喧嘩をして仲良くするまでを見せることなんですよ。だって、これから子どもたちが成長して社会が広がれば誰かと衝突をすることだってある訳ですから。
ケンカすることがよくないというより、ケンカをしたときの対処の仕方を教えた方がよいですよね。その意味で、ご夫婦が人間関係のお手本として仲直りの仕方まで見せてあげられるなら、私はケンカを見せたってよいと思います。
夫婦以外の大人をもっと頼ってもいいじゃないか
山本先生: ところで、先ほど子育て世代のご夫婦は余裕がないのが当たり前だとお話しましたが、ご夫婦の他に子育てをサポートしてくれる人はいますか。
Aさん: 僕の実家も妻の実家も自宅から電車で30分くらいの距離にあるんですが、ほとんど頼っていないですね。お義母さんがたまに遊びに来て、娘と遊んだり一緒にお昼を食べたりはしますが、「サポート」って感じではないかな。孫の顔を見に来ている感じです。
山本先生: ベビーシッターは選択肢にありませんか。
Aさん: 妻がそこまで求めていない気がします。ただ、僕が気づいてあげられていないだけかもしれません。今のところSOSは出ていないと思います。
山本先生: お二人目が生まれたら、これまでと生活が変わりますので、選択肢として考えておいた方がよいかもしれませんね。
Bさん: うちの場合は、一番近くて電車で2時間くらいの距離に住んでいる妻の両親ですね。子どもが発熱で保育園に預けられないけれど、夫婦共に仕事を休めないようなときは手伝いに来てもらっています。あと、僕が長期出張で1週間家を空けるようなときは、妻が娘たちを連れて実家に帰り、子どもはお義母さんに任せて実家から仕事に通っていました。
山本先生: ご親族の他に、第三者でサポートしてくださる人はいますか。
Bさん: 妻は民間のサービスにも頼った方がいいんじゃないかと話してくれていますが、調べるところでとまっていて、実際には利用していないですね。使いたい気持ちはあるんですが、費用のことや第三者に任せて大丈夫なのかといった不安が大きいのが正直なところです。
山本先生: Bさんのお気持ちはごもっともだと思います。日本人は世界的にみても第三者が子育てに介入することを嫌がる気質がありますね。やっぱり、親や家族がやるべきという意識が強いです。
その一方で、人との関わりが子どもの人格形成に影響することも知っていてほしいです。自分のことを知っている人、自分を好きな人が一杯いるという環境は、自己肯定感を育みますよ。幼稚園の子どもたちを見ていると、気持ちが安定していてトラブルも起こさない子は、いろんな人との関わりが多いんです。反対に、親だけの子育てで「孤立化」するのは、親にとっても子にとっても危険です。どんな人達とパイプを作っていくと、どんなことが得られるかは「7つのパイプ理論』の図を参考にしてみてくださいね。
子どもが信頼できる人を増やすべし
山本先生: ちょっと想像してみてほしいのですが、ご自身のお子さんが信頼している人って何人くらいいますか。
Bさん: 両親、おじいちゃん・おばあちゃん、保育園の担任の先生、保育園のママ友・パパ友さんぐらいかなあ。あとは保育園のお友達ですね。
山本先生: 標準的には2~3歳で20人程度と言われているので、Bさんの双子の娘さんたちは平均的ですね。
Aさん: 3歳から幼稚園に入園する場合など、保育園に通っていない子どもはどうしたらいいんですか。
山本先生: 意識して家族以外のつながりをつくることをおすすめします。というのも、昔の子どもたちは自然と家の外の人たちと関わることができたんですが、時代が変わってそれが難しくなったと言われているんです。
Aさん: それってどんな変化なんですか?
山本先生: 変化の一つは子どもの数が圧倒的に減ったこと。昔はご近所同士で自然と子どもたちが仲良くなっていましたが、今は児童館や公園などにいかないと子どもに出会えないですよね。
また、もう一つの変化は地域コミュニティの崩壊。昔は親が見ていないところでも近所の人たちが子どもたちのことをちゃんと見ていたものですが、最近は悪いことをしたら近所のおじさんから叱られるといった光景も見られなくなってしまいました。
子どもは自分を好きでいてくれる人が好きです。声を掛けてくれる人が一杯いる方がよいと言われています。その意味でも、子育てに第三者が関わるのは決して悪いことではないですし、積極的に児童館やお稽古ごとなどに出かけ、さまざまな大人や子どもに出会うことは大切なんですよ。
休日の公園で、パパ友をつくってみよう!
山本先生: パパのコミュニティづくりという意味では、「公園」もよい機会ですよ。先ほどAさんも話されていたように、最近は休日の公園ってパパが非常に多いですよね。
Aさん: 確かにそうですね。
山本先生: パパ同士だとどんなコミュニケーションをされますか。
Aさん: それが、全くないんです。
山本先生: やっぱりそうですか。私が見かけたパパたちも、我が子の遊びには付き合ってあげているけれど、周りの親子とは関わろうとしない人が多いです。これは、ママとの大きな違いだと感じています。
Bさん: ママ同士だとどうやって仲良くなっているんですか。
山本先生: まず挨拶をすること。それから「(お子さんは)何歳ですか?」から始めるのが定番ですね。「(自宅は)お近くですか?」、「(公園には)よく来るんですか?」と話して共通点を探すのがママ同士の会話では多い気がします。
会話ができそうな雰囲気になってきたら、「まだおしめが取れなくて(なかなか寝なくて、あまりごはんの量を食べなくて)、少し困っているのですよ」など子育てで苦労していることを共有してみたり、「どんな遊びが好きなのですか?うちはこんな遊びが好きで」など、軽く情報共有するつもりで話をつづけてみるのもおすすめです。パパ同士の繋がりができると、お子さんのコミュニティも広げられます。
さて...、それでは次に、さらに"ごきげんな夫婦"になるために夫婦二人でやってほしい、大切なあることをお伝えしますね!
夫婦ストレス解消★30日間ブートキャンプ ~ Season2 夫編 ~
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プロフィール
山本直美氏
特定非営利活動法人子育て学協会会長。(株)アイ・エス・シー代表取締役。幼稚園教諭を経て、大手託児施設の立ち上げに参画。95年より自らの教育理念実践の場として、保護者と子どものための教室「リトルパルズ」を運営。キッザニア日本進出時の安全管理監修、リクルート事業所内保育室やウィズブック保育園、リトルパルズ・アカデミーなどを運営。独自の教育プログラムや保護者向けの講座を提供。著書に、『できるパパは子どもを伸ばす』(東京書籍)、『子どものココロとアタマを育む 毎日7分、絵本レッスン』(日東書院)など。
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