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アルバイトからのステップアップ制度が人材育成の鍵!すべての従業員に継続的な学びの環境を【KCJ GROUP㈱ キッザニア福岡 前編】

アルバイトからのステップアップ制度が人材育成の鍵!すべての従業員に継続的な学びの環境を【KCJ GROUP㈱ キッザニア福岡 前編】

少子高齢化社会となり、年々深刻化している人手不足問題。人手不足はどの企業にも共通の課題ではあるものの、その度合いには業界・業種で差があります。今回は、離職率も高く、慢性的な人手不足といわれているサービス業(接客業)の事例をご紹介します。

サービス業の中でも接客業は、パート・アルバイトなど短時間の働き方を選んでいる人も多く、このような人たちに働く場所として選んでもらい、更に戦力として中長期的に活躍してもらうにはどうしたらよいのでしょうか。その事例として紹介したいのが、東京・甲子園(兵庫)・福岡でこどもの職業・社会体験施設「キッザニア」を運営するKCJ GROUP。同社独自のアルバイト研修・評価制度や社員登用制度について、キッザニア福岡事業部人事総務グループマネージャーの大神貴夫さんに伺いました。

※写真は、撮影のため一時的にマスクを外しております。



2022年オープンの新施設「キッザニア福岡」で、380名のアルバイトを新規採用

── はじめに、本日お伺いしている「キッザニア福岡」についてご紹介をお願いします。

キッザニアは、こども達が、楽しみながら社会のしくみを学ぶことができる「エデュテインメント(エデュケーション+エンターテインメント)」がコンセプトの“こどもが主役の街”です。「キッザニア福岡」は、東京・甲子園(兵庫)に続く日本で3番目のキッザニアとして、2022年7月31日にオープンしました。立ち上げにあたって東京・甲子園(兵庫)から希望して異動してきた社員もいますが、大部分は新規採用です。キッザニアでは正社員採用とアルバイト採用、2つの入口を設けており、フルタイムで働きたい人は正社員、学業や家庭、その他の仕事と両立したいならアルバイトと、ライフスタイルに合わせて働き方を選べるようにしており、キッザニア福岡オープン時は、380名のアルバイトを新規採用しました。


(図表1) 「キッザニアのキャリアコース」キッザニアのキャリアコース

── 福岡ならではの特徴はありますか。

もともとキッザニアは多様性を尊重している風土ですが、福岡は「アジアの玄関口」とも呼ばれるくらい国際色豊かな土地柄のため、海外にルーツを持つスタッフも多いです。シニアのスタッフも活躍していますし、主婦やダブルワークをしている人など、アルバイトの人材は非常に多様性にあふれています。




アルバイトスタッフが学びを通して成長を感じながら働ける職場環境と、それを実現する人事評価制度「ステージ制」によって体現されるキッザニアの理念

── 380名ものアルバイトを一度に採用して、どのように育成しているのでしょうか。キッザニアの研修・評価制度について教えてください。

キッザニアでは、アルバイトスタッフに対して「ステージ制」という評価制度を設けています。この制度では、クリスタル・パール・サファイア・ルビー・ダイヤモンドの5段階があり、入社時点ではクリスタルからスタート。ステージアップのタイミングは年2回あり、勤務評価+各ステージに必要な知識・スキルを学ぶ研修の受講状況により決定(研修は勤務時間内に実施)。ステージに連動して時給がアップし、提供するサービスの幅が広がり、質も向上するという仕組みです。


(図表2) 「キッザニアの研修・評価制度」キッザニアの研修・評価制度

── この制度が生まれたのはどのような背景があるのですか。

キッザニアでアルバイトスタッフが担っているのが、スーパーバイザーという役割。スーパーバイザーは、パビリオンでの職業体験のサポートなど、こども達に直接サービスを提供する重要な役目です。学びや気づきを引き出すのが仕事ですから、スーパーバイザーもこども達の良き手本として学び続けることが大切なのです。常に一人ひとりが目標を持って「次は○○ができるようになりたい」とステップアップしていく姿勢を、働く私たち自身が体現すること。これは、キッザニアの理念そのものなんですよ。


── そこまで手厚い評価制度を運営し、アルバイトスタッフの能力開発に注力しているのはなぜなのでしょうか。

アルバイトスタッフだから、というより「直接お客様にサービスを提供する人だから」というニュアンスが強いかもしれません。こども達からすれば、正社員もアルバイトも関係ないですから。その意味で、雇用形態に関わらず現場の第一線で働くスーパーバイザーのスキルや知識を高めていくことは、非常に重要なことだと位置付けています。

また、そもそもスーパーバイザーは人が相手の仕事でもあり、マニュアルですべてが解決できるような単純な作業ではないんです。こども達一人ひとりに合わせて向き合い方は変わってきますし、職業体験ができる各パビリオンのパートナー企業がどんな想いで学びの機会を提供してくれたのか、その職業ならではの喜びや苦労を反映することも大切です。その他にも、障がいや外国籍など多様なバックグラウンドを持つお客様に配慮しながらどうサービスを提供していくか、といったテーマなどを学んでいく必要もある。これらは、キッザニアの仕事だけに閉じたものではなく、現代社会に生きる一人の大人としても求められるものであると思います。そうした学びを通して常に成長を感じながら働けることこそ、キッザニアがこだわっている職場環境なんです。



短期間で11名がアルバイトから正社員登用!まずはアルバイトで職場を経験し、正社員を目指すケースも

キッザニアパビリオン

── アルバイトから正社員への登用制度についても教えてください。こちらは先ほどの「ステージ制度」の延長線にあるものなのでしょうか。

社員登用制度とステージ制度は、厳密には連動していません。「最上位のダイヤモンドにならないと受験資格がない」といった性質のものではなく、本人の意志で随時チャレンジできる仕組みになっています。というのも、アルバイトスタッフは主婦など働く時間に制約のある人がメインですが、「こどもが小学校の高学年生になったので、4月からフルタイムで働きたい」などのようにライフステージの変化によって働き方の希望が変わる場合もあるからです。そのため、ステージが上がるのを待たなくてもチャレンジをしている人は多いですね。福岡のオープンに合わせて6月に入社したアルバイトスタッフは全員一律に最初のステージであるクリスタルからスタートしていますが、380名中11名が10月時点で正社員に転換しています。


── 4ヶ月で11名が登用されているのも素晴らしいですが、実際にはそれ以上の人たちが「今よりもっと働きたい」と手を挙げているわけですよね。短期間にたくさんの人の働く意欲を高められているのはなぜなのでしょうか。

今回のケースは、福岡での新規オープンに伴う採用だったことも大きな要因だと思っています。地域ではキッザニアを知らない人も多くいる状況だったため、職場環境や働き方のイメージがあまりなく、「まずは週2~3日のアルバイトからはじめて様子を見よう」と応募してくれた人も多かった印象でしたね。実際に働いたことで手応えを感じて、キッザニアならもっと頑張れると応募してくれました。中には、別の仕事とダブルワークをしていたものの、キッザニアの仕事こそ自分のやりたいことだと確信を持って正社員になってくれた人もいます。

それとは逆に、正社員で応募してくれたものの、「こどもが小さいうちは、働く時間帯の自由が利かない」と現段階では正社員の勤務条件にはマッチせず、双方の合意の上でアルバイトからスタートしてみることになった人もいます。その場合も、当社の登用制度があったからこそ、将来的にライフステージが変化したときに正社員転換することを見越して今はアルバイトで働くことをポジティブに選択できたようです。



従業員が今の状況にあったベストな働き方や役割にチャレンジできるように、働き方を柔軟に変えられる選択肢を用意しておく

キッザニア人事担当さま

── キッザニアの制度や仕組みからは、雇用形態に関わらず従業員の学びや気づきを引き出し、一人ひとりの成長を信じて大きな期待をかけていく姿勢が感じられます。ただ、アルバイトで働く人にとってはそれが「重すぎる」側面はないでしょうか。

会社と個人で期待のずれが起きないように、スーパーバイザーとしての心構えや研修・評価制度について、採用の段階で丁寧に説明するようにしていますね。「キッザニアで働くということは、あなた自身も学び続けることが前提。そして、あなた自身が学びを楽しめていなければ、こども達にも楽しい学びを提供できない。」などと伝えています。この点を理解した上で入社している人たちなので、周囲から期待や応援をされて自己成長を続けて行くことに、前向きに取り組んでもらえているんだと思います。 

また、ステージ制のおかげもあり、アルバイトでもマネージャーと定期的な振り返り面談の機会があります。「できるようになったこと」「次に目指すこと」「そのために学ぶこと」などを継続的に会話しますので、本人にとって納得感のあるチャレンジを設定しやすく、少しずつ着実にステップアップしていける環境なのです。


── 従業員一人ひとりの事情やライフステージに合わせて、働き方やキャリアに複数の選択肢が用意されていることは、キッザニアで働く人たちの多様性が尊重されている象徴のようにも感じました。

たしかに、ダイバーシティはかなり浸透していると思います。例えば、いろんな人の考えを分かち合う風土が根付いているという意味でも感じますね。会議などで意見の相違があっても、まずは「その考え方もアリだよね」と認め合う。それぞれの良いところを取り入れながら最終的な着地点を探っていくようなアプローチを大切にしています。

また、様々なバックグラウンドの人たちを歓迎しているからこそ、全員一律の働き方やキャリアパスでは上手くマッチしない人も出てきます。複数の選択肢を用意しておき、その人自身が今の状況にあったベストな働き方や役割にチャレンジできることが大切だと思います。



人手不足の時代に本気で考えたい人材育成:アルバイトの成長と戦力化の秘訣は、正社員同様のキャリア支援

キッザニアの人材育成や評価制度には、雇用形態に関わらず従業員に等しく成長を期待する企業姿勢が感じられます。例えば、アルバイトの評価・昇給制度である「ステージ制」。ステージを昇格するための基準が明確に提示されており、一人ひとりにとって身近で納得感のある目標をクリアしながら徐々にステップアップをしていくことが可能。入社時点で明確なキャリアプランがなかったとしても、一歩ずつ成長の階段を上るうちに仕事へのモチベーションが醸成され、キャリア形成できる仕組みになっています。

また、正社員とアルバイトはあくまでも働き方の違いであり、個人のライフスタイルに合わせて選択するものという考え方。そのため、アルバイトでも定期的な振り返り面談の機会があるなど正社員同様にキャリア支援は手厚く、そのようなサポート体制があるからこそ正社員登用の仕組みが効果的に機能していると言えるでしょう。

こうしたキッザニアのアルバイトに対する人事制度や方針は、現場で顧客に接する立場であるアルバイトの成長こそがサービス品質に直結するからでもあり、同じようにアルバイト従業員を多数抱える企業・業種の大きなヒントになるのではないでしょうか。


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