
近年急速に普及したテレワークは、柔軟な働き方として家庭と仕事の両立を支援し、育児期にある女性の就業を促進する可能性をもつものとして注目されている。しかし、日本においてテレワークが出産・育児期の女性の就業に与える影響を数量的に検証した研究はほとんど行われていない。その背景には、コロナ禍以前にはテレワークに対する認知度が低く、テレワークを調査項目に含む個票データが非常に限られていたことがある。リクルートワークス研究所による「全国就業実態パネル調査(JPSED)」は、テレワーク利用状況を把握できる数少ないデータの一つである。この調査は、テレワーク利用の他、労働者のライフイベントや就業歴といった豊富な情報を追跡しており、テレワークが出産後の女性の就業に与える影響を検討するうえで適したデータである。
本稿では、JPSEDの2016年から2023年までの調査データを用い、調査期間中に未就学児をもち、かつ正規雇用の就業経験がある女性を抽出した。このデータを用いて、テレワークの利用が出産後の育児期にある女性の就業に与える影響を検討する。