2016年9月27日、「ホットペッパービューティアカデミー(HOT PEPPER Beauty Academy)」が、女性美容師の働き方をテーマに「20代の働き方・30代の過ごし方」と題して、イベントを開催いたしました。
ホットペッパービューティアカデミーは、美容の未来のために、「学び」と「調査・研究」を軸に活動。そのなかのひとつが、今回のテーマでもある女性活躍と訪問美容をテーマに取り組む「未来会議」です。
ホットペッパービューティアカデミー主席研究員の齋藤陽子がイベントの目的を解説
美容の現場を多く取材してきたなかでよく耳にするのは、「女性美容師は歳を重ねることで、豊かに仕事ができる。長くお客さまと付き合い、輝いていける仕事」という言葉。しかし、実際には、結婚や出産を機に働くことを諦めてしまう人が多く存在します。 長く美容業界で働き、輝き続けるためにはどうすればいいのか? そのヒントが見つかる場所として、今回のイベントを企画しました。
実は、今回のイベントの司会進行を務めたホットペッパービューティーアカデミー研究員の服部美奈子も、元・美容師。 過去に、「美容業界では長く働けない......」と、1人で思い悩み、その職を辞してしまった経験を持ちます。
美容師としてのキャリアを持つ、ホットペッパービューティアカデミー研究員の服部
現在も服部と同様の不安を抱いている女性美容師が多い一方で、調査の結果、お客様からは女性美容師へのニーズが非常に高いことがわかりました。 「同性なので安心」「希望をしっかり聞いてくれる」といった理由で、女性に担当してほしいと思う人は、男性を希望する方の4倍。 しかし、実際には女性美容師が足りず、その希望が叶っていません。お客様にとっても、お店にとっても、もちろん美容師ご本人にとっても、女性が長く働き 、活躍し続けられるようになることが今、求められています。
女性美容師への、お客様からのニーズは非常に高い
今回のイベントは、「女性特有の悩みも本音で話せるように」と、参加者を女性限定に。約40名の参加者は、 アシスタントとして働き始めたばかりの業界1年生から、店長やオーナー、育休から復帰しママ美容師として奮闘中の方など、多種多様。 それぞれのテーブルでは、同じ職業だからこそわかる悩みを共有したり、先輩美容師として後輩にアドバイスをしたり、 初対面とは思えないほどに活発な意見交換が行われていました。
同業だからこそわかる悩みごとも。トーキングタイムは大盛り上がり
第一部では、「先輩の経験談を聞く」をテーマに4名の先輩美容師が、それぞれのライフヒストリーを紹介しました。
「Grow by GARDEN」の吉野慶子さんは、育休から復帰したての人気ママ・スタイリスト。20歳の時に就職し、2年後にスタイリストデビュー。 しかし、「憧れの撮影の仕事がしたい」と、現在所属する「GARDEN」に転職。 アシスタントとして再びイチから働くことになりますが、吉野さんを待ち受けていたのは過酷な日々。「毎日、泣きながら帰っていた」と当時を振り返ります。
「同期に恵まれたので、つらい時期も乗り越えてがんばれた」と吉野さん
現在は、1歳の子供を育てながらの時短勤務を始めて5ヶ月。生活がすべて子供のペースになるので、予想外のことが起こったり、 時間配分ができなかったり、以前とは違う生活に、てんてこ舞いの日々を過ごしています。育児に協力的だという旦那さんのことも"教育"しながら、 子育てと仕事の両立にチャレンジしています。
愛知のサロン「serio anjo」の塚田美由貴さんは、女性スタッフの相談役・キャリアメンターを務めながら、サロンでも活躍中。 25歳で店長に就任した塚田さんですが、打診を受けた際には、「私にはできない」と一度固辞したそうです。 しかし、後輩から「自分たちが支えるからがんばってほしい」と熱い手紙をもらい、挑戦してみる決心がついたと語ります。
自身の反省から、「若い頃に強みを身につけてほしい」と語る塚田さん
塚田さんのターニングポイントは、お客様から受けた大クレーム。バッサリ切りたいという希望通りに言われたままの髪型にしたところ、 後日「ブスと言われた!」とお店への怒鳴り込みを受けます。その時は、少し理不尽さを感じていたという塚田さんですが、 「単にお客様の要望を聞くばかりで、アドバイスができていなかった」と反省。以降は、"似合わせ"を意識し、しっかりと問診を行なうようになったことで、 売り上げが一気に3倍に。プロとしてできることを考えたことで、数字にも結果が表れました。
登坂さおりさんは、34歳の時に、サロン「Ange」等を経営するトシックスホールディングスの副社長に就任。 若くして経営に携わるエリートに思えますが、本人は、「いつも怒られてばかりの落ちこぼれで、毎日辞めたいと思っていた」とアシスタント時代を振り返ります。
「人を束ねる立場になって、スタイリストとしても幅が広がった」と登坂さん
独立を考えていた時に受けたのが、経営参加のオファー。本人は、「自信はないのが当たり前。不安はあったけれど、精一杯やれば成果が出ると信じてやってきた」と、 守りに入るのではなく、まず挑戦することの大切さを語ります。
スタイリスト歴17年、人気サロン「apish AOYAMA」の樋口いづみさんは小学校1年生の女の子のママ。現在は時短で勤務しています。 サロン初のママ美容師として、「右も左もわからないなかで」、手探りで道を切り開いてきました。
駆け出しの頃は、「大人っぽくみえるように」洋服やメイクでセルフブランディングしたという樋口さん
樋口さんがスタイリストになった当時は、カリスマ美容師ブーム真っ只中。apishの坂巻代表は、ブームの牽引役だったので、 坂巻さんが手がけたスタイルの切り抜きを手にお客さんが殺到。樋口さんは、切り抜きそのままの髪型にしてあげることに満足していましたが、 「俺の真似をしてもお前は絶対に売れないよ」と代表から言われたことをきっかけに「私に、なにができるだろう?」と自分の強みについて考え始めます。
「一番好きだったことがアレンジだったんです。これなら先輩に勝てるかも、と密かに思って(笑)」。 現在、業界で"アレンジの女王"として名高い樋口さんが自分の道を見つけた瞬間でした。
さまざまな悩みを抱えながらも、前に進み続けてきた先輩美容師の話を聞いて、参加者からは、「結婚しても働けるのか不安で悶々としていたけれど、 話を聞いて自分もしっかり両立したいと思った」「ママとしても、美容師としても、かっこよく生きられると勇気が湧いた」 「今まさに1歳の子供がいるので、共感できた」「この先、美容師としてどんなふうに生きるのかイメージが持てた」といった感想が挙げられました。
先輩美容師の話を聞いての感想は? ロールモデルを見つけた人も
熱心にメモを取る参加者も。真剣な表情でみなさん話に聞き入っていました
第二部のテーマは、「先輩に質問してみる」。テーブルごとに質問カードを記入。「育休を経てお客さんは離れましたか?」 「妊娠はいつお店に伝えましたか?」といった具体的な疑問を、登壇者に投げかけました。
聞いてみたいことがぎっしり記入された質問カード
登壇者4人の話を聞き、質問し、参加者同士でも交流をして、女性美容師としてもさまざまな生き方があることを、改めて知ることができた4時間。イベント後のアンケートでは、参加者から「やる気になった」「元気になった」「長く美容師を続けたいと思った」という声が寄せられました。 あるサロンでは、イベントに参加した店長職のスタッフが、「女性美容師の需要を活かして、これからも頑張っていこう」というメッセージを全スタッフ向けて送ったとのこと。 同じ業界の女性たちが集い、議論を交わしたことで、「明日から、またがんばろう」と思えるような人生のヒントが見つかりつつあるようです。
オリジナルカップケーキや飲み物も女子会的な雰囲気を演出
◆参考
美容業界全体の活性化を目的に、調査研究およびサロン向けの無料セミナー、イベントなどの学習機会提供を行っています。
女性限定イベント 女性美容師「20代の働き方・30代の過ごし方」イベントレポート