女性がリーダーシップを発揮することが徐々に求められるようになっている昨今、具体的に次の一歩をどのように踏み出したらいいのか...。
女性がもっと自分らしく働ける時代を創るために、リクルートキャリアではリクルートキャリア ジョカツ部を通じてプロジェクトを推進しています。
2018年1月27日(土)、リクルートキャリア ジョカツ部主催で「私を前に進めるための、 小さな一歩の踏み出し方」と題したイベントが開催されました。
第一部では、株式会社チェンジウェーブの佐々木裕子氏より講演がおこなわれました。 第二部ではアビームコンサルティング株式会社の髙橋美砂子氏、 MSD株式会社の伊東朝香氏を招き、リクルートキャリアの梅田杏奈とともに自身の経験をもとに、 これまでどのようにしてキャリアを前進させてきたかについてパネルディスカッションが おこなわれました。
意識しないと向き合えない、自身が感じる「恐怖」「無知」「情熱」
「企業の中堅社員によくある現象は4つ。(1)問題や課題を評論家的に語ることはできるが、 本質を射抜くまでは考え抜いていない(考える力)、 (2)ネットワークが狭いため多様な考え方に触れておらず、人に助けてもらうのも上手でない(共創する力) 。(3)本気で挑戦・行動できず守りに入っている(自己進化する力)。 (4)自分と向き合うことからの無意識的な逃げ(自分の目指すものを持つ力)。 偉そうですけど、私自身も経験してきたことで、知らないうちに自らにリミッターを かけてしまっているんです。」(佐々木氏)
「新しい一歩を踏み出すことはとても勇気がいること。それには、己の『恐れ』、『無知』、 『情熱』を知ること。人は気づかないうちに自分を守っているんです。『自分が何を恐れているのか』 を認識し言語化することで、見方を変えれば『たいした恐れでもなかった』と思えることもあれば、 新しい一歩を踏み出した時にどんな恐れがあるのか見積もることもできます。 自分が『知らない、ということすらも、知らないことがある』と意識することで、 ひょっとしたら自分が知らないだけで当事者になってみたら当たり前なのかもしれない、 というセンサーが働くことも。」(佐々木氏)
「自分の情熱がどこにあるか」は、佐々木氏も過去には深く悩んだそうです。
「当時在籍していたコンサルタント会社を辞める事を先に決めたものの、 リーマンショックの翌年だったので職も見つからず。『ここでキチンと考えて決めなかったら、 この先も誰かに期待された事をやる人生になってしまいそうだ』と半年間ほど自分がやりたいことが 何なのかについて、向き合ったんですね。」(佐々木氏)
過去の経験を紐解いていくと、コンサルの仕事をしていた際に、人がひとり変わると周りが変わり、半年から一年の間に一気に組織が変わって行く機会を共に創っていった経験を、心からやりがいを感じたこととして実感。人の変化を通じて組織に変革を起こしていくことを自身の情熱と定め、現在の仕事を始めてからは、「変化を起こすことが自分の仕事。変化さえ起こせれば人の評価を意識する必要もなくなり、怖いものがなくなりました」と言います。
「自身が情熱を感じることや恐怖を感じること、また自分自身の無知を意識することは 一人ではできません。なぜかというと自分の事だからです。 誰かに言ってもらわなきゃわかりません。情熱について知ることも、 様々な人との接点がないとできません。みなさんの周りにいるお節介な人、苦言を呈してくれる方、 『ちょっと違うと思うよ』と指摘してくれる方を大事にした方がいいと思いますし、 ご自身も可能な時は周囲の方に愛のあるお節介をしてあげてください。」(佐々木氏)
3社の女性リーダーが経験した「こうあらねばならぬ」からの解放
第二部にパネラーとして参加した伊東氏が現在所属する会社、MSD株式会社は、 世界140カ国以上で事業展開するグローバルヘルスケア企業。 人財面ではダイバーシティを強みの源泉ととらえ、社員と会社の成長につなげるという方針を掲げ、 経済産業省主催の「ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれています。
10歳の子供を育てながら働く伊東氏は現在の会社に転職してから「子育てをしながらでも昇進を 目指しても良いんだ」と目から鱗が落ちる思いをしたと言います。
「前職では、子育てもあり残業も出張もできない自分に引け目を感じていました。 そのため、昇進に対する思いを封印することも多かったんですね。 ところが現在の会社では面談してくれた役員の方の『第二子妊娠中にCFO職を打診された』 という経験談を聞いて『子供がいても昇進を目指しても良いんだ』 『自分の能力と出した成果をもとに望む昇進を素直に口に出していいんだ』と自分で掛けていたリミッターが 外れたように思います。私は今、本当に第二の青春といった感じで仕事を楽しんでいます」(伊東氏)
2人の子供を育てながらマネジャーとしてアビームコンサルティングで働く髙橋氏は、 出産前昇進した際、思い切って手をあげた経験があるそう。長らく担当してきたプロジェクトで、 上司が上司自身のキャリアのためにプロジェクトを離れる意向を固めており、 後任のマネジャーは誰が良いか話し合ううち、「それならば、私がやります」と言葉が出て、 チャレンジすることになったそうです。
「私はコンサルタントとして現在16時までの時短で働いています。 長女を出産した際にはクライアント企業に時短と言えず、例えば17時のクライアントとのミーティングは 上司に代わってもらうといった形でやり繰りしていました。ですがやはり限界を感じ、 2人目の子供を出産した際には思い切ってクライアントに伝えさせてほしい、と。 すると、会社も快くOKしてくれて、クライアントからの理解も得られたんですね。 10年前は考えられなかった分、私自身とても嬉しかったですし、時代も変わってきたな、と感じました。 仕事を通じて自分の強みが磨かれてきたことも、保護者会の活動をする中でも実感しています。 自分が組織の中で何がやりたいのか、何ができるのか考えることが大事なんじゃないでしょうか。」(髙橋氏)
リクルートキャリアの梅田は昨年の4月に1年半の育休から明けて現職に復帰したばかり。 過去には目の前の仕事内容から離れた際の、将来のキャリアイメージがつかない時期もあったそう。
「この先管理職を目指すイメージが湧かないと話をした際、当時の上司に 『マネジャーになった際の視野感や視座感をなぜ今の価値観で判断するのか?』と言われたんですね。 『自分がこういう性格だから』『会社ってこういうものだから』と決めてしまうのではなく 『人と話して、それを受け入れて、自分を変えていく』ということが自分の可能性を結果的に広げるのだ、 ということに気づけたことは大きかったと思います。」「苦手を克服しようと仕事で四苦八苦している時に、 『もっと自分らしくやって良いよ』と言われたこともありました。 本当に上司に相談できる環境に恵まれていると思います」(梅田)
私なんかにできることは限られている...って、本当?
「こんなこと言ったら変かもしれない」 「こうあらなければならない」 「世の中はこういうものだ」・・・
誰もが持つこうした規範の感覚について、第一部で講演した佐々木氏は認知科学者の 故三宅なほみ先生の言葉を引用して次のように話しました。
「実際には、人は放っておいてもちゃんと生き抜く力を発揮できるんですね。 なんとなく標準化しなきゃいけない、枠にはめなきゃいけないと思ってしまうから、 そういった『〜ねばならぬ』になってしまうのです。
ですが、21世紀を生き抜く力というのは、もともと備わっているのに知らないうちには まってしまったリミッターを取り外して自分を解放してあげる、規範を押し付けず自由にしてあげる、 という事が大事なんです。」(佐々木氏)
座談会でも、キャリアの考え方や上司・会社とのコミュニケーションをどうすれば良いか、 自身が感じる限界や不安など、真摯に質問する参加者と、それを受け止めアドバイスする各社社員の話で、 熱気あふれる場となりました。
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