両立支援 共働き夫婦 家事育児の実態~夫のホンネ、妻のホンネ~

親の影響ではなかった!?「家事ができない夫」はなぜ生まれる?|vol.03

親の影響ではなかった!?「家事ができない夫」はなぜ生まれる?

「週5日勤務の共働き夫婦 家事育児 実態調査2019」〜夫のホンネ、妻のホンネ〜

夫の家事・育児に納得していない妻たちは、具体的にどんな不満を抱いているのでしょうか。調査で寄せられたコメントに注目してみると、

「夫の家事は無駄が多い(妻・34歳)」

「子どもが泣いても夫は何もできず、私に押し付けてくる(妻・31歳)」

と、やはり多くの妻が「夫の家事スキル」に不満を感じているようでした。そこで今回は、男性の家事・育児スキルについて様々な角度から調査した結果をご紹介していきます。

※本連載記事は、夫婦ともフルタイム勤務もしくはそれに近い働き方をしている共働き家庭に注目し、「夫婦ともに週5日以上勤務かつ、1日平均6時間以上勤務の世帯」を対象とした調査結果をもとに構成しています。詳しい調査対象については、こちらをご覧ください。

夫が一通りの家事をできる家庭は、できない家庭に比べて夫婦円満の割合が約2倍!

そもそも男性は、自身の家事スキルをどう捉えているのでしょうか。

「一通りの家事ができる」と回答した男性は全体の7割。実際に一通りの家事を行っているかはさておき、自分にはできないと思っている人の方が少数派なようです。

次に、夫が『一通りの家事をできる家庭』と『一通りの家事をできない家庭』で満足度を比較してみました。
すると、『できる家庭』は4割が夫婦共に不満がないのに対し、『できない家庭』は2割程度という結果。

また、妻だけが不満に感じている割合にも差があり、『できる家庭』で24%、『できない家庭』で40.9%。夫が一通りの家事をできるか否かは、夫婦間の満足度に影響しているようです。

結婚するまで実家暮らしだった男性は要注意!?

では、家事ができる男性とできない男性とでは、何が違うのでしょうか。まず注目したいのは、「育った環境(自身の親の働き方)」。両親共働きの家庭で育った男性と、母親が専業主婦の家庭で育った男性では、幼少期の"お手伝い"経験や、家事への参加意識に差が生まれやすいのではないかと、環境が影響している可能性を探っていきました。ところが、どちらの男性も両親が共働きだった割合は5〜6割と大きな違いが見られなかったのです。

さらに、両親の働き方が子育ての価値観を左右し、男性の家事スキルに影響している可能性も探ってみました。しかし、「子どもが小さいうちは、母親がそばにいた方が良い」という価値観を支持した男性は、むしろ両親共働きの家庭で育った人の方がやや高い結果(64.3%)。これは、女性の場合もほぼ同様の値を示しており、男女ともに親世代のやり方や価値観はそれほど重要ではなさそうです。

家事について、あなたや家庭内での状況について最もあてはまるもの

一方、独身時代の生活にも目を向けてみると、明らかな関連が見られました。「結婚前に1人暮らしの経験がある」と答えた割合で比較してみると、家事ができる男性の8割以上は1人暮らしをしていたのに対し、家事ができない男性は約5割が1人暮らしを経験しないで結婚生活をスタート。女性の場合も家事ができないと回答した人は1人暮らしの経験が3割程度しかなく、生活に必要な一通りのことを実際に自分でやってきた経験の差が、結婚後にも影響しているようです。

細かな作業をやりたがらない夫たち

経験の差が家事の得意・不得意に影響しているなら、その差をどうやって埋めていけば良いのでしょうか。そのヒントとして、夫婦の家事・育児分担割合をもとに、男性が得意な家事・苦手な家事を見ていきましょう。

今回の調査した家庭における、家事・育児分担割合の全体平均は、夫:妻=3:7という結果。項目別にみてみると、夫の実施割合が4割を超えているのは、「浴室や水回りの掃除」「ゴミ出し」「子どもと遊ぶ」。妻よりも夫が実施している家事は「ゴミ出し(60.2%)」のみでした。

一方、夫の実施率が低いワースト3に注目すると、ある傾向が見えてきます。「食事のしたく・調理(17.7%)」「子どもの幼稚園・保育園関連の雑務(19.1%)」が2トップで、3位が「食事の買い出し(23.8%)」。調理は材料を切ったり煮たり焼いたりといくつもの手順がありますし、幼稚園・保育園の雑務も、すべての持ち物に名前を書いたり連絡ノートをチェックしてサインを書いたりと、こまごまとした作業が山のようにあります。食事の買い出しだって、冷蔵庫の中身を思い浮かべつつお店の特売品もチェックしながら、献立を考えて買い物することが必要で、かなり頭を使う作業です。

このような複雑かつ細かな家事・育児ほど、男性はやっていないということ。シャンプーの補充や子どもが持ち帰ってきた弁当箱を洗うといった、「見えない家事」も該当しそうです。言い換えれば、手間のかかる複雑な家事ほど女性が引き受けているということ。生活に必要な一通りの家事を自分一人で行った経験がないと、そうした細やかさが必要なことに気づきづらく、「家事が雑」という烙印を押されやすいのかもしれません。

「きちんと分担」派も「役割は決めない」派も。理想のかたちは家庭ごとに違っていい

では、夫婦ともに週5日以上1日平均6時間以上働く家庭における、理想的な家事の参加状況とはどのようなものなのでしょうか。私たちは夫婦それぞれの気持ちを追加調査(※)してみました。

※追加調査について詳細はこちら。

すると、今の家事参加状況については男女で開きがあるものの、理想的な状態のイメージは男女で差が縮まっており、「どちらかに極端な負荷をかけるべきではない」と考える人が多いことが分かります。

その一方、家事の役割を分担することに関しては人によって意見が分かれる結果になりました。きちんと分担できている状態を理想とする人ともいれば、気づいた人が気づいたときに出来ている状態が良いと考える人も。女性の方が後者を希望する割合が多いのは、「お願いしたことしかやってくれない」といった妻の不満の裏返しのようにも感じられます。また、男性よりも一通りの家事をやってきた人が多いからこそ「はっきりと線引きをするのは難しい」という意見なのかもしれません。

「お互いの得意・不得意を考慮して分担する」「平等にシェアする」「その場で気づいた方、できる方がやる」...。夫婦が円満に家事・育児を両立する方法は一つではないし、仕事内容や働き方が変わることや、子どもの人数や年齢の変化によっても、ベストなかたちは変わっていくものでしょう。でも、夫婦どちらも一通りの家事・育児をこなせた方が、夫婦で協力するやり方の選択肢は広がります。だからこそ、夫が一通りの家事をできる家庭ほど、夫婦で話し合いながら"自分たちの目指す理想"に近づきやすいのかもしれませんね。

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