家族の介護は、いつ直面するかわかりません。現役社会人である20代から40代の“若者ケアラー”が、介護離職(※家族などの介護をするために会社を辞めること)しないための方法、部下が介護に直面したときの対処法などについて、介護支援の専門家である川内 潤さん(NPO法人「となりのかいご」代表)にお話をうかがいました。
- コロナ禍で、親を介護する「若者ケアラー」が増えている
- 安易に介護離職をしないための4つのポイント
- 部下に相談されたら…周囲ができること
- 最後に
コロナ禍で、親を介護する「若者ケアラー」が増えている
新型コロナウイルスの影響で、昨年末ごろから介護相談件数は、若い世代からのケースも含め増えています。親がコロナに感染して重篤化したり、ステイホームで行動が制限されているため、脳への刺激が減ったり、歩行範囲が狭まるなどして、高齢者が介護を誘発しやすい状況が続いているからです。
また、テレワークが増えたことにより、身近に親がいるケースでは接する頻度が増え、親は子どもに依存し、子どもは親の変化に敏感になる傾向も見られます。
親が何かと子どもを頼り、子どもも親の世話をやきはじめると、親は自分でできることもしなくなり、介護の誘発につながっていきます。
一方、こどもは親の老化を目の当たりにして、焦りや不安が大きくなり、それが仕事に影響を及ぼすようになっていくのです。
親が遠方に住んでいても、同じような状況は起こりえます。親と思うように会えないことから連絡頻度が増え、不安が増していき、会社に頼んで実家からのテレワークに切り替えるなどして、依存関係を深めてしまうケースも少なくありません。
しかし、介護の観点から見ると、テレワークや介護休暇、介護休業は必ずしも有効だとはいえません。
なぜなら、テレワークによって今までのような「仕事が忙しいから、会いに行けない」という言い訳が成り立たなくなり、親子の距離感を個々人の判断に委ねることになってしまうからです。
いずれ介護の負担が増大し、「親か仕事か」の選択を迫られれば、子どもは「親をとるのが正しい選択だ」と考えがちです。そして、その考えが介護離職を後押ししてしまうのです。