「この年になったら、もう新しいことなんてできないよ」そんなセリフをよく聞くのは、筆者がシニアのキャリアについて探索していることにも起因するが、自身も還暦を迎え、友人知己の多くが「この年」を迎えているからでもあるだろう。
「この年になったら」という悲観的な枕詞
「この年になったら、もう新しいことなんてできないよ」 「この年」のガイドラインは、感覚値ではあるが、55歳前後。このあたりを境に、人は自身を「この年」呼ばわりする。そして、自身の将来展望をややシニカルな感じでこき下ろすのだ。男性ばかりではない。女性にも顕著に見られる傾向だ。
それは、本心ではないのかもしれない。実は心に、何かをしてみたい、という「想い」がありながらも、それを人前で話すのは、はばかられるのかもしれない。
「あまりにも突拍子もないことなので、何を考えているのかとあきれられてしまいはしないか」
「最近一部の人が始めているようなことだから、流行に乗るようなつまらない人間だと思われはしないか」
そんな危惧が頭をかすめるのかもしれない。多様性を大切にしよう、個性を重視しようといいながらも、暗黙の枠組みを超えると、冷たい目で見られるという傾向は、今も日本社会に根強く残っている。「意識高い系」を嗤う風潮は、若者ばかりに限らない。