「自己中心的な人間、周りの人に優しくできひん人間は、人の上に立てるわけない」――介護士ボクサー・大沢宏晋の仕事論(1)
2020年02月26日 転載元:リクナビNEXTジャーナル
デビュー戦以来、ファイトマネーのほとんどを福祉施設等に寄付し続けているプロボクサーがいる。大沢宏晋、34歳。生活費は介護士として稼いだ金で賄ってきた。大沢さんはなぜ命懸けで戦って得た報酬を寄付しているのか。そして、殴り合うスポーツとは対極にある介護という仕事をしているのか。その理由や仕事観、人生観を3回に渡ってお届けする。
きっかけは父親の"強権発動"だった
──大沢さんはデビュー以来、ファイトマネーのほとんどを福祉系の団体に寄付しているそうですね。その理由と経緯を教えてください
僕が最初から進んで寄付しようとしたわけじゃなくて、きっかけは親父なんです。
ボクサーのファイトマネーって、直接現金でもらえるんじゃなくて、ジムからチケットを渡されて、それを自分で売った分のお金が収入になるんですね。19歳でデビュー戦が決まった時、そのチケットの束を親父に見せて、「これ売った分のお金がもらえるねんて!」って話したら、なんと全部取り上げられてもうたんですよ。
自分をいじめ抜いて戦ったらお金がもらえると思ってボクシングを始めたのにそれはないと思って「何すんねん!」って親父に食ってかかりました。そしたら「お前が持っててもろくなことに使わんやろ。お前はこれまで散々悪さばかりしてきたんやからこれから人様のために尽くさなあかん。このチケットは全部知り合いにただで渡す」って言いよったんですよ。
それでますます頭に血が上って「俺が人前で命懸けでドツキ合って稼ぐ金やぞ! なんでその金を見ず知らずの他人にやらなあかんねん! 頭大丈夫か?」と反論したんですが、結局親父はほんまに知り合いに全部ただで配ってもうたんですよ。