多様な働き方

働き方に不満。転職と残留、どちらを選ぶ? ―"Exit Voice"理論の実際― 中村天江

キャリア

2020年03月23日 転載元:リクルートワークス研究所

働き方に不満。転職と残留、どちらを選ぶ? ―"Exit Voice"理論の実際― 中村天江

1「転職判断は慎重に」は時代遅れ?

友人が会社や仕事の愚痴をこぼしていたら、皆さんはどのようにアドバイスするだろうか。
筆者は労働市場の高度化を研究テーマにしているため、転職は良いか悪いかの二分法で語ることができるほど単純ではないことを知っている。タイミングや状況によって、転職が最善のことも、今の企業にとどまることがベストのこともある。そのため、話を聞くまでは、意見を言わないようにしている。
ところが、筆者のような留保付きの態度とは対照的に、「不満があったらさっさと転職するべき」という歯切れの良い意見を聞くことが最近、増えているように思う。人材不足が深刻になり、企業の求人意欲は旺盛なため、好条件で転職しやすくなっていることも、転職を積極的に勧める背景にはあるだろう。これらの点は筆者も同意するところだが、それをさしひいても、転職をキャリア形成の有効な切り札だと考えている人が増えているように感じるのだ。 いまや、「転職判断は慎重にすべき」という考えが、時代遅れになっているのかもしれない。
そこで今回は、働き方に不満があったときに、会社に残るのと転職するのとどちらが良いのかについて考察する。考察には、同一人物の複数年にわたる状況を分析できるリクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」の2017、2018、2019年調査のデータを用いる。分析の対象は、2017年調査時点で25〜49歳だった正社員である。

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