事業承継に悩む老舗の個人店を支援し、看板をそのまま引き継ぐ形で統合。ユニークなM&Aを行う飲食チェーン『ゴーゴーカレー』から、事業の成長戦略を学ぶ
黄色の看板にゴリラのイラスト。金沢カレーを全国に広めた火付け役としても知られる『ゴーゴーカレー』。2004年に東京新宿に1号店をオープンし、現在は国内外に80店舗以上を展開。ブランドとして着実に拡大を続ける一方、運営会社の株式会社ゴーゴーカレーグループでは、一風変わったM&A戦略を推進していることをご存じだろうか。
同社のM&Aにおいて特徴的なのは、地域に根付いた老舗の名店を味も看板もそのままに引き継いでいること。一見するとブランドを統一した方がチェーン店としてのスケールメリットを活かせるように思えるが、なぜ敢えて非効率なやり方を選ぶのだろうか。代表取締役の宮森宏和さんに、M&A戦略の狙いや背景をたずねた。
自身も常連だったお店を「後継者問題」から救いたかった
ゴーゴーカレーグループによるM&Aのはじまりは、2017年。宮森さんの地元である石川県金沢市の老舗インド料理店「ホットハウス」の事業を継承したことだ。実は宮森さん、ホットハウスに20代から通い詰めていたほどで、この店を愛するファンの一人。ある日、高齢の創業オーナーから「後継者がおらず閉店を考えている」と聞かされたことが、M&Aに動いたきっかけだという。
「以前はM&Aを大企業の戦術だと思い込んでいて、自社でやろうなんて夢にも思いませんでした。それが、あるとき日本電産の永森会長に『事業拡大のためにはM&Aも一つの手段』と経営のアドバイスをいただいた矢先に、ホットハウスの後継者問題を聞いてしまった。一人の常連として店の継続を願う気持ちと、M&Aも手段として