ホームレス状態の人が販売者となり、路上で売られている英国発祥の雑誌『ビッグイシュー』。当初は「日本ではうまくいかないだろう」と批評された活動は約20年続いている。その試行錯誤から見える距離感とは。
現代の社会における「ほどよい距離感」とはなんだろうか。
デジタルテクノロジーの進化により物理的に離れた人同士が気軽にコミュニケーションできるようになる一方、リアルな場での対話の大切さも見直されている。スマートフォンやスマートスピーカーに喋りかけることで情報を得たり、ロボットを愛でたりすることが人々に受け入れられ、人と物の距離感も縮まった。「人と人」や「人と物」などさまざまな距離感のこれからについて考えていきたい。
今回話を聞いたのは、 有限会社ビッグイシュー日本東京事務所の佐野未来(さの・みく)さんだ。雑誌『ビッグイシュー日本版』を通じてホームレスの人の仕事をつくり、自立を支援するためにビジネスの手法を取っている。法人内に編集部を持ち、雑誌を制作。ホームレスの人が販売者として路上に立ち、自らが仕入れた雑誌を販売する。販売価格から仕入れ値を引いた金額が、販売者の利益となり、それを元手に生活を建て直す仕組みだ。