定年前後の仕事に対する価値観の変化を分析したところ、定年を前にして、仕事に対する価値を失っていく姿が浮かび上がってきた。そして、その後、多くの人は仕事の中で新しい価値を見出していくというプロセスをたどる。定年後の就業者が仕事に何を求めているのかを明らかにしよう。
歳を経るにつれて「他者への貢献」に高い価値
ここで、6つの価値観について改めて考えてみよう。まず、「他者への貢献」である。この価値観は、「人の役に立てること」「社会の役に立つこと」などで構成されている。仕事で直接やりとりをする顧客に限らず、社内外問わず、広く他者に対して貢献したいという思いを持つことが重要だと考える人は、定年後に増える。
さらに、この価値観には「仕事において自身の責任を果たすこと」という要素も含んでいる。仕事とは本来、誰かのために尽くす行為であるはずだが、定年前の人にとって、そうした意識は低い。よりよいキャリアを築きたい、収入を高め、家族を楽にしたいという考えで働いている人が多数派のはずだ。要は、定年前の人は「自分のために働いている」という意識が強い。
これに対し、定年後は多くの人が「他者のために働いている」。仕事を通じて他者に貢献し、彼らを喜ばせ幸福にする。歳を重ねるにつれ、こうした仕事本来の意義づけ、意味づけを人々は自然に行うことがわかる。