このたび、弊社の組織行動研究所では、あらかじめ計画していた「働き方改革」の実態調査を拡大し、特にテレワークの実態を丁寧に尋ねる調査を実施した。調査期間は3月26日~28日の3日間である。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、東京五輪・パラリンピックの延期が決定された3月24日の直後、首都圏など7都府県で緊急事態が宣言される4月7日の一週間ほど前という、緊張感が高まりつつある時期の調査という背景状況を、データの解釈にあたっては考慮されたい。
1.はじめに
1.1.本調査の目的と背景
当初より2020年4月は、働き方改革関連法が本格的に施行され、時間外労働規制の中小企業への拡大、ならびに大企業における同一労働同一賃金が適用されるタイミングであった。しかし、今となっては、誰も想定しなかった要因によって、「働き方改革」がかつてないスピードで進展している。テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)の導入拡大は、特筆されるべき変化の代表格であろう。同時に、さまざまな事情や懸念から「働き方」を変えられずにいる方々も大勢おられる。テレワークの実態が少しでも明らかになることで、社会における適用範囲が広がることにも期待したい。
レワークは、オフィス以外の場所を選択できる働き方であるが、実のところ、変化するのは働く場所だけではない。テレワーク環境においては、オフィスという空間が促したり補ったりしていたものが、ぽっかりと抜け落ちる。例えば、意思疎通や人とのつながりの実感、自律やセルフマネジメントの実感、安定した日常と所属の実感などである。本調査は、そのような「これまで当たり前のものとして確かにあったのに、失われてしまったもの」に光を当てることを通じて、「働き方改革」が個人や組織に促す心理的な改革への理解を深めることも目的としている。調査概要は図表1のとおりである。