ミドル・シニアが幸せに働くための2つの理論がある。「活動理論」と「離脱理論」だ。ミドル・シニアのキャリアやマネジメントに詳しい、法政大学大学院政策創造研究科 教授 石山恒貴氏と、石山氏のもとで研究を行っている岸田泰則氏に、2つの理論と日本企業への処方箋について詳しく伺った。
ミドル・シニアが幸せに働くための2つの理論
石山:同僚の高尾真紀子先生と私は、日本企業のミドル・シニアのキャリア・アダプタビリティ(キャリア上の変化適応力)が、主観的幸福にどのような影響を及ぼしているのかを共同で研究しました。研究対象者は、40~64歳の役職定年者、定年再雇用者など4331名です。
研究から分かったのは、ミドル・シニアになり役職定年や定年再雇用になったからといって、必ずしも幸福度は下がらない、ということです。背景には2つの理論があります。1つは、ミドル・シニアになっても、それ以前の旺盛な活動や意欲を維持することで、幸せであり続ける「活動理論」です。もう1つは、自分の身体機能などの衰えを認知して良い意味で諦め、活動を縮小したり、引退や死を意識したりすることでかえって幸せになっていく「離脱理論」です。
私たちは、両理論は一見相反しているが、どちらも正しく、多様な加齢への適応過程により、該当する場合が違うのだろう、と考えています。実際、継続性理論という両理論をうまく取り込んだ理論も後に登場しています。働くミドル・シニアは、活動や意欲を維持する方向でも縮小する方向でも、キャリアの変化に適応して幸せになり得るのです。ただし、日本企業はどちらの理論でもミドル・シニアの幸せを阻害している部分がある。改善すべき点があります。
なお、私は前者に重きを置いており、岸田さんは後者に関係した研究を行っていますので、役割を分担しながら詳しく説明します。