前回のコラムでは、「シニアの就労実態調査」にもとづくインタビュー調査の分析結果をご紹介した。
調査にあたり、インタビュー対象者には、学卒後からのライフラインチャート作成にもご協力いただいた。ライフラインチャートとはキャリアの棚卸しの際によく使われる手法であり、時系列で出来事やそれに伴う感情の揺れ動きを可視化することで、客観的な視点から自身の価値観を探索できるツールである。
今回のコラムでは、シニアが描くライフラインチャートから見える人生の転機(トランジション)について考察する。
転機とそれに伴う葛藤に着目
転機(※1)とはウィリアム・ブリッジズが提唱した理論であり、状況の変化に直面した際の心理的な変化のプロセスを指す。転機(トランジション)には(1)終わり、(2)ニュートラルゾーン、(3)新たな始まりの3つのプロセスが伴う。
状況が変化するとはすなわち「何かが終わる」ことを指す。「終わり」を受け入れ、時間をかけてこれまでのやり方を手放すことで、新しい始まりを迎え入れることができる、という理論である。しかし古いものを手放すことは簡単ではない。いわばアイデンティティのスクラップ&ビルドを強いられる期間でもあるため、「ニュートラルゾーン」は葛藤を伴う居心地の悪いものとなる。