人生100年時代が叫ばれ、定年後も何らかの形で働き続ける人が増えている。ただ、企業内キャリアが重視される大企業勤務者の場合、やはりその企業に継続雇用されるケースが多い。そうしたなか、特別な出向機会を用意し、社外への転身の可能性を広げる例を紹介する。 みずほビジネスパートナー株式会社 代表取締役社長(取材時:現 株式会社オリエントコーポレーション 常務執行役員) 宇田真也氏と、同社より出向を受け入れている株式会社アップル 代表取締役社長 文字放想氏にお話を伺った。
大企業からベンチャー企業への副業出向
アップル引越センターという屋号をもつアップル。同社管理部では、この3月から59歳の佐藤義之氏(仮名)が働いている。
といっても同社の社員ではなく、みずほビジネスパートナーの社員。とある企業が提供する「複業留学」という越境型研修サービスを経験した後、本人が希望し、「社外兼業」という形で週2日、3カ月間、同社に「出向」することになったのだ。
その間、通常の給与をみずほビジネスパートナーが本人に支給し、アップルは同社にその一部を補填する。3カ月が経過した時点で、アップルと佐藤氏が延長を希望すれば、改めて業務委託契約を結び、佐藤氏は今度は副業としてアップルでの仕事を続けることになる。
佐藤氏は現在、就業規則から始まるアップル社内のあらゆるルールや規定を見直し、あるいは一から整備する仕事を担当している。
アップルの社長、文字放想氏が説明する。「われわれベンチャーは売上と利益優先で、そうしたルール整備は後手になりがちです。佐藤さんは銀行でリスク管理の経験が長く、海外支店の立ち上げにも関わったそうで、ルール整備はお手のものだろうから、ぜひそれをやっていただこうと思いました」