ここまで述べてきたように、日本では人手不足が盛んに叫ばれているが、一般事務をはじめとして人余りである産業・職種も複数存在する。この人手不足と人余りが共存する歪んだ状況は需要・供給双方の要因によって起こっていると考えられる。こうしたなか、ここでは労働供給サイドすなわち求職者の職業人気度からその要因の一端の考察を試みる。
人々が職業を決定する要因として、真っ先に考えられるのは賃金である。しかし、自律性や専門性が発揮できる環境であるかといった、労働者が感じる仕事自体の価値も多分に影響していることは想像に難くない。
田中(2020) (※1)においても、「金銭的報酬を強く望む理由で就職した者は必ずしも多くないこと」や「専門性の発揮、仕事の面白さをはじめとした内的報酬を得たいと考えて仕事に就いた者が多いこと」が示唆されている。そこで、ここでは、「賃金一定」の仮定を置いた上で人々がどのような職業を選好するのか、そしてそれらの職業が共通して持つ特徴は何かを見ていくことで、求職者が感じている賃金以外の価値を浮き彫りにすることを目指す。
警備員、建設作業者、ドライバー、介護士などが不人気職種
まずは、賃金一定の仮定のもとで、人はどのような職に就きたいと思うのかを見ていこう。ここでは、リクルートワークス研究所が行った1,400名に対して行ったwebモニター調査、「サービス業の方の働き方調査」を用いて分析を行う(※2) 。