ゼロ・ウェイスト(Zero=0、Waste=廃棄物)に取り組む徳島県の山間の町、上勝町。町民、移住者、役場など立場を超えたプレイヤーの協働は、どのように実現できているのか。
徳島空港から車で1時間ほどに位置する徳島県の上勝町。同町は2003年に自治体としては日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、80%以上のリサイクル率を誇る。2020年にオープンしたゼロ・ウェイストセンターは、町民のゴミステーションでありながら、ゼロ・ウェイストの取り組みを町外に広げるための宿泊施設にもなっており、全国から人が訪れる。
上勝町にとって、ゼロ・ウェイストはごみ処理の話にとどまらない。人々の協働を促し、新しいコミュニティを生んでいる。その様子を前後編にわけてお届けする。前編では上勝町役場企画環境課の菅 翠(すが・みどり)さんと、民間の立場から上勝町のゼロ・ウェイストを推進してきた藤井園苗(ふじい・そのえ)さんに、上勝町で培われた協働の方法とそこで生まれる価値について話を聞いた。
ゼロ・ウェイストせざるをえなかったある事情
── はじめに、ゼロ・ウェイストへ取り組むまでの歴史を教えていただけますか。
菅 上勝町がゼロ・ウェイストを推進するようになったのは、そうせざるをえなかった歴史があります。この地域では、元々自宅の庭先でごみを燃やす「野焼き」で、それぞれの家庭のごみを処理していました。しかし、法規制が進んだこともあって、野焼きは次第にできなくなっていったんです。