キャリア自律は、日本企業の人事改革で後回しにされてきた分野だ。評価や処遇の見直し、働き方改革などが優先されてきた。いわゆる日本型雇用慣行が根付いた重厚長大の大企業ほどその傾向が強かったところ、その典型、従業員18 万人を擁する巨艦デンソーが挑む。
株式会社デンソー 総務人事本部 人事 原 雄介氏にお話を伺った。
人と組織の理想を「実現力のプロフェッショナル集団」とする
2017年10月、2030年に向けた長期方針「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい。」を発表。キーワードは環境、安心、共感の3つだ。具体的には、まず環境について2035年までに事業活動全体においてカーボンニュートラル(CO2排出ゼロ)を目指す。安心の面では先進運転支援システムの進化などにより交通事故ゼロを目指し、ウイルスや大気汚染物質の除去にも力を注ぐ。共感ということでは、物流や農業といった新たな分野で、人を支援し、その可能性を広げ、笑顔を導くような事業を推進する。
その後の2019年と2020年、経営の基盤を揺るがす品質問題の発生や、右肩上がりの売上成長にブレーキをかけるCOVID-19の影響など、取り巻く事業環境は一変した。
同社にとって製品の品質は経営の生命線に等しい。その品質の復権を軸に、2020年12月に発表されたのが変革プラン「Reborn21」である(図表1)。2021年度末までに、環境や安心といった先の3つの「大義」に関わる事業化を促進し、環境変化に強い強靭な企業体質に転換することがその目的だ。当然、人と組織も大きく変わらなければならない。