「キャリア自律」という言葉は、その意味や具体的なイメージが文脈によって異なることが多い。「キャリア」という言葉を、職業を含むその人の人生における足跡や生き方そのものとして大きく捉えるなら、人によって、場所によって、時代によって、異なる内容が語られるのも無理のないことのように思われる。一方、学術の世界では、長い年月にわたる多様な人々の生き方を「キャリア」として捉え、その「自律」的なあり方やそうでないあり方が検証され議論されてきた。本稿ではキャリア研究を概観し、抽象的に語られがちな概念を解き明かし、今私たち自身はどのような「キャリア自律」を考えたいのか、その具体像をつかむ手がかりを得たい。
時代とキャリア
キャリア論自体はその時代背景を反映する。図表1に代表的なキャリア理論を簡単にまとめた。網羅的なリストではないことに留意されたい。ライフキャリアや組織内キャリアの発達も依然として重要なテーマであるが、今日、関心がもたれているのは、変化に流されることなく、また長い人生を幸せに生きるためのキャリア開発である。