経営学や心理学において古典とされるマネジメント理論は、今日の事業環境においても有効なのだろうか。本連載は、創業から歴史が浅いながらも大きな成長を遂げる企業に、シリーズでインタビューしていく。それら「若い」企業は、現代の人と事業に最適なマネジメント理論を生み出すポテンシャルを秘める。古典の理論を温めつつ、これから急成長に向かう企業から第2、第3の創業を志す大企業まで広く参考となるような、最新知見を「発明」していきたい。今回は、雑談朝礼や管理職立候補制など、奇策を定着させチームを盛り上げる、ヤッホーブルーイングのマネジメント発明に迫る。 株式会社ヤッホーブルーイング 人事総務ユニット・ユニットディレクター 長岡知之氏にお話を伺った。
今回のテーマ「心理的安全性」
「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織のなかで、自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のことを指します。組織行動の研究者エドモンドソンが1999年に提唱した定義によれば、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」です。 昨今、心理的安全性の高いチームが成果を創出するという話をよく目にしますが、それは決して単に何を言っても許される組織や、仲が良いだけで成果の基準が上がらない「ぬるま湯」組織を作ろうという意味ではありません。エドモンドソンによれば、図表1のとおり「心理的安全」かつ「責任」の高い組織では「学習」が進み(Learning Zone)、高い成果を創出できます。