多様な働き方

精神科医 名越康文さんからのエール~キャリアのモヤモヤを抱えているあなたへ

キャリアお悩み相談

2024年01月18日 転載元:Recruit Corporate Blog

精神科医 名越康文さんからのエール~キャリアのモヤモヤを抱えているあなたへ

人生100年時代を見据え、キャリアを取り巻く環境は大きく変化。ともに働く人たちの一人ひとりのバックグラウンドや価値観も多様化するなか、自らのキャリアについて迷うことがあるという声も。なぜ、人はキャリアについて悩むのか?自分らしいキャリアを歩むためには、どうすればいいのか?リクルートグループ報『かもめ』編集部が、精神科医の名越康文さんに伺いました。

リクルートグループ報『かもめ』2023年8月号からの転載記事です


自由で前向きな人生が送れるかを理解するには「哲学」が必要

社会変化のなかで自己像が揺れている時代。頑張る一方で、激しく消耗する人も

名越康文さん(以下、名越):私もいろいろな会社の方々とお話ししてきましたが、今の若い皆さんは、本当に優秀です。相手が話すことも、やりたいことも、置かれている立場もすぐに理解できます。理想に向かって進みたい、社会に貢献したいという思いも、自分の若い頃と比べると10倍くらい持っています。そんななかで、ただひとつご自分のキャリアで苦労しておられるのが、「自分の軸がない」ということではないでしょうか。「自分とは何か?」という自己像が揺れているように見えるのです。だから、ホップ・ステップ・ジャンプで、自己理想に向かって「世界に貢献していこう!」と踏み出しても、自己像をつかみきれていないがために根元がぐらついてしまう。すごく頑張っているけれど、ブレる分だけ消耗も激しく不安も増すのだと思います。

では、自己像を理解するために、私たちは何をすればいいのでしょうか? それは昨今注目を集めているリベラルアーツ、特に2000年以上の歴史がある「哲学」を学ぶことです。簡単に言うと、リベラルアーツとは自分自身の発想を自由に発展させることができる学問です。人間とはいかなる生き物なのか? どんな傾向があるのか? どんな教育や自己鍛錬によって、自由で前向きな人生が送れるのか? ということを理解するためには哲学が必要なんです。

私は、日本にとってのリベラルアーツは、仏教ではないかと思っています。『菩提心論』という仏教の論書に説かれた「三句(さんく)の法門(ほうもん)」に、「菩提心(ぼだいしん)を因(いん)とし、大悲(だいひ)を根(こん)として、方便(ほうべん)を究竟(くきょう)とす」とあります。これは、どう生きていけばよいかを示した3つの大切な教え。「菩提心を因とし」とは、自分の心は死ぬまで成長できると理解すること。「大悲を根として」とは、人の悲しみやつらさに心を寄せること。「方便を究竟とす」とは、相手の悲しみに触れたら、それを癒すためにどうすればいいかを工夫すること。一言でいえば、相手の状況にあわせてサポートすることだと解釈しています。

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