今日、アルムナイへの関心はますます高まり、退職者コミュニティの運営にとどまらず、出戻りの受け入れに対して積極的になる企業も出てきた。これを単なる一過性のイベントと見過ごすことは簡単だが、筆者としては、こうした動きは、十分に検討がされてこなかった「個人と組織の関係」を再考する、またとない機会になると考えている。すなわち、長らく暗黙の前提となっている、”入ってから退出するまでの1回限り”の”長期かつ親密な関わり合い”に特徴づけられる「個人と組織の関係」を再考する機会となる可能性である。「個人と組織の関係」は、階層性を持った人材マネジメントの基底をなす哲学(わかりやすく表現すれば「人材観」)そのものである(※1)。アルムナイについて真剣に議論するほど、切り離せない論点になるであろう。
筆者としては、未解決のまま放置されている人材マネジメントの中核的な論点について、アルムナイを糸口に検討を進めていきたいと考えているのだが、そもそもアルムナイが持つ意義が必ずしも明らかにはなっていない状況にある。そこで、まず足掛かりに、前回のコラム「新しい『個人と組織の関係』 を考える」(リクルートワークス研究所,2023)では5つの論点(図表1)を提示した上で、「3.個人はそもそも『アルムナイ』や『出戻り』、退出した企業に関心があるのか?」といった点について、フリーワード調査による簡易な分析結果を紹介した。その後、追加的な定量調査を実施したので、その結果を踏まえて「3」の論点を掘り下げるとともに、「4.関心を持つ個人は、そうでない個人と比較して何が違うのか?」について探索的に検討した結果を紹介したい。
(※1) 人材マネジメントの階層性については、前回のコラム(リクルートワークス研究所,2023)を参照いただきたい。