“もったいない離職”を引き起こす本人側の要因と対応策【2023年 新人・若手の早期離職に関する実態調査】第3回
第1回を通して、早期離職問題は、特定の条件を整えれば改善するような問題ではなく、社会の大きな変化や、そのなかで醸成された個人の仕事観や人生観と密接に関係してくる問題だということ、第2回では、3つの早期離職パターンがあり、その中でも環境比較により生じる“もったいない離職”が近年増加していることをお伝えしました。
続いて、“もったいない離職”を引き起こす要因を本人側と企業側の2つの側面から見て、それぞれ、問題と重要な支援を考えていきます。第3回は、本人側にフォーカスします。
本人側の問題
まず、本人側の問題について考えていきます。
本人側の問題を掘り下げてみると、「タイパ意識」「早期の見切り」などの世代的な特徴(※1)が出すぎてしまうと、本人は、経験からの学びを得にくくなるということが分かりました。
「タイパ意識」とは、タイムパフォーマンスの略で、かけた時間に対し、より満足度を得ようとする意識です。一見、パフォーマンスを出す観点で良い考え方だとも思えますが、いきすぎると、結果が出にくいと感じることに、早い段階でやるメリットを感じにくくなる可能性があります。本人にとって、腰を据えて試行錯誤することの心理的ハードルが上がってしまうのです。
また、「早期の見切り」は、自分に合うか否かのマッチング的思考で、複数の選択肢を比べるがゆえ、物事を表面的に判断してしまう行動です。この特徴が職業選択で出てくると、仕事の奥深さを知らぬまま退職や転職を決めてしまうため、機会損失となるケースも発生します。例えば、日々の業務に向き合うことで見えてくる仕事の醍醐味を味わったり、向き合うなかで新たな自分の特徴に気づいたりなど、ビジネスパーソンとして大きく成長できる機会を逃す可能性が高いでしょう。
これらの特徴が、かつてよりも表に出てきたのは、社会の大きな変化による影響も関係しています。本人の個人的な資質の話だけではない、時代の変化を受けた世代的な特徴(※1)であるということを念頭に入れておきたいです。
※1 参考:「個」の尊重へ向かうZ世代を生かすための鍵
そして、経験からの学びを得られずにいると、本人のなかにやりたいこと(WILL)が生まれにくく、できること(CAN)が増えにくくなる、不のサイクルが回り始めます。