多様な働き方

人手不足が深刻な飲食・宿泊や介護、人材の再配置で「現場」はどう変わるのか

2024年06月04日 転載元:リクルート ワークス研究所

人手不足が深刻な飲食・宿泊や介護、人材の再配置で「現場」はどう変わるのか

企業の賃上げトレンドや、労働人口が減少する中で、生産性を高め経済成長に結び付ける「シナリオ」について、経済産業研究所で生産性などを研究する森川正之所長(一橋大学経済研究所特任教授)と、リクルートワークス研究所坂本貴志研究員・アナリストが賃金と生産性の「これから」について対談したコラムの第2回。人手不足が特に深刻なのは、宿泊、飲食といったサービス業や介護、建設などの領域。こうした業種で今後、どのような変化が起こりうるかについて話し合った。

人材は高い価値を生む仕事へ移動 穴はデジタルツールが埋める

坂本:建設や宿泊、飲食などの業種では、すでに賃金が上がり始めています。こうした業種の賃金は今後も上がり続けるでしょうか。また人手不足によって、消費者などユーザーに提供されるモノやサービスの質に、変化は生じるのでしょうか。

森川:労働需給が特にタイトな業種では、人材はますます貴重になり、賃金もさらに上がるでしょう。貴重な人材をより高い価値を生むタスクへと移動させ、人が担っていた業務のうち優先順位の低いものは削ったり、自動化・機械化を進めたりするという、タスクの再配分も進むことになるでしょう。

坂本:優先順位の低い業務を削ることで、特にサービス業などでは質の低下も起こりうるのではないでしょうか。

森川:すでに多くの人が、セルフレジの操作で立ち往生したり、コールセンターに問い合わせても人工音声の応答が続いてイライラしたり、といった経験をしているのではないでしょうか。これらは人手不足でサービスの質が低下した結果、起きた現象と言えます。

私が最近、コロナ禍の前後でサービスの質がどう変化したかを調査したところ、金融機関を筆頭に病院や交通機関など多くの業種で「悪くなった」という回答が「良くなった」を上回りました。また20代、30代の若年層よりも40代以上の年齢層で、質の悪化を感じている人が多いこともわかりました。人の仕事をデジタルツールが代替するケースが増え、しかもそれらが必ずしも利用者の視点で作られていないため、中高年層が対応しきれず不満を募らせていることがうかがえます。

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