HR領域で進むAI活用、リスクとガバナンスに対するリクルートの考え方【セミナーレポート】
2024年06月13日 転載元:Recruit Corporate Blog
HR領域を含むさまざまなビジネスの現場で利活用が広がっている「AI」。従来人間しか対応できなかった複雑な問題へのアプローチが可能となり、ビジネスにおける利便性や生活の質の向上などが期待される一方で、想定しない結果が生まれることによるリスクも懸念されています。特に仕事探し、人事検討など「人」に関わるHR領域においては、丁寧なリスク対策が不可欠です。
そんなAIリスク対策やAIガバナンスをテーマとして、2024年2月6日、デロイト トーマツ グループ主催のウェビナー「AIリスク対策のはじめの一歩~プラットフォームとしての社会的影響を見据えたAIガバナンスの実現に向けて~」が開催されました。リクルート 品質管理室 室長 渡部純子のAIガバナンスに関するプレゼンテーションと、プロダクト本部 HR執行役員 山口順通が登壇したパネルディスカッションを中心にレポートします。
- リクルートが目指すAIガバナンス
- AI活用についてのパネルディスカッション
- ・HRの現場における、AIへの期待と活用の最前線
- ・AI活用に潜むリスクに、どう対応していくか
- ・多様な立場で議論して作る、これからのAIガバナンス
1. リクルートが目指すAIガバナンス
― こちらのパートでは、リクルート 品質管理室 室長 渡部純子氏に、リクルートが目指すAIガバナンスのあり方、それを実現するためのAIガバナンスの全体像を解説いただきます。AIガバナンスに課題を感じつつも、ガイドラインの社内展開から一歩進んだ施策を進めにくい企業様も多いなか、リクルートでは既に開発現場のリーダーまで巻き込んだ具体的な運営体制が組まれ、社内でマルチステークホルダーと連携したガバナンスを実現しています。では渡部さん、よろしくお願いいたします。
リクルート 渡部:EUで「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」が制定された2016年頃から、日本でもデータプライバシーに対する取り組みの必要性が高まり始めました。リクルートでも同時期から数年かけてデータプライバシーに関する検討を進め、管理部門と事業部門が協働し、サービス品質の担保を目的としたガバナンスフレームワーク「標準プロセス」を設計しています。
「標準プロセス」は企画段階、要件定義段階、開発段階、リリース段階などで都度リスクレビューを行い、適法性、プライバシー保護、セキュリティなど複数の観点で問題がないと確認してから、サービスを社会に提供する仕組みです。標準プロセスは社内の意思決定のフローに組み込んである仕組みなので形骸化しにくく、開発部門が「複雑なルールを全て覚えて運用する」という負荷を最小限にすることができています。
特に大切にしている点は「作る人と一緒に」協働することです。現在、リクルートの国内には大小約400のサービス・プロダクトがありますが、その各サービス・プロダクトの責任者と品質管理部門とで品質担保に取り組み、議論する検討体制になっています。2023年にはアジア太平洋地域で革新的な法律事務所や弁護士、企業の法務部門を表彰するイノベーティブ・ローヤーズ賞(英フィナンシャル・タイムズ)の部門賞も受賞しました。