多様な働き方

価値あるサービスに絞り込み、少ない人数での運営を可能に Vol.3 味一番フード

企業事例

2024年06月17日 転載元:リクルート ワークス研究所

価値あるサービスに絞り込み、少ない人数での運営を可能に Vol.3 味一番フード

物価の高騰や人手不足を背景に、これまでになく賃金上昇の要請が高まるなか、パート・アルバイトを含めて多数の従業員を抱える外食チェーン企業はどのように人材を採用、育成しているのか。石川・富山にて『めん房本陣』と『そば処花凜』を9店舗直営する味一番フードの村上良一氏に、社員、パート・アルバイトそれぞれの賃金の推移や業務内容の変化、今後の同社の戦略などを聞いた。

店舗スタッフ数は以前より減少。時給上昇にともない社員の昇給率もアップ

味一番フードの2つの飲食ブランドのうち、創業事業の『めん房本陣』は自家製麺のうどん・そばが人気の店舗。平均120席ほどの大型店が標準仕様で、郊外ロードサイドを中心に石川・富山に7店舗出店している。一方、そば専門店の『そば処花凛』は、石川・富山の商業モール内に1店舗ずつ展開と、業態により出店場所を棲み分けているのが特色である。全店舗が直営で、社員数は22名。パート・アルバイトは200名ほど雇用している。

社員数、パート・アルバイトの数とも近年それほど大きな変動はないが、「若干緩やかには減少しています」と村上氏。社員はかつて25名から30名ほどだったが、現在は20名前後に。これにともない1店舗あたりの社員数も3名から2名、なかには1名の店舗もある。社員が採れないのではなく、「従来よりも少ない人数で運営できるようにしています」と村上氏は語る。人員効率化の取り組みは後述するとして、「社員とアルバイト・パートに求める業務や能力は明らかに違います。店舗の運営管理はもとより、業務改善にどう取り組むか。それが社員の使命だと考え、社員たちにもよく伝えています」と語る村上氏が重視しているのは、社員のモチベーションを維持することであり、その一環として物価が上昇する前から成果や頑張りに報いたいとの思いで、社員の給与は半年ごとに昇給している。

昇給率はその時々で異なるが、物価の高騰が続くこの1年ほどは正社員も通年のベアで5%程度アップ。これにはパート・アルバイトの賃金との兼ね合いもある。「人口減少を背景にパート・アルバイトは売り手市場。最低賃金を時給に設定しても応募はまずありません。毎年、最低賃金が上がるなか、それより上積みした金額で時給を上げ続けています」(村上氏)。それでも「(パート・アルバイトの)人数を確保することが難しい時代になりました」と指摘する一方で、村上氏がそれ以上に憂慮しているのが質の低下である。「即戦力といいますか、一般常識も含めて、教えずともある程度できる人材が本当に少なくなりました」と嘆く。「とはいえ、それが現実です。社員たちには『できる人材』という“幻想”を捨て、ゼロベースから店舗に貢献できる人材育成に取り組むことを意識させています」(村上氏)

ピックアップ特集

この記事をシェアする

シェアする

この記事のURLとタイトルをコピーする

コピーする