全国に23のホテルを持つアコーホテルズグループの一員として、札幌で事業を展開する「グランドメルキュール札幌大通公園」(旧ブランド名:ロイトン札幌)。1992年に誕生した都市型シティホテルとして長く親しまれてきたものの、他社ホテル・飲食店など採用競合に囲まれ、募集を出しても応募数が集まらない…という慢性的な課題を抱えていました。
そこへ人事責任者として着任してきたのが、坂東氏です。坂東氏は、前の職場であった浜名湖のリゾートホテルでトライした採用手法を、札幌向けにブラッシュアップ。敢えて「短期限定」を前面に打ち出し、約30人の応募を集めることに成功しました。
● 社名/グランドメルキュール札幌大通公園(旧ブランド名:ロイトン札幌)
● 創業/1992年
● 所在地/北海道札幌市中央区北1条西11丁目
● 従業員数/101名(2024/2/1時点)
自分のライフスタイルを重視するアルバイトの志向に配慮
募集に入る前、必ず採用市場の調査を実施。どういう属性の人がどんな志向を持っているのか、賃金相場はどれくらいか調べた上で、募集条件を吟味し、“刺さる”アピールをしないと採用はうまくいかない。それが、人事として様々な採用に携わってきた坂東氏の持論です。
「今の時代、多くの人が“自分のライフスタイルに合わせられるか”を重視して仕事探しを行います。 そこで、2カ月以内の“短期限定”をPRしました。本音を言えば長期で働いてほしいのですが、それでは“ライフスタイルに合わない”と敬遠されるかもしれません。2カ月手伝ってもらえるだけでも助かるし、その間に仕事への納得感を持ってくれれば長期に切り替えてくれるかもしれない。そんな思いでした」
特に応募の集まりにくそうな「早朝のビュッフェホールスタッフ」について、坂東氏はさらに一工夫。勤務日が週2日以内の場合は時給1,000円ですが、3日になると1,100円、4日で1,200円、5~6日だと1,300円にアップする、変動型時給を採り入れたのです。
「“週2日くらいで働きたい”と応募してきた人に、“週3日はどうだろう?”と打診しても、普通は受け入れてはくれません。しかし、勤務日数で時給が増えるなら“その方がいいかも”と考える人も出てくる、と考えました。勤務日数が多い人は、仕事にも早く慣れます。習熟度の高いスタッフに高い時給を払うのは、一定の合理性があるわけです。それが募集上のアピール材料となるのであれば、取り組んでみない手はありません」
実際、面接の場で「変動型時給」の話をすると、元々は週2日の予定で応募してきたけれど、3日、4日…と自発的に勤務日数を増やす人が出てきました。また、自ら「週◯日」と決めて入社しているので、「今週はテストで入れない分、来週たくさん入ります!」と責任感強く言ってくれるようです。
入社後1カ月は、人事がきめ細かく面倒を見て、定着を図る
採用後のスタッフに対しても、坂東氏は配慮を怠りません。現場に任せきりになりがちなアルバイトスタッフの面倒を、入社後1カ月は人事でも見るようにしたのです。
「入社当初は、業務以外にもロッカーやトイレがどこにあるかわかりにくい、など様々なストレスにさらされます。そこで人事の私たちが責任を持って、新人への対応を行いました」
新人を見たら、困りごとはないか、仕事は理解できているか、必ず声をかける。そうやってきめ細かなコミュニケーションを重ねます。これは短期・長期の就業期間に関係なく、全スタッフに行います。そうやって1カ月、仕事に慣れてくるまで、新人と向き合い続けました。
「また、面接で聞いた“◯曜日は働けない”といったスタッフの要望は、必ず守るようにしました。どんなに忙しくても、その日がダメだといったスタッフに無理やりお願いはしないよう現場リーダーにも徹底しました」