ビジネス環境が日々多様化・複雑化するにつれ、マネジャーに求められる役割も多様化し、負荷が大きくなっています。同時に次のマネジメントを担う中堅・リーダー層とマネジャーに求められる仕事における乖離が、質・量共に大きくなっており、マネジャー昇格後に必要な要素をすべて身につけ始めるのでは遅いのが実情です。マネジャーへのスムーズな移行を果たすためには、中堅・リーダー層の段階からマネジメントに必要な能力を開発し、特にマネジャー移行後に求められるスキルを段階的に学んでおくことが必要です。
そうしたなか、私たちは2023年12月に「中堅・リーダー層をマネジメント人材に移行するために必要なアップスキルとは」セミナーを開催しました。セミナーでは、現代のマネジメントに必要な能力、中堅・リーダー層に求められる能力開発の観点と意図的・計画的な育成のあり方、具体的な事例などを紹介しました。本記事では、本セミナーの内容を紹介します。
講師
●坂井 直純 (さかい なおずみ)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRD統括部 シニアスタッフ
- ミドルマネジャー候補者が不足しているのはなぜか
- 管理職になりたくない中堅社員
- 期待と負荷が高まるミドルマネジャー
- 中堅社員には「人・組織に対する見立て力」を磨いてもらうことが重要
- 期待と負荷が高まるミドルマネジャー
- 中堅社員が学ぶべきスキル1 広い視野で仕事を考えるスキル
- 中堅社員が学ぶべきスキル2 人を動かして仕事を進めるスキル
- 中堅社員が学ぶべきスキル3 変化や不確実性に対応するスキル
- 中堅社員の基本的な学習プロセス
ミドルマネジャー候補者が不足しているのはなぜか
このセミナーの検討テーマは、「中堅社員に対して、ミドルマネジメントに向けた準備としてどのような経験を積ませるべきか?」ということです。なお、本セミナーでは、中堅社員をミドルマネジメントの昇格手前となる、プレマネジメント層として「リーダー層・主力層」と置いています。
私たちの調査によれば、人事担当者も管理職層も、企業組織課題の1位に「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」ことを掲げています。また、人事担当者の3位、管理職層の2位に「中堅社員が小粒化している」ことがランクインしています(図表1)。中堅社員の実像をもう少し詳しく調べると、「ミドルマネジャーになりたくない」と考える傾向があることが分かってきました。中堅社員の多くはキャリア意識が高く、主体的にキャリア形成したい一方で、仕事中心の生活にあまり魅力を感じておらず、仕事はほどほどにしたいと考えている傾向が多くみられます。目立つよりも堅実に働きたいという意向も強くなってきています。
そのようなことから、ミドルマネジャーへの昇格をあまり望まない傾向が顕著にみられます。多くの人事や管理職が、こうした中堅社員を見て小粒化していると感じており、最近の中堅社員は「踏ん張りがきかない」「はみ出しが少ない」といった声もよく耳にするところです。