高齢化が進む日本において、介護職は社会を支える重要な役割を果たしています。介護関係職種の有効求人倍率は他の職種と比べて約3倍*1と担い手の不足が深刻な状況ですが、ジョブズリサーチセンターで行った「特定業種に関する調査2024」の「現在の勤務先を選んだ理由」では、施設介護の就業者は「やりがい」に関する項目が他の業種と比較しても高く、「お客様から感謝される」「仕事を通じて社会や地域に貢献できる」を半数以上が回答していて*2多くの就業者がやりがいを感じながら働いています。一方で同調査における「やめたいと思ったことがある」の割合が約8割と他業種よりも高く*3、働く上での課題が大きい側面もあります。
今回は、同調査における施設介護の就業者および離職者の調査結果から、長く活躍してもらうために必要な打ち手のヒントを探ります。ページ下部にある表1,2を参照しながらご覧ください。
引用元:
*1:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/21/backdata/01-01-02-39.html
*2:https://jbrc.recruit.co.jp/data/pdf/hikaku_20240606.pdf P22
*3:https://jbrc.recruit.co.jp/data/pdf/hikaku_20240606.pdf P25
解説
◇「体力的なきつさ」は複数人でカバー、一人あたりの負担を軽減
離職理由として多く上がった項目の一つが「仕事内容が体力的にきついから」。「体力的なきつさ」を分解すると、利用者の身体介助やリネン交換などの「力仕事による負担」と、一人あたりの業務量が多いがゆえ「長時間労働による負担」の2点が考えられます。ここでは後者の「長時間労働による負担」に着目します。
解決策として、有資格者でなくとも行える一部の仕事(清掃や食事の片付けなど)を切り出してプチ勤務を創出して複数人のシフトでカバーする方法が挙げられます。これによって従業員一人あたりの業務量が減り、時間的な負担を軽減することができます。また、日々の日誌の記録や、日勤⇔夜勤の業務引継ぎなど、事務作業のIT化を進めることで時短に繋げることも一つの手です。
◇「雰囲気・人間関係・ハラスメント」は「仕組み」と「助け合い」で乗り越えていく
やめたいと思った理由、離職理由それぞれの上位に「職場の雰囲気、人間関係があまり良くないから(セクハラ、パワハラ含む)」が入っていますが、これは施設介護の業務において、利用者との身体的距離さらには精神的な距離も近くなることから、人間関係のトラブルやハラスメントが起きやすいという特徴が出ているのかもしれません。離職理由においては特に女性の回答割合が高くなっています。 解決策として、従業員が定期的に相談・申告できる制度の策定やストレスチェックの実施など「仕組み」で解決することからはじめてみませんか。また、それだけでなく日頃から「良くないこと」を職場の全員で共通認識として持って声を掛け合うなど、見過ごさない・従業員同士が助け合う風土を醸成することも大切ではないでしょうか。
利用者からの感謝や社会や地域への貢献など「やりがい」を求めて施設介護で働くことを選んだ就業者の方たちが、今後もやりがいを感じながらイキイキと働き続けられるように、経営として長く活躍してもらうための環境づくりをいま一度見つめ直してみましょう。