今、20代の当事者は働き方や組織にどんな考えを持ち、どんな選択をしているのか。
大学卒業後さまざまなキャリアを歩む5人が、率直に語る。
今の場所にいる理由
今の仕事や働き方を選んでいる理由を教えてください。
Aさん:僕は新卒で第一志望の日系大手メーカーに入ったのですが、1年で退職しました。そこからSNSで発信しながら靴磨き修行を始めたんです。そのほかにもトラック運転手やイベントスタッフ、通訳と数えきれないくらいの仕事をしました。結局、自分の単価として何がいちばん高く売れるかなと考えて、得意分野を生かして教育系ビジネスで起業しました。
退職の理由は?
Aさん:端的に言うとカルチャーが合わなかったです。もともと帰国子女で、学生時代には米企業でインターンも経験しました。そこでは、サラリーが発生している以上は当然のように意見を求められましたが、日本は真逆でした。入社直後から会議でバンバン発言していたのですが、「1年目は黙っとけ」と。これは伸びるわけないな、と思って辞めました。
Bさん:私がベンチャーを選んだのは、就活で受けに来ている学生が楽しそうだったからですね。大手企業のインターンに参加している学生たちは将来像が明確じゃなかったり、福利厚生の点で企業を選んでいるという感じだったりで。大事にしていることが違うな、と思いました。
Cさん:私は新卒で入社した大手コンサルティング会社を3年半で退社しました。前職を選んだ理由は結局、ネームバリューだったなと思います。入社前は有名企業で働いている人たちは雲の上の存在……と思っていたのですが、入ってみたら意外と「なんだ、こんなもんなんだ」という感じで。「自分の30代もこれがずっと続くんだな」と先が見えた気持ちになって。人生を本気で考えたときに、自分の足で立つことが本当の幸せを作る一歩だと思って、独立を選びました。
Dさん:私は子どもの頃から親しんできたプロダクト(商品)を作る日本企業に新卒で入社して2年目で、社内では新卒としては珍しく経営企画の部署にいます。もともとメディア志望だったのですが、新聞社などを受けるなかで、自分の居住地を自分で決められないことに違和感があって。
Aさん:僕も転勤は、退職理由の1つです。上司が家を買った直後に転勤させられているのも目にしてきたので。
Dさん:それで転勤のない企業を探しました。最後までメディア業界と迷ったのですが、「新卒切符」(新卒でしか入れない企業に新卒の「カード」を使って入社すること)もあるから、まずは名の知れた企業に一旦行ってみようと。その後転職のときに有利な会社がいいだろうと思いました。ただ、今この先はまさに迷っています。
Eさん:新卒で日系大手に入り6年目です。最初の職場であるBtoC商材のマーケティングの部署では、華々しい広告宣伝だけではなく、販売管理やコスト管理のような、地道さが求められる仕事も経験させてもらいました。
入社当初は体育会系気質の人にカルチャーショックを受けたこともありましたが、社内でいろんな人とつながって「どうやって信頼を獲得するかによって周囲も変わってくる」と教えてもらい、考え方も広がりました。悔しいのがつながりのあったすごい先輩たち、能力ある同僚たちが辞めていくこと。この風土を変えたくて、社内転職のような異動制度を使って、人事領域にいます。
なぜ多くの人が辞めていると思いますか。
Eさん:お客様に対する貢献実感と成長実感が得にくいから、かもしれません。「給料をもらっているからには社会に価値を生み出そう」と一生懸命やろうとする人ほど辞めていきます。優秀層から辞めて、残っている人は仕事はほどほどに、整っている制度をできるだけ活用したい……という人が多いです。